21話 宇宙に向かって出発進行!
宇宙旅行当日。私とエメラルドさんは、ドランさんの運転する車に乗ってとある場所へと移動していた。
「モヨの力で直接宇宙まで行けばいいのに……」
『色々と事情がありまして……とりあえずまずは、ギルドの屋上に移動しなければならないんです」
「なんでわざわざギルドの屋上に?」
「これもギルド長の指示です」
エメラルドさんの愚痴に丁寧に答えるドランさん。
「……宇宙旅行のこと、ハッパギルド長に話したの?」
『すいません、流石に宇宙旅行のことをギルド長に隠す訳にはいかないかなと思って……』
宇宙旅行に行く前のこと。
「宇宙旅行の件はギルド長に話しておきましょう」
と、ドランさんに言われ、私も
『これから宇宙に行く機会は増えてくかもしれない。事前に宇宙について伝えておけば、もし宇宙でトラブルが起きた時にギルド長が色々と助けてくれるかも……』
と思い至った。意見が合致した私達2人は、お土産を手にハッパギルド長に宇宙旅行の件を報告しに向かった。
「何っ!?宇宙旅行だと!?(ビッグビジネスの予感!)」
商売熱心なハッパギルド長は見事に宇宙旅行に食いついた。
『これ、前に宇宙に行った時に手に入れた物です……』
お土産として、宇宙で拾ってきた隕石数個と、どれだけ折り曲げても元通りの綺麗な板に戻る謎の金属を手渡した。いずれも人間に無害なものだ。
「おおおおおっ!?すっ、凄い……!!(間違いない!この子は本当に宇宙に……!この宇宙旅行、何としてもどこかしらに縋り付かなくては!)」
隕石は凄さがよく分からなかったらしいが、謎の金属には物凄く興味を示してくれた。隕石は後で専門家に回すと言って丁寧に保管していた。
「よし!何かあればこの私が出来る限りで全面的に支援しよう!欲しいものがあれば何でも言いなさい!」
『……って感じで、ハッパギルド長が私達を全面的に支援してくれる事になったんです』
「……まあ、下手に黙って宇宙行くよりは喋っちゃった方がいいか(支援してくれるのもありがたいし)」
エメラルドさんはハッパギルド長の話を聞きながら、広々とした後部座席の窓から外の景色を眺める。
『はい。色々と支援してくれる事にはなったのですが……どうしてもこれだけはして欲しいとの事で、取引条件を2つ提示されました』
「取引条件ねぇ……(どうせ金儲け関連だろうなぁ)」
『1つは「宇宙で石や草で良いから何かしら採取してくる事」と、もう1つは「スカイタウンにあるギルドの屋上で出発式のような事をしてほしい」と言われて……』
「……宇宙旅行のことを大々的に宣伝するつもりか」
「お2人とも、目的地が見えてきましたよ」
車の窓からスカイタウンの大きなギルドが見える。ギルドの屋上には、何らかの機材を持った人間が数人見える。
「(機材の調子はどうかな?)」
「(驚異の瞬間を見逃す訳にはいかない……!)」
ギルドの屋上にいるのは、テレビ局の関係者にオカルト研究者、新聞記者などなど……全員の目的はもちろん、宇宙旅行に出発する私達をカメラに収めることだろう。
「うわっ、沢山いるよ……」
『これで宇宙旅行は世間に広く知られるでしょうね』
「……まあ、これだけ大々的に宣伝すれば物凄い規模の宇宙ブームは来そうだよね。それで、僕達が外の星で拾った石を高値で取引したり、宇宙グッズとかを大量生産して世間一般で広く販売したり」
「宇宙で採取した植物のレプリカやら、宇宙外生物を模したぬいぐるみも作られそうですね」
「うわーありそー。で、他所の商人がコピー商品作ったり空想の宇宙グッズ作ったりするんでしょ?」
「ハッパギルド長なら事前に対策しそうではありますね」
「だねーあはは……モヨ、所でさ」
『はい?』
「出発式って何かするの?」
『手短なインタビューをするので、それに簡単に一言だけ貰えたらそれでいいそうですよ。で、屋上にバスラの友達が来るのでその友達に乗り込みます』
「えー、一言欲しいなら早く言ってよ。何か考えないとじゃん」
『行ってきます!とか簡単な一言でもいいんですよ?』
「そんなわけにはいかないでしょ」
そう言いながらエメラルドさんはギルドの屋上を見つめる。屋上にいる報道陣がこちらに気付いたのか、一斉にカメラを車に向けてくる。
「お2人とも、そろそろ目的地に到着しますよ」
「はーい」
ドランさんは車の高度を下げ、ギルドの屋上にある空きスペースに停車した。
「たった今、モヨ様が現場にご到着いたしました!ご親友であるドラン様とエメラルド様もご一緒です!」
沢山のカメラが車のドアに向けられる。ドランさんが先に出てドアを開けて外に出ると、私達のいる後部座席のドアを開けてくれた。
「(来たーっ!)」
「(ドランさんとエメラルドさんを連れていくんだ……)」
「(普通の格好だ。宇宙服とか着ないのかな?)」
周囲から心の声が聞こえ、同時にパシャパシャとカメラのシャッターが切れる音が鳴る。
「わぁー!すごーい!」
「皆様、おはようございます」
エメラルドさんはいつのまにかアイドルモードに切り替え、周りに愛想を振り撒いている。ドランさんは相変わらずの無表情でマイペースに接している。
「やあやあ!モヨさん、おはようございます!」
私達が屋上の中央に移動すると、近くで控えていたハッパギルド長が元気にお出迎えしてくれた。
そこからはハッパギルド長による簡単な出発式が始まった。
冒頭はギルド長による挨拶から始まり、次に私達が宇宙旅行への意気込み的な一言を喋り、最後に写真撮影の時間……私達に配慮したのか、とても簡単な出発式になっていた。
因みに、意気込みについて一言述べるコーナーでのエメラルドさんは
「未知の世界に行くのはすっごくドキドキするけど、とっても楽しみです!」
という具合に、唐突な出発式にも関わらず結構しっかりした受け答えをしていた。流石プロ。
「宇宙への旅行。人類の歴史に新しい1ページを刻むであろう、実に斬新かつ革命的な……」
ドランさんは真面目なのか不真面目なのか分からないが、何か難しそうな話をしていた。
私は『行ってきます!』と、本当にただ一言だけ言った。
こうして何事もなく、なんとか出発式が終わった。
『じゃあ友達をお呼びします!』
そう言って私は、空に向かって『迎えに来てー!』と、簡単なテレパシーを飛ばした。
すると、朝の青白い大空に妙な光が発生。楕円形の横長い光が現れたかと思うと、その光は空のあちらこちらを飛び回り、やがてギルド上空で停止した。
謎の飛行物体はギルドの屋上に降りていく。光は降下と共に次第に収まっていき、屋上に到着する頃には謎の飛行物体の正体が明らかになった。
「こ、これはまさか……!
「間違いない!宇宙船だ!」
光の正体は、大型車よりも大きな銀色の楕円形の物体。繋ぎ目1つない、銀ピカの宇宙船だ。
「すげぇ……」
「あっ、あの!モヨ様、あれは一体……!」
『あの宇宙船は私の友達です!』
「友達の宇宙船ですか!」
「未来的だぁ……!」
「(宇宙船の所有者と仲良しなのか、はたまた、宇宙船そのものと仲が良いのか……)」
周囲がざわつく中、楕円形の宇宙船から謎のスポットライトが出て私達を照らす。
光に照らされた私達は瞬間移動で宇宙船の中へと運ばれ、銀色の空間に移動した。
「どこ此処……まさか宇宙船の内部?」
『その通りです!この宇宙船に乗ってこの星から離れますよ!』
私は銀色の壁に向かって『お願いします!』と言うと、それに呼応したかのように銀色の空間がぐらりと揺れた。
「おぉ、確かにすっごく宇宙船っぽいけど、これって本当に大丈夫な……うわっ!」
エメラルドさんが台詞を言い終える前に、私達のいる空間全体が謎の浮遊感に包まれた。
「なにこれ!?なんか身体が浮いて……いや、本当に浮いてる!?」
エメラルドさんの足が床から離れ、プカプカと宙に浮かぶ。
「どうやら今現在、重力が働いてないようですね。無重力です」
「無重力!?」
冷静に分析するドランさんは、いつのまにか180度回転して逆さになって浮かんでいる。
『私達の乗る宇宙船が宇宙空間に出たんです!星の重力から解放されたこの場は、完全な無重力になっております!』
「なんかふわふわして変な感じ〜!これ、何とかならないの!?」
『なんとかできますよ!すいませーん、ちょっといいですかー?』
私が再び宇宙船の壁に話しかけると、壁に黒くて小さな丸が2つ現れた。
『モヨ、どした?』
『重力が欲しいそうなので、この空間に少し重力をください!』
『はーい』
宇宙船が返事をすると、空間が再び変化する感覚がした。宙であたふたしていたエメラルドさんは床に吸い寄せられ、何とか足から着地をした。
「(……念力使えば無重力でも平気だったじゃん)」
エメラルドさんは1人で冷静になりながらも、壁にできた謎の丸い物体に目を向けた。
「モヨ、これって何?」
『宇宙船の目です』
「宇宙船の目……?もしかしてこの宇宙船って、生き物なの?」
『そうです!この宇宙船は、シルバーディスクという魔物が組み合わさってできた乗り物でして……』
「シルバーディスク……って、バスラと同じ種族の魔物だよね?物凄く珍しい魔物だって聞いたことあるけど……それが沢山?」
『バスラと一緒に宇宙空間に出て探索してたら、秘密基地に住むシルバーディスクの皆さんを発見して、そのままお友達になったんです』
「素敵な出会いですね」
「シルバーディスクって宇宙に住む魔物だったんだ……」
『はい。彼らが住んでる秘密基地を探索したら、これまた物凄く興味深い物が沢山出てきて……』
「心躍りますね」
「宇宙の秘密基地かぁ……何か凄そう」
『凄いなんて一言では済まないほどに凄かったんです!ですが、だいぶ放置されていたようで一部は破損したり故障したりしていて……なので私は、シルバーディスクの皆さんと協力して、秘密基地を完全復活させようとしてたんですよ!』
「……それって復活させて大丈夫なやつ?変な物が復活したり、秘密兵器的なやつが暴走したりしない?」
『大丈夫だと思います!』
「そう……因みに、その秘密基地って元々何をする場所だったのか分かったの?」
『何とか判明しました!なんと、この秘密基地は……ずいぶん昔に放置された宇宙ギルドだったんです!』
「…………マジで?」
『マジです!』
シルバーディスクの棲家の正体は、なんらかの理由で放置された宇宙ギルドだった。
「宇宙ギルドって……えっ?文字通り宇宙にあるギルド……の、廃墟……?」
『そうです!で、皆んなで力を合わせ、頑張って宇宙ギルドを修理しました!そしたら、宇宙ギルドの一部の機材が正常に稼働し始めたんです!』
「未知の機材であるにも関わらず、よく修理できましたね」
『マニュアルとか説明書のような物と、未知の言語も翻訳できる装置があったんです。それを元に頑張って修理しました』
「よく修理できたね……」
『この修理により宇宙ギルド内に人間が入れるようになり、更に、ギルドを中心に遠くの惑星に人を送れる装置が稼働しました!』
「ギルドから別の惑星に移動できる装置?」
『はい。この宇宙ギルドの冒険者は恐らく、遠くの惑星で探索していたのでしょう。スカイタウンの冒険者が、魔法陣で別の地方に移動して探索するように……』
「えぇ!?規模デカすぎでしょ!?色んな星に出向いて探索に出るとか……!」
『しかも宇宙ギルドの冒険者は様々な惑星から来た異星人の方々だったようです!異星人の冒険者は目当ての星に行けるギルドに移動し、そこから様々な惑星に出向いていたと予想してます!』
「おー」
さっきからドランさんの反応が薄い。
「異星人のギルドかぁ……さっきから規模が大きいなぁ」
『宇宙ですから、規模も宇宙レベルなんですよ!あっ、そろそろ宇宙ギルドに到着するみたいです!』
「えっ?もう?」
「あっという間ですね」
『高速で移動も可能で、ワープもできますからね!』
「そんなことしてたの?」
『皆さんの様子を見ながら何度もしてましたよ』
目当ての建造物が近付いてきたのが感覚で分かった私は、壁に向かって『壁を透明にして秘密基地を見せてあげてください!』と言った。
『『『はいよー』』』
壁が反応し、私の目の前にある銀色の壁がスーッと透明になっていく。外の煌びやかな宇宙の景色と共に、中央に浮かぶ巨大な人工物が現れる。
宇宙船より遥かに大きい、真っ白で巨大な球体。
『あれが宇宙ギルドです!』




