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17話 チーター登場

 煙が晴れた先に広がるのは荒れた地面。


 そして冒険者が放った斬撃と無数の火炎球。


「…………は?」


 エメラルドにぶつけた筈の攻撃が、時が止まったかのようにピッタリと停止していた。


『まだまだだね』


 どこからともなくエメラルドの呆れた声が聞こえたかと思うと、空中で停止していた斬撃と火炎球が逆再生したかのようにその場から離れていき、周囲に飛び散り始めた。


「!?」


 その場から全て離れた攻撃は、攻撃を放った冒険者の元へと飛んでいく。


「!」


 魔法使いは急いで魔法壁を作成し、自身の繰り出した攻撃から身を守る。が、猛攻に耐えきれず魔法壁がヒビ割れていく。


「うぅ……!」


 魔法使いは壁を再生するが、再生が間に合っていない。


 やがて攻撃は収まったが、2人は防ぎきれなかった衝撃によるダメージを喰らっていた。

 魔法使いは魔法壁を限界まで張っていた為に魔力を使い過ぎてしまったようだ。


「大丈夫か!?(くそっ!爆破に手間取りやがって……!)」


「も、もうムリかも……(アイツ、何で爆発しないの……!?)」


 ボロボロの2人は脳内で妙な事を言いながら、その場で何とか立ち上がる。


『大変そうだね』


 そんな剣士と魔法使いの背後に、唐突にエメラルドが現れた。


『村を2つ滅ぼした罰だよ』


 エメラルドは、自身の攻撃に耐える2人に向かって手をかざし、軽く力を込めた。


 エメラルドが何かする寸前に、魔法使いは力を振り絞り堅牢な魔法壁を作り上げた。


『意味ないよ』


 エメラルドがポツリと呟くと、念力による衝撃が2人目掛けて放たれた。念力は魔法壁をすり抜け、2人は地面ごと派手に吹き飛ばされた。


「あっ」


 2人は呆然とした顔のまま吹き飛んだ。


 構えていた武器は弾き飛ばされて何処かへと飛んでいき、魔法防御のある高そうな服は衝撃によりボロボロになった。


「か、壁……が……」


「な、何なん……だ。あの、力……」


 ボロ雑巾のような姿になった哀れな2人は地面に転がる。もう戦う意思すらないようだ。


『さてと……』


「ひっ!」


 エメラルドは2人から目を逸らし、1人残った謎の青年を睨みつけた。


「(こいつ、爆発しない……!何で……!?)」


 青年は先程からエメラルドに意識を向け、何かをしようとしているらしい。

 だが、エメラルドは念力のバリアに守られている為、相当な事が無い限りは攻撃を喰らわない。


『何してんの?』


「えっと、あの……(僕の能力に反応しない……!まさかエメラルドにはマナ、魔力が無い……!?)」


『能力……もしかして君、僕の魔力で爆破を起こそうとしてた?』


「なっ……!能……何で……!?(僕の能力がバレてる……!)」


 どうやら謎の青年には、他人の魔力やマナを利用して爆発を起こす能力があるらしい。


『他人の魔力を爆発させるなんて能力、初めて知ったよ。君、チーターでしょ』


 エメラルドは相手がこれ以上下手な真似をしないよう、念力で青年の全身を掴んで固定した。


「!?(う、動けない……!)」


『ここで大人しくしててもらうよ』


 エメラルドは青年の頭に右手をかざし、手のひらに力を込め始めた。相手を気絶させる程度に力を放出するつもりだ。



「(アイテム閲覧!)」


 エメラルドが攻撃する寸前。青年は突然、頭の中に妙な言葉を浮かべた。



 青年の脳内に妙な図が見えたかと思うと、エメラルドの目の前から青年の姿がパッと消えた。



『は?』



 念力で捉えていたはずの青年が消え、手のひらから放たれた念力は何もない地面に激突した。


『何?』


 エメラルドはテレパシーを展開して青年を探すが、青年と思しき人間はどこにも見当たらない。この世から忽然こつぜんと姿を消してしまった。


『一体どうやって……』


 と、エメラルドが言いかけたその時。


 突然、エメラルドの頭上に大きな魔石が何の前触れもなく現れた。


 大人の頭くらいのサイズはある魔石は、内側から物凄い光を放出しながらエメラルドのいる大地へと落下してくる。


『!?』


 エメラルドは咄嗟に魔石に意識を向け、魔石にテレポートを使用した。



 魔石はその場から消え、天より高い位置へと瞬間移動。

 


 魔石がエメラルドの頭上から消えた所で、遥か上空で物凄い爆発が発生した。



 爆音が響き渡り、一瞬だけ世界が真っ白になる。周囲に豪風が吹き荒れ、周囲の木々を荒々しく揺さぶる。どうやら上空で物凄い爆発が発生したようだ。


『危なっ……』


 エメラルドは上空を見つめながら顔をしかめた。


 天で起こった大爆発から察するに、どうやらあの青年は、少しの魔力からでも高威力の爆発を生み出せるようだ。


『爆発したら魔力は全部吹き飛ぶ上に、相手に大ダメージ……例え爆発に耐えたとしても、魔力はすっからかんだからまともな攻撃ができない……嫌な技だね』


『爆発も嫌ですがアイテム欄はもっと嫌らしいですよ』


『あ、モヨ』


 エメラルドが独り言を呟いていると、魔法の子のモヨがエメラルドの隣に現れた。


『モヨ、どうしたの?もしかしてチーターがいる事を伝えに来たの?』


『違います。エメラルドさんが倒そうとしていた彼、ダイダイ所属のランク10冒険者「イル」さんの能力についてご説明しようかと……』


『説明?わざわざ?』


『イルさんを除いた、残りの人間3人もチーターです。此処からは流石のエメラルドさんでも、厳しい戦いになるかと思います。もしかしたら私の手助けも必要になってくる可能性もあるので……』


『なるほどね。確かにチーターが相手だと、僕でもだいぶ厳しいかも……』


『とりあえず、イルさんの能力について説明しましょうか?』


『うん。お願い』


『分かりました!』


 モヨは両腕をブンブン振り、その場で解説を始めた。


『イルさんは『爆発』と『無限アイテム欄』を使うチーターです。爆発はさっき見ての通り、相手の魔力やマナを爆発させる技です』


『うん』

 

『で、彼がもう1つ所持している特技は『無限アイテム欄』。手に触れた物はどんな物だろうが特別な異空間に転移させ、いつでも取り出せる物凄く便利な技です』


『それって大小様々なアイテムを自由に持ち運びできるって事?もしかして、大きな魔石が僕の頭上に現れたのもこの能力のせい?』


『そうです!しかも、異空間に入れられるのはアイテムだけでなく、なんと能力を使用した自分自身も入れられるらしいんです!』


『は?どゆこと?』


『えーっと……異空間にアイテムだけじゃなくて、人間も入れられるそうなんです。それでイルさんは先程、自分自身を異空間に転送したようで……』


『はぁ!?そんな事できるの!?』


 モヨの説明を聞き、エメラルドが驚いて声を荒げる。


『だからさっきアイツが目の前で姿消えたの!?異空間に閉じこもったの!?』


『そうです!』


 あの時イルは、アイテム欄から魔石を取り出してエメラルドの頭上に配置し、魔石を起爆させつつ異次元に移動した訳だ。


『出られる場所は『自分を入れた場所』で固定されるようですが……どうやらイルさんは、エメラルドさんが誰かに倒されるまでずっと出ないつもりのようです』


『卑怯者じゃん』


『しかも、彼を除いた残り3人もチーターです。彼らとの戦闘中にイルさんが再び現れ、突然奇襲される可能性もあります』


『……イルを待ち続けるわけにもいかないし、かと言ってそのまま放置するのもなぁ……』


 エメラルドは両腕を組み、分かりやすく困惑する。


『エメラルドさんは異空間に攻撃できる手段はありますか?』


『無いよ。異空間をどうにかできる手段なんて』


『ちなみに残る3人のチート能力もお教えしますか?』


『うーん……とりあえず1つだけ教えて』


『3人の共通能力は『無敵化』。その能力に加えて彼らにはもう1つ能力があります』


『マジ?』


『マジです!』


『無敵化ならどうにかなるかもだけど……それ以外に能力があるとなると、だいぶ厄介かな……』


 エメラルドは頭をひねる。


『エメラルドさん、どうしますか?もし駄目そうなら、お助けとして私も参加しますが……』


『…………わがままを言うと、この戦いはできるだけ僕1人で何とかしたいんだよね。チーターもまとめて全員倒してみたいかな』


『おぉ、流石エメラルドさん……』


『せっかく苦労して新しい力を得たんだから、この力でできる限り戦ってみたいんだよ』


『では、手助けは要らないんですね』


『うん。僕がピンチになるまで手助けしないで』


『分かりました。ではエメラルドさん、遠くからご健闘をお祈りしてます!』


『ありがとう』


 エメラルドからの労いの言葉を聞いたモヨは、瞬間移動を使ってこの場からパッと姿を消した。


『さて……アイツらを倒す為に、ちゃんとした作戦を立てないとね……』


 いよいよ本腰を入れたエメラルドは、安全な場所で作戦を立てる為にテレポートでその場から速やかに移動したのだった。

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