8話 意地っ張りグラさん
サラサさんとの仕事を終えた次の日の朝……
「モヨ、おはよう。昨日は大活躍だったらしいな」
レイトさんは挨拶共に真っ先に、昨日の詐欺事件の話題について触れてきた。
「違法魔導具使う奴らと遭遇したが、無事捕獲したらしいな」
『えっ……いえ、違います!あの時大活躍したのは冒険者の方です!私は手助けをしただけで……』
「そうか。だが、モヨを利用した冒険者はお前の事を凄く褒めてたぞ」
『えっ!?そうなんですか!いや、それほどでも……』
「生後数十日の奴が何を謙遜してんだ」
私が照れていると、部屋に男性ギルドスタッフが入ってきた。
「モヨさん、冒険者のグラさんからご指名が入りました。若草草原で自由探索だそうです」
『はーい!』
ギルドスタッフに呼ばれた私は、急いでランタンの中に入り込んだ。
「モヨ、頑張ってこい」
「はい!行ってきます!」
今日はどんな冒険者とお仕事するんだろう。そんな事を考えながら、ギルドスタッフの手でギルドへと運び込まれた。
「チッ……(いらねえって、こんなの……)」
ランタンに揺られ運ばれた先にいたのは、大きな剣を背負った元気そうな青年だった。逆立つ短髪を揺らしながらイライラしている。
「こちらが貴方のお手伝いとなる、ヒカリダマのモヨさんです」
「……(うるせぇ……)」
青年はイライラしながら、私が入ったランタンを雑に受け取った。
『わわっ!?』
ランタンがグラグラと揺れ、不意を突かれた私は壁に何度か激突してしまった。
そして青年は鞄にランタンを乱暴に付けると、早足でギルドから出て行ってしまった。
「くそっ……(何で俺がこんな物を……)」
『(この人、物凄く不機嫌だ……)』
この青年は、どうやら不本意で私を持ち歩いているらしい。誰かに言われて仕方なく……と言う感じかな?
でも、とりあえず挨拶だけはしておこう。
『初めまして!モヨです!』
私は青年に向かって元気よく挨拶をした。私に気がついた青年は不機嫌そうな顔でランタンを持ち上げ、中にいる私をギロリと睨みつけた。
「俺の名はグラ……」
『グラさんですね!宜しくお願……』
「言っとくがな!俺は仕方なくお前を連れてくんだからな!お前の言いなりにはならねぇ!」
『ええっ!?言いなりって……』
彼は更にまくし立てる。
「俺はお前みたいな奴に指図されんのが大嫌いなんだよ!だから今日はずっと黙ってろ!いいな!」
何か物凄い怒ってる……てか、何か誤解されてない!?違う違う!私は命令なんてするつもりはない!
ここは何とかして誤解を解かないと!
『『『待ってください!!!!』』』
「うわっ!?」
私はテレパシーで思い切り大声を上げた。
「な、何しやがる……!」
青年は私の大声が脳に響いたのか、空いてる手で頭を抱えながらしゃがみ込んでしまった。
『誤解です!!私はあくまで冒険者のサポートをするだけです!!命令なんてしません!!』
「だ、だが……」
『そりゃ私だって頭はあるので色々と提案はすると思います!ですが、最終的に行動をするのは貴方です!指示なんてものは出しません!』
「……」
私の言葉を聞いてグラさんは口をつぐんだ。彼の顔を見るに、まだ怒りは消えてないようだ。
『…………グラさん、そもそも私は生後数十日です。まだ0歳なんです』
「…………えっ?」
私の歳を聞いたグラさんの眉間からシワが消えた。顔から怒りは消え、困惑の色が見え始める。
「お前……赤ん坊なのか……?」
『そうです!この世界の知識はからっきしなので、命令なんて大層な事は出来ません!最終的に冒険が成功するかどうかは貴方に掛かっています!』
「お、おう…………」
『……グラさん、精一杯サポートするので、どうぞ宜しくお願いします!!』
「そ、そうか…………えと……急に怒鳴って悪かったな…………」
『いえ!分かってくれたのならそれで十分です!では気を取り直して……グラさん、今日は宜しくお願いします!!』
「……宜しく(こいつ、とりあえず悪い奴じゃ無さそうだな……)」
グラさんから敵意が感じ取れなくなった。どうやら少しは誤解は解けたようだ。良かった……
何とか仲直りを済ませ、若草草原へと移動中……
『所でグラさん』
「何だ?」
私はとりあえず、今日のグラさんの目的について尋ねてみる事にした。
『今回は若草草原で何をするご予定なんですか?』
「今日はこの辺の魔物を適当に狩るだけだ。モヨは魔物が何処にいるのかを俺に教えろ、いいな?」
『分かりました!私にお任せください!』
最初はどうなるかと思ったけど、これなら何とか自分の仕事が出来そうだ。よし、今日も張り切って頑張るぞ!
『グラさん!あの大きな植物の影にビッグラットがいます!』
「あれか!とりゃあ!!」
若草草原に到着したグラさんは全力で駆け込み、植物目掛けて大きな剣を振り下ろす。だが、グラさんは見当違いの方に振り下ろしてしまった為、ビッグラットに攻撃は命中しなかった。
「ヂューッ!!(ナンダコイツ!コレデモクラエ!)」
ビッグラットは素早い動きでグラさんから距離を取り、そこから全速力で駆けてグラさん目掛けて突進を仕掛けてきた。
『グラさん!?』
「うわっ!?」
ビッグラットの突進をモロに食らったグラさんはその場に転倒、ビッグラットはその隙をついて遠くへと走り去ってしまった。
「くそっ!!(見習いの時に何度か戦った魔物だったのに……!)」
グラさんは顔を歪め、握り拳を思い切り地面に叩きつけた。
『大丈夫ですか……?』
「これくらい俺は平気だ!くそっ……!(初めての1人での討伐とは言え、あんなザコにやられるなんて……!クソだせぇ……!)」
グラさんはとても悔しそうだ。
『グラさん……次行きますか?』
「ああ、頼む!(次は絶対に倒す!)」
グラさんは私の問いに元気よく答えてサッと立ち上がった。どうやら、やる気は十分あるようだ。
『(グラさんは何処かで冒険者になる特訓はしたみたいだけど、まだ魔物との戦闘経験が浅いみたい……)』
なら、とにかく魔物と戦わせて経験を積ませるまで!
『グラさん!あの木の根元にグリーンワームが居ます!』
「よし!」
私の情報を聞いたグラさんは元気よく返事をして駆け出し、構えた剣をグリーンワーム目掛けて振り下ろした。
「ギュッ!?」
攻撃を受けたグリーンワームはのけぞり、それでも反撃をしようとグラさんに顔を向けた。
「当たるか!(何度も同じヘマはしねぇ!)」
グラさんはその場から急いで飛び退き、グリーンワームの糸攻撃をかわす。そして魔物が攻撃をした隙を突き、グラさんは再び剣を振り下ろした。
「ギッ……!」
魔物はその場に倒れて煙を吹き出し、魔石やマナ袋などのアイテムを残して消えてしまった。
「よ、よし……やったぞ……!(初討伐だ……!)」
『グラさん!おめでとうございます!』
「へっ……これくらいどうって事ねーよ!(やった……!1人で初めて野生の魔物を倒せた……!)」
『流石グラさん!では、この調子でどんどん魔物を倒していきましょう!』
「おう!」