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7話 サラサさんの実力

「……よし!とりあえずこの詐欺の事をギルドに報告しに行きます!」


『はい!』


 サラサさんは両頬を叩いて気を取り直すと、ギルドに向かう為に全速力で走り出した。





(逃すかよ)




 背後から敵意を察知した。


『!? サラサさん!』


 私は警告するが時既に遅し。サラサさんの身体中に魔力を纏った何かがまとわりついて、サラサさんの動きを止めてしまった。


「……あれ?急に身体が軽く……」


『うわっ!?サラサさん足が浮いてます!』


「ええっ!?」


 サラサさんが動けなくなり、身体がフワリと宙に浮かんだ。


「う、動けないッス!?」


「動けないだろうさ。俺が掴んでるんだからな」


 背後から聞き覚えのある声。間違いない、先程遭遇した詐欺師だ。


「お前みたいな奴なら大丈夫だとは思ったが、念の為にアレをする事にしたんだ(悪く思うなよ)」


「なっ……何する気ッスか!?」


「ん?何でもないよ、ただ少しだけ記憶を消し飛ばすだけだから(もしかしたらほぼ全部消し飛ぶかもだけどな)」


『記憶!?』


「記憶を消すだなんて……そんな高度な魔法がその辺の奴に出来る訳がない!」


 サラサさんは敬語抜きで叫びながら身体を捻るが、中々抜け出せないようだ。


「出来るさ。俺達にはコレがあるんだからな」


 そう言って魔法を使ってない詐欺師の1人は、棒状の謎の魔導具を取り出した。よく見ると魔法使いの詐欺師も、この謎の棒を使って魔法を使用しているようだ。


「あっ!それは……違法魔導具!何でそれをお前達がそんな危険な物を持ってるんだ!!」


『違法魔導具?』


「へぇ、お前はコレが何なのか分かるのか。こんなのとは無縁そうなのに。そうだ、コレは魔法の威力を簡単に底上げしてくれる魔導具だ」


 詐欺師は謎の棒をこれみよがしに掲げて見せる。


「これさえあれば、どんな魔法使いだろうが簡単に高度な魔法を使用出来る。まさに夢のような魔導具だ」


「違う!魔法にマナを混ぜて威力を無理矢理強化する危険な魔導具だ!」


「へぇ……そこまで知ってるのか、凄いな(見た目の割に結構色々と知ってるんだな)」


「まあ、記憶飛ばしたらそれすらも分からなくなるかもだけどな」


 サラサさんは必死に叫び続けるが、詐欺師達はどこ吹く風だ。


 それにしても先程から大声で叫んでいるのに、近くにいる魔物は全く見向きもしない。もしかしたら視界や聴覚を妨害する魔法でも使用しているのだろうか。


「そんな魔導具を使ったら使用者もタダでは済まない!今すぐ使用を中止するんだ!」


「大丈夫、俺はそんなヘマはしない。これまでに何度かコレを使ったが、この通りピンピンしてるしな」


「ま、そう言う事だから。お前には念の為に、この事は忘れて貰うからな」


 そう言うと何もしてない方の詐欺師が、サラサさんを睨みつけながらぶつぶつと何かを呟き始めた。


『た、大変だ……!』


 これは大ピンチだ。まさかこんな姑息な詐欺に凄そうな魔導具を使うとは……


 いや、道具で強化したとは言え、コレくらいの詐欺を働くだけの魔法にしかならないだけか……もしかしたらこれ以上の使い方をする勇気が出ないだけかもしれない……どちらにせよ、このままではサラサさんが危ない。


「くっ……!(隙さえあればこんな相手、どうにか出来るのに……!)」


『えっ?サラサさん、あの2人を何とか出来るんですか?』


「(これくらいの相手なら多分出来ると思います!ですが、今は魔法で縛られて体が動かなくて……!一瞬でもこの魔法から解放されたら勝機はありますが……今できる事と言えば、喋ったり目を閉じる事くらいしか……!)」


『それなら大丈夫かもしれません!サラサさん、今すぐ目を閉じてください!』


「分かりました!」


 サラサさんは私の指示に従ってギュッと目を閉じた。


「は?急に何を……」



『今だーーーーっ!!』



 サラサさんが目を閉じたのを確認した私は、ランタンの中で全力で光った。


「うわっ!?」


「何!?」


 ランタンから溢れる光をモロに食らった詐欺師達は怯み、魔法から意識を逸らした。それと同時にサラサさんが魔法から解放され、身体が自由になった。


『よし!今回は気絶してない!』


 毎日光る練習しといて良かった!



「女ぁ!逃さねーぞ!!」


「目潰し喰らおうがどれだけ逃げようが探知魔法で探し出して魔法を喰らわせられる!どちらにしてもお前はもう終わりだ!!」


 詐欺師達は目を覆いながら吠えるが、サラサさんはその場で仁王立ちしたまま。逃げる素振りは一切見せない。何をするつもりだろうか。



「……私は逃げも隠れもしない」



「は?何を適当言って……あ、あれ?」


 魔法で視力を回復したのか、詐欺師達はすぐに目を見開いてサラサさんを睨みつけ……目の前の光景に困惑した。


「お前、そんなデカかったか……?」


 サラサさんの身長が目に見えて高くなっている。魔力もどんどん上がっていき、声も低くなっていく。


「貴方達は絶対に逃さない」


 サラサさんの身体が150くらいから190以上にまで伸びていた。と言うか、これは……


『さ、サラサさん……男性になってる……?』


 さっきの可愛らしい少女の姿から打って変わって、スラリと高身長の顔立ちの良い青年になっていた。


「な……何で!?何でさっきからアイツに魔法が効かねぇんだ!?」


「一体何が……ぐっ!?身体が急に動かなく……!」


 サラサさんに向かって魔法を使用していた詐欺師2人が急停止した。棒を握り締めたまま、必死に身体を動かそうともがいている。どうやらサラサさんが魔法を使い、この2人を止めたようだ。



「止まれ」



 サラサさんが詐欺師に剣先を向けた途端、周囲の植物が急成長を始めた。伸びた植物は詐欺師の身体をどんどん縛っていく。物凄い速さだ。



 やがて植物は詐欺師2人の身体を完全に覆い、ガチガチに拘束してしまった。詐欺師だった物はもはや身動きすら取れないようだ。



『まるで緑色のミイラみたいですね……サラサさん、これ大丈夫ですか?』


「大丈夫です、拘束して身動きを封じているだけです(仮死状態です)」


『(仮死状態って何!?)』


「さて、このままギルドに向かうとしましょう」


『あ……はいっ!』


 背が高くなったサラサさんは緑色の物体を魔法で持ち上げ、ギルドに向かって歩き始めた。


『サラサさん……凄いです!あんな凄そうな道具を持った詐欺師を捕まえるなんて……!』


「彼らは大した力が無かったので、違法魔導具を手にしてもそこまで力が上がらなかったようですね。モヨさんの手助けもあって、まだ未熟な私でも何とか勝てました(今回は大した事ない相手で良かった)」


『いえいえ!あの植物を操る魔法は物凄かったです!それにしても……先程と比べて、随分と姿が変わってしまっているようですが……それは一体?』


「私、魔力を操作すれば好きに性別変えられるんです。女性の姿だと力が上がり、男性の姿だと魔力が上がります」


『そんな事が出来るんですか!?凄いですね……!こんなに強い魔法があれば、この辺の魔物達を一掃出来るのでは?いや、女性の姿でもめちゃくちゃ強かったですけど」


 女性のサラサさん、初心者なのに短時間で魔物を13匹も倒すって結構凄いと思う。どの魔物もほぼ一撃で仕留めてたし。


「いえ、私はまだ経験不足です。魔物も環境も、何もかもが本で得た知識……今はとにかく実践を通して経験を重ねなくては……(まだ上級者には、遠く及ばない……)」


 サラサさん、性別が変わって考え方も変わってるような……この姿だと声を張り上げないし、心の声も聞こえるし……


「今なら魔法の威力が倍になるのですが、この姿にも弱点があって……」


『弱点?』


「はい、実は私…………っつ!?」


『!?』


 会話している途中でサラサさんが派手に転び、草が生い茂った所に頭から突っ込んでしまった。私は頑丈なランタンの中に居たので怪我は無かった。


「あっ……!?モヨさん大丈夫ですか!?」


『私は大丈夫です!それよりもサラサさんの方が大変な事になってます!!大丈夫ですか!?』


「大丈夫です……無傷です……」


 サラサさんはゆっくり起き上がり、身体やランタンについた汚れを軽くたたき落とす。


『一体何が……』


「何でもありません、実は…………私、この姿になると運動音痴になるんです…………」


『ええっ!?』


「体の動かし方は理解している筈なのですが……少しでも気を抜くと、何もない所でよく足をつまずかせ、時には転倒してしまうんです……」


『それは……大変ですね……』


「更に視力も低下するので……なので、1人で探索する際は、力が強く運動神経の高い女性の姿の方が好都合なんです……」


『成る程……』



 どうやらどの姿にも弱点はあるようだ。だが、どちらになろうが強い事に変わりはない。



「……本日は、モヨさんのサポートのお陰で大変助かりました。ありがとうございます(モヨさんが居なかったら今頃どうなっていた事やら……)」


『お役に立てて良かったです!また機会があったら、冒険にご同行させてください!』


「ええ、こちらこそ宜しくお願いします」


 どうやら今回は無事に仕事を終える事が出来たようだ。この調子で次も頑張るぞ!





 緑色のミイラを連れてギルドに到着した後……



「すいません、お時間宜しいでしょうか」


「はい、本日はギルドにどのような……(でっっっっっっっか!?!?)」


「イケメン!?!?(どちら様でしょうか)」


 行きの時とは姿が変わったサラサさんに困惑するギルドスタッフ達。主に女性スタッフさんがざわめいているようだ。


「……(イケメンだなんて……私、運動音痴なのに……)」


『(多分ですが、サラサさんが運動音痴だろうが変わらずモテモテだと思いますよ……)』

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