38話 反撃準備
シルクさんの影響で魔法大会の舞台である世界がすっかり変わり果ててしまったが、エメラルドさんのお陰で何とか異空間に逃れる事が出来た。
そんなエメラルドさんと共にシルク退治をする事になった。そこで、私が思いついた『外にいる大量のキメラを何とか出来そうな良い作戦』の詳しい内容を実物を交えてエメラルドさんに説明する事に。
『こっちです!』
私の体内にて。私はエメラルドさんを引き連れて宿屋の外に出た。
「もう一度準備運動しとくか」
「よーく身体動かしとけー」
「発声練習いくよ〜♪」
宿屋の外に広がるのは沢山の建物が立ち並ぶ商店街のような場所。綺麗な石畳の上には、準備運動をする沢山の魔物でひしめき合っていた。
広場では武装したノーム達が輪になって準備運動をしていたり、身体の大きなアルラウネがリーダーとなって小さなアルラウネを束ねている。
隅では様々な荷物を運ぶゴーレムが往復していたりと、各々で違う行動を取っている。
「物凄い数……!この魔物って全部モヨの仲間?」
『そうです!この状況を何とかする為に、戦える仲間に声を掛けて集まってもらったんです!』
「へぇ……(沢山のアルラウネにノーム、ノームが作ったゴーレムまで……あ、マジックボールが魔物達の指揮を取ってる!凄い……)」
エメラルドさんは周囲を見回して感心している。
「でもさ、シルクって相手を化け物に変えたり、自由に操ったり出来るんだよね?この場にいる味方全員が化け物に変えられたりしない?」
『その心配もあるので、皆んなはなるべく外には出さないようにします!』
心配そうな顔で私を見つめるエメラルドさんに、私は自信満々で答える。
「外に出さない?モヨの体内でサポートさせるって事?」
『いいえ、皆さんにも戦っていただきます!』
「外に出さずに?何する気?」
『実はですね……』
私はキメラとシルクとの戦いについての作戦をエメラルドさんに伝えた。
「そんな事まで出来るんだ……確かにそれなら、外に出ずに仲間の助けを借りられるね。シルクに関しては、その作戦で何とかなるかは分からないけど……」
『レイトさんには効いたので、シルクさんにも通用すると思います!多分……』
「まあ……それに関しては僕の得意分野だから、その時は力を貸すよ」
『ありがとうございます!では、時間も惜しい事ですし大急ぎで出発の準備を……』
「あ、それなら大丈夫だよ」
仲間達に声を掛けようとした所を急にエメラルドさんに呼び止められる。
『え?大丈夫……とは?』
「実はこの空間、外と比べて時間の流れが緩やかなんだよ。此処で時間が幾ら経過しても、外では数秒にも満たないんだ」
『そうなんですか!?』
「今はそういう設定にしてあるんだよ。その気になれば時間の流れを外と同じようにしたり、逆に早くしたりできる。この空間は……あの魔石の大きさなら持って半日くらいかな?」
『シルク退治の為の準備に時間を割けるんですか!?』
「うん。シルクの邪魔が入らなければ、だけどね」
『あっ……』
忘れてた。シルクは物凄い力を手に入れたチーターだった事を。
「でも、今の所は来る気配は無いね。神から力を貰ったシルクなら今頃はこの異次元……いや、モヨの体内にまで侵入してたかもしれない」
『でも来ないという事は……もしかしたらレイトさんとドランさんが、頑張ってシルクさんを食い止めてるのかもしれませんね……』
「少なくとも、今のシルクは異空間に干渉できる状態じゃないって事だね。それなら此処で長時間作業しても大丈夫かも」
とにかく、シルクさんをどうにかする為にもレイトさんとドランさんを探し出さなければ。
「レイトさんがモヨを置いてったのは、こうやってモヨに準備させる為だったりしてね」
『その可能性はあります!私の体内には自生した素材や外から持ち込んだ材料や最新機器が沢山ありますから!シルクさんを倒せなかったとしても、もしかしたらシルクさんを何とか止めるキッカケを作れるかもしれません!』
「材料に最新機器……モヨの世界には必要最低限の物しか無いと思ってたから、準備を整えたらすぐに出発するつもりだったけど……此処って道具を作る為の作業部屋とかある?」
『あります!最新式の機材を取り揃えております!』
「それなら、時間の許す限りで準備を整えたいかな。さっきこの空間を作る為に、高価な道具を消費しちゃったし……消費した分の武器を補ったりしたいんだよね」
『装備ならお店にもございます!最新式の道具を幅広く取り揃えております!』
宿屋の隣に作った防具屋から、最新の防具を持った私の分身がいくつも現れてはエメラルドさんの前へと立ち並ぶ。
「えっ!?これってアーマジロの新型!?こっちの防具は名匠ガランドの……何でこんな品揃えが良いの!?(ギルドは最近道具にも力を入れてるとは聞いてたけども……何でこんな所に!?)」
『レイトさんがアーマジロの社長とガランドさんと仲が良いんですよ。ギルド……もとい、レイトさんとコラボした商品もありますよ!』
「コラボまで!?凄い……でも、友人ってだけで此処まで優遇してくれるものなの……?アーマジロとガランドさんの防具は手作りだから、中々世に出回らなくて物凄く貴重なのに……」
『えーと、確か……「詳しくは言えんが賭けに勝った」とか言ってましたね……』
「あー……(その2人は確か極度のギャンブル好きだったような……)」
『まあ、そんなわけで私の体内にも結構良い装備が揃ってるんです!ギルドならもっと良い装備が揃ってたんですけどね……』
「いや充分だよ。そうだ、色々と道具を作成したいから手先が器用な魔物を何人か貸して欲しいんだけど……(いや、流石に居るわけないか……)」
『勿論ございます!ノームや小人などの道具作りが出来る器用な方々が居るので、細々(こまごま)とした小さな魔導具から、大掛かりな装置まで幅広くサポートできます!』
「凄……それならもっと色んな事が出来るじゃん。よし、じゃあ早速準備に取り掛かろっか」
『はい!では、道具を作成できる場所までご案内しますね!』
私は道具作りを手伝う為に、エメラルドさんを連れて道具屋の店内へと入ったのだった。




