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6話 詐欺に遭遇しました

「あのね、君……魔物の倒しすぎは違反だよ。罰金3万キラ」


「そうそう、魔物は依頼があったら幾らでも討伐してもいいけど、何も無い時は10体を超えた討伐はダメなんだよ」


「そうなんスか!?」


 男性の冒険者2人に指摘され、サラサさんは驚き青ざめていく。だが、彼らの言葉は全て嘘だ。


「うん、残念だけどね……(よし掛かった!これなら獲物を掠め取れそうだ!)」


「でも安心して!ギルドに言うつもりは無いから!でも、もし何かあった時に手荷物検査されたら、魔物を多く倒したした事がバレるかもだし……あっ、そうだ。君が取った魔物の素材を幾らか俺らに分けてよ!そうすれば誤魔化せると思うよ!」


 どうやらこの2人はサラサさんの獲物を横取りするつもりらしい。なんて最低な奴らなんだ。


『(サラサさん……)』


 サラサさんに奴らの目的をバラしたい。だけど、此処で私が『目の前にいる2人は詐欺師です!』なんて言ったら、恐らくサラサさんは「ええっ!?サギ!?」と、馬鹿正直に口に出してしまうだろう。


『(そんな事言ったら、この冒険者2人に何されるか分かったものじゃない……!もしかしたらこの2人は冒険者のフリをした山賊の可能もあるかもだし……下手したらサラサさんが大怪我するかも……)』


 どちらにせよ、こんな状況で下手な真似は出来ない。だが、サラサさんは……


「どうする?もしバレたら罰金だけでなく、違反点も加算されると思うよ。ランクとか上がりにくくなるかも。それに今後、何かしら依頼があった時に点数見られるかも……(こういう奴って、点数の話すれば簡単に崩れるんだよな……)」


「ど、どうしよう……(流石に初回で違反点を貰うのは……)」


 サラサさんが迷っている。このまま言いくるめられたら、折角手に入れたアイテムを詐欺師に持ってかれてしまう。せめてこの場からサラサさんを逃がさないと……!


『(……あっ!そうだ!)』


 サラサさんなら、この一言だけで何とかなるかも!


『サラサさん!』


 私は急いでサラサさんにだけテレパシーで言葉を飛ばした。


「ん?」


『サラサさん……私の事、忘れてます?』


『…………あっ』


 私のテレパシーを受け取ったサラサさんは、ハッとして私を見つめた。


「しまった!(ギルド所属のモヨさん連れてる事、すっかり忘れてた!!モヨさん居るなら誤魔化しは通用しない!!)」


 サラサさんから心の声が騒がしいくらいに聞こえてくる。


「(そもそも、ルール違反は私のミス!人の優しさに甘んじて誤魔化そうだなんて考える方が許せない……!)」


 どうやら真剣に考え直してくれたようだ。サラサさんが素直な人で本当に良かった。


「…………よし!」


 やがて覚悟を決めたらしいサラサさんは、真面目な面持ちで詐欺師2人に向き直った。


「自分、決めました!」


「分かった。じゃあ魔物の落とし物を……」


 詐欺師の片方はサラサさんに近付き、鞄を掴もうと手を伸ばす。


「いえ、人に助けて貰うなんて……そんなズルい真似はしたくありません!!」


「……えっ?」


 サラサさんの一言に、詐欺師2人はその場で固まった。


「自分は逃げも隠れもしません!このままギルドに帰って怒られてきます!!」


「ええっ!?君、正気!?」


「違反したらギルドカードに違反点が加算されて、ランクも上がりにくくなるんだよ!?」


「構いません!これは自分の勉強不足が招いたミスです!そのミスをズルしてまで許されたくはありません!!点数も甘んじて受け止めます!!」


「えぇ……」


 サラサさんの迫力ある宣言に、詐欺師の2人は圧倒されて小さくなっていく。


「ご厚意を無下にするのは大変心苦しいのですが、私自身に嘘は吐きたくありません!……先輩方、私を心配してくださり、本当にありがとうございます!!」


「あ、うん……」


「いいよ……えと……俺らが覚えてるルールって、ちょっと古いやつだったかもだし、もしかしたら今は大丈夫な可能性もあるかもだし……」


「間違ってたらごめんね……」


 逆に感謝されてしまった詐欺師2人は、弱々しくも言い訳をつらつらと述べている。


「分かりました!では、これにて失礼します!」


 サラサさんは詐欺師2人に丁寧に挨拶をすると、ギルドに向かって大急ぎで走り出した。


 あっという間に詐欺師と距離が離れ、私はほっと一安心した。


『よ、良かった……何とかなって……』


「ん?どうしたんスか?」


『あの、サラサさん……あの2人は詐欺師です』


「ええっ!?サギ!?」


 あ、やっぱり大声出した。


『はい。腕の立つ初心者からアイテムを奪い取る為に嘘をついたみたいです』


「そんな……!じゃあ魔物の討伐数に制限があると言うのは……」


『嘘です、そんなものはありません!魔物の斃しすぎで大変な事になんてなりません!』


「つ、つまり……自分はもう少しで騙される所だったんスか……!?くっ……不甲斐ないッス……!」


『でも、真面目なサラサさんのお陰であの状況を乗り切る事ができました!流石です!』


「よ、良かった……!でも、あの人達は何であんな事を?例え遠くのギルドに所属していようが、バレたらあっという間に捕まりそうなんスけど……例え捕まらなかったとしても、それこそギルドに居られなくなるのでは?」


『多分ですが……あの被害に遭った人ってみんな、自分が点数貰う程のルール違反をしたと思い込んでるんですよね?』


「?…………あっ、そっか!ルール違反の詐欺に遭った人は皆んな、自分が悪い事をしたと思い込んでるから周りに相談出来ないんだ!」


『そんな感じだと思います。あの詐欺を信じた人は大抵、違反点を付けられるのを恐れてルール違反をした事を隠したがると思うんです。もし被害者が嘘ルールに気付いたとしても、詐欺師は先程のように「もしかしたら過去のルールだったかも」とか言いますから……』


「あー!そう言われたら例え冒険者が嘘ルールに気がついても、向こうの勘違いだったかもってなってそのまま終わってしまうかも……」


『だから事件として中々取り上げられず、捕まえるのも難しいのかもしれません。今はただ被害者が少ないだけ、って事もあるかもですが……』


「そうッスよね……」


 とりあえず今の私に出来るのは、この詐欺の事をギルドに報告して、冒険者を狙った詐欺事件があったと注意喚起させる事だけだろう。


「……よし!とりあえずこの詐欺の事をギルドに報告しに行きます!」


『はい!』


 サラサさんは両頬を叩いて気を取り直すと、ギルドに向かう為に全速力で走り出した。

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