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28話 暴走するヨイトさん

 ついに始まったナイトメアレーシング。1番前をドランさんの操るナイトメアが走り、その後を私達レイトさんが乗るナイトメアが追う。


『後ろを走る脱落者がどんどん増えていきます……!』


「みたいだな」


 後方のナイトメアの群れを見ると、激怒したナイトメアに振り落とされて人が転がり落ちるのが確認できた。



「こんな厳しいレース、初めて見た……(このレース野蛮過ぎだろ……)」


「エメラルドさん、今は他人より自分の身を守る事だけを考えた方がいいよ!」


「……うん、分かった(それくらい言われなくても分かるっつーの!)」


 ライトさんに指摘され、エメラルドさんが心の中で悪態をついている。エメラルドさんもナイトメアの影響を受けて精神が削れているようで、普段より少しイラついているようだ。



 一方、ナイトメア対策バッチリで余裕のある走りを見せるレイトさんは、前を走るドランさんをじっと見つめている。


「ドランの奴、ナイトメアの扱いが上手いな。動きに無駄が一切無い」


『ナイトメアの競馬場に詳しいご様子でしたし、馬の扱い方もある程度理解してるのかもしれませんね』


 ドランさんは素人目でも上手いと分かる程に乗馬が上手かった。


『(レイトさんは馬にあまり詳しくないみたいだし、このままだとドランさんが1位になるかも……)』


 この勝負は、とりあえずギルド側がヨイトさんに勝てばいいので、ドランさんが1位でも、何なら大会に優勝しても構わないのだが……レイトさんが優勝するところを見たい、というのが私の本音だ。


『(レイトさんの優勝の為にも、私も頑張らないと……!)』



 そんなこんなでレース会場はいつの間にか競馬場から離れ、物凄く長い直線のレーンに入った。遠くには空に続く虹が掛かっているのが確認できる。


「あれを渡るのか」


『物凄く綺麗で大きい虹ですね!あんなの初めて見まし……ん?』


 レイトさんとの会話中に突然、ナイトメアの群れの奥から妙な気配を感じ取った。


『(…………人間の気配じゃない?)』


 機械のように精密で正確、そして人間1人分とは思えない膨大な魔力……明らかに人間の物とは思えない謎の気配。


「モヨ、どうした」


『後ろから変な気配がしたんです……まるで機械的で、思考が膨大過ぎて、正確過ぎて……』


「魔法道具を使用してんのか?」


『いえ、道具ではないです!』


 私は後方のナイトメアの群れの中に意識を向け、謎の気配の正体を探る。


『(あれは……ヨイトさんだ)』


 ヨイトさんの操るナイトメアは群れをかき分け、物凄い速さで追い上げてくる。


「こいつか?」


『そうです!ヨイトさんの脳内、凄い事になってますよ……魔法の組み立て発動全てが完璧過ぎて、まるで魔法道具みたいです』


「魔法道具……あいつの頭、そんな凄いのか?」


『凄いって言うか、何かおかしいですよ……人間の脳じゃないみたいです……』


 なんて会話してる間に、ヨイトさんはあっという間に上位の参加者を追い越して私達の方へと近付いてきた。


『ヨイトさん、強化したナイトメアを魔法で無理矢理操って走らせてます!このままだとナイトメアが怪我してしまいます!』


 操られているナイトメアは無我夢中で地面を蹴る。物凄い速さだ。


「いや、多分大丈夫だろう。もしヨイトがナイトメアに無茶させてるなら、今頃スタッフが止めに来る」


『ヨイトさんはナイトメアを潰れない限界ギリギリで走らせてるって事ですか……?』


「かもな。だが、流石に可哀想だ。あいつ、場合によっては……」


 と、レイトさんは最後の言葉を言わず飲み込んでしまった。不穏な動きを見せるヨイトさんを見たからだ。


「邪魔だ」


 ヨイトさんはそう言うと、右手を前へ突き出した。手の中央に物凄い量の魔力が集まる。


「まずい!」


 レイトさんは私を庇いつつ防御魔法を展開した。私達の周りが球状の透明な膜のような物で覆われる。


「どけ」


 レイトさんが魔法を展開した所で、ヨイトさんから物凄い量の魔法弾が放たれた。同じ量の魔力が込められた弾はあちこちに弾け飛び、そこから一直線にレイトさん目掛けて襲いかかってきた。


『うわーーーっ!?』


『(ひぃい!?)』


 弾は全てヨイトさんの防護壁に止められる。だが、魔法の衝撃で前方の地面がえぐれ、レイトさんが乗るナイトメアのリリヤさんが少しバランスを崩した。


『リリヤさん大丈夫ですか!?』


『(魔法の衝撃で足を少し怪我したかも……ほんのかすり傷ですけど)』


『かすり傷で良かった……もし怪我したら、私が頑張って回復します!』


『(……モヨさん、いい奴ですね)』


 リリヤさんは無事だったが、


『ヨイトさん、こんな状況でとんでもない威力の魔法を……!先程までナイトメアの群れの中に居たとは思えません!』


「あいつ、武器も無しにこんな正確な魔法を……もしかするとヨイトはチーターかもしれんな」


『かもしれないです……………………レイトさん、今なんて?』


 今レイトさんの口から、前世で聞いた事ある言葉が飛び出したような……


「チーターだ。かつてこの世界にやって来た異世界人が発した『チート』という言葉が由来でな、『他者から与えられた超能力を使用して悪事を働く』という意味を持っている」


 絶妙に意味も似通っている……


『ヨイトさんがチーター……えっ、もしそうだとしたら今の状況ってかなりマズいのでは……?』


 ヨイトさんに背後を取られているので攻撃され放題。レイトさんはヨイトさんに背を向けてるから攻撃するのはとても難しいし、手の空いている私は魔法攻撃が苦手だ。


 なんて考えている間もヨイトさんは再び手を前に伸ばし、再び手の中心に魔力を集めている。


『ど、どうしましょう……』


 私は不安な顔をレイトさんに向ける。


「ああ、ヨイトならもう大丈夫だ」


『えっ?』

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