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5話 張り切るサラサさん

『サラサさん!前に1本生えた大きな木の陰にグリーンワームが1匹居ます!』


「はっ!」


 サラサさんは私の報告に素直に従い、木の陰で油断していたグリーンワームを視界に捉えて見事に真っ二つにした。


「よし、良い感じ……!」


 サラサさんは物凄く素直な人だった。私の報告を素直に信じてくれるし、無事に魔物を倒せたら素直に喜ぶ。


 だが、素直過ぎて思った事はすぐ口に出してしまうらしい。そのせいか、サラサさんから心の声が殆ど流れて来ない。なので……


「うわっ!?このグリーンワームの落とし物、めちゃくちゃキモいッスね……」


『見た目もぷにぷにしてましたし、中身も柔らかいんですかね』


 なのでサラサさんは、見た物の感想を馬鹿正直に述べてしまう傾向がある。


 よく喋るので、魔物はすぐにサラサさんの存在に気付いて距離を取ってしまう。中には不意を突こうと物陰に隠れ、様子を伺う賢い魔物まで現れる始末だ。


「えーっと、これは……うげーーーっ!?何か動いたッス!?」


『それはマナ袋です!と言うか、今のは声大きすぎですよ!魔物に気付かれます!』


「ああっ!すいません!」


 よく喋るのでこちらの存在が魔物にすぐバレてしまう。遠くにいた警戒心の高い魔物もあっという間に遠くへと逃げてしまう。


『サラサさん……さっきの大きな悲鳴で、遠くにいたリーフバードが逃げてしまいました……』


「あっ!しまった……!よりによって超珍しいリーフバードを逃すなんて……!」


『サラサさん、声!』


「ああっ!?またやっちゃったッス……!」


 私はテレパシーで会話するので、特定の相手にだけ言葉を届けられる。だが、サラサさんが出した言葉は問答無用で周りに届いてしまう。


 もしこの調子のままでサラサさんが魔物だらけの土地に行ったら、きっとサラサさんは大量の魔物達に囲まれてしまうだろう。


『サラサさん、声で魔物に気付かれてしまうので、せめてもう少し控えめに……』


「…………ッス」


 素直で良い子なんだけどなぁ……


「……あっ!疲れてきたのでそろそろ休憩します!何処か安全な場所に……」


『あ、私良い場所知ってるので案内します!あと声大きいですよ!』


「ウス」





 魔物避けが貼られた丁度良い場所に移動したサラサさんは、鞄から小瓶を取り出して中身を一気に飲み干した。


『サラサさん、それって魔物から見つかりにくくする薬ですか?』


「そうッス!自分、結構魔力が高いんで魔物からは目立って見えてるようで……」


『魔法使いによくあると聞きました!もしかしてサラサさんも魔法が使えるんですか?』


「今もそれなりに使えます!」


『今も?』


「はい!ですが今の自分は剣の方が扱いやすいので……魔力は全て身体強化に回してるんス」


 もしかして、昔は物凄く魔法が使えたけど、今は何かが原因で魔法が使いにくくなってしまった……とかなのかな?


『成る程、魔力を力に……それであんなに強かったんですね!』


「えへへ……」


 私の言葉に照れたサラサさんは小瓶を持った手で後頭部を撫でる。


「……モヨさん。あの、自分の声に関して……1つ言い訳して宜しいですか?」


『言い訳?』


「はい!自分って結構声デカいじゃないですか。実はコレ、鍛錬の時の癖でして……自分、本当は国をお守りする騎士団になるつもりだったんス」


『騎士団……何か凄そうですね……』


「物凄いトコなんスよ!騎士団に所属する騎士は腕利きの物凄い方々ばかりで……だから自分もそこに入る為に、幼い頃から剣の達人だったお爺ちゃんに稽古付けて貰ってました!その時にお爺ちゃんは「返事が小さい!もっと声を張れ!騎士団に入るんだろ!」とか「思った事は正直に口に出せ!些細な事でもだ!」とか言われて育って……」


『声を出すのはお爺ちゃんの影響だったんですね……』


「はい。自分もお爺ちゃん子だったんで、お爺ちゃんの言われた通りにどんどん声を出してたら……最終的にこうなったッス」


『そりゃ声も大きくなりますよね……』


「まあ、騎士団だろうが大事な時は流石に声を張り上げないとは思うんスけどね。お爺ちゃんからも「そんな事まで言わなくていい!」と言われてたんで、何でも話すのはやっぱり自分の癖なんだろうなって……」


 癖なんかい。


「結局、憧れも騎士団から冒険者に変わって、余計に大声を出す必要が無くなってしまいました……」


 そもそも騎士団って大声とか必要なの?


「ですが、この大声出す癖も頑張って直していくつもりッス!」


『分かりました!サラサさん、大声出さないよう頑張りましょう!私もお手伝いしますよ!』


「ありがとうございます!!自分も頑張って無駄口を挟まないよう努力します!!……ッス」


 物凄く微笑ましい新人だ。こんな良い子には是非とも長生きして頂きたい。


「所で……モヨさんの身体が大きくなってるような気がするんスけど……あっ、ヒカリダマってマナとか吸収するんでしたっけ?」


『あっ、そうです!どうやら私は、周りに漂うマナや倒した魔物から出たマナを勝手に吸収してるらしくて……魔物ならマナがいっぱいになったら進化するらしいんですけど、私はどうなる事やら……』


「へぇ〜!進化出来たら良さそうッスね!」


『どうでしょうね。ですが、進化出来たら楽しそう……』


 と、サラサさんと楽しく会話をしていると……


(あの冒険者、物凄い腕だったけど……新人っぽいな)


(あのポニーテールの奴は……うん、アイツなら騙せそうだ)


『ん……?』


 遠くから心の声が聞こえてくる。内容からして、どうやらサラサさんに用があるようだが……内容が不穏だ。


「モヨさん、どうしたんスか?」


『何か良くなさそうな人が2名、こちらに近付いて来てるみたいです……』


「良くなさそうな人?……あっ、もしかしてあの冒険者2人の事ッスか?」


 なんて会話をしている間に、冒険者2人がサラサさんの元へと駆け寄ってきた。そこそこ腕がありそうな男性の冒険者だ。見た目からして魔法使いだろうか。


「君、ちょっといい?」


 男性は神妙な顔でサラサさんに声を掛けた。


「あっ、私ッスか?」


 サラサさんは元気よく立ち上がって答える。


「そうそう、そこの可愛い新人冒険者ちゃん。君、何処のギルドに所属してるの?」


「この若草草原の近くにあるグリーンタウンって街のギルドッス!」


「そっか……(よし、俺達とは別のギルドだ。しかも、こいつはかなり素直そうだ)」


「ちょっと大事な話があるんだけど……君、さっき結構な数の魔物を討伐してたみたいだけど……どれくらい倒した?」


「えっと……13体です!」


 サラサさんが素直に答えると、2人は「あー」と大袈裟にリアクションを取った。


「あーやっぱりか……(よし!コイツはアタリだな!)」


「調子に乗って魔物を沢山倒しちゃったみたいだね……いや、初心者にはよくある事だけども(今日は大収穫だ)」


「えっ?えっ?どうしたんスか?」


 見知らぬ冒険者2人に妙な事を言われ、困惑するサラサさん。



「あのね、君……魔物の倒しすぎは違反だよ。罰金3万キラ」



「ええっ!?」


「魔物も急に減りすぎると良くないんだって。何故かは分からないけど」


「そうなんスか!?」


「そうそう(コイツ、かなり素直だな。簡単に騙せそうだ)」


 倒しすぎたら罰金、なんてルールは存在しない。前にレイトさんが教えてくれたのでよく覚えている。


 「冒険者の中には、存在しないルールを提示して新人から獲物を奪い取る、良くない輩もいる」とも聞いていた。それに、この2人の心の声から察するに……


『こ、これは……!』


 間違いない、これは詐欺さぎだ……!

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