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22話 ハイテンションお兄さん

 魔法大会が開かれる予定のライムルーフの町に到着した。


『とても綺麗な町並みですね!』


「グリーンタウンよりシンプルな感じだけど、無骨って感じがして何だかかっこいいね!」


『ですね!今日は大会があるからか、沢山の人で賑わっているようです!とても楽しそうです!』


 私とナナトさんは真っ先に町中へと駆け出し、周りの景色を眺めながらはしゃぐ。


 因みに先程まで私にくっ付いていたトコさんは、私から少し離れた所で石を拾って遊んでいる。


「……」


 先程ゴーレムの揺れで酔ってしまったライトさんは、道の端に座り込み無言で石畳を見つめている。




 一方、ヨイトさんの方は……


「まあ、ヨイト様。お召し物が汚れてしまってますよ」


 ヨイトさんの服についた土汚れを見つけたシルクさん。


「あ、さっきゴーレムから降りた時に汚れたのかな。これくらい大丈夫だよ」


「折角気付いたのですから私に払わせてください。あら、よく見ると袖口が少しほつれてます。後で直さないと……」


 シルクさんはヨイトさんの服をみつめながら少し微笑む。


「……?シルク、そんなに見つめてどうしたの?変なとこでもあった?」


「あっ、いえ……こんなふうにやり取りをしていると、何だか夫婦みたい……だなんて思ってしまって……」


 そう口にするシルクさんは、恥ずかしそうにしながらヨイトさんから顔を逸らす。


「シルク……(かわいい……)」


『…………』


 そんな光景を目の当たりにした私は、ただひたすら無言でシルクさんを見つめる。


 シルクさんとヨイトさん、側から見てるとイチャイチャしているように見えるが……


「おや、モヨさんどうかなさいました?シルクさんに何か?」


 そんな私の様子に気がついたドランさんが、こっそり私に話しかけてきた。


『えっ?いや、ちょっと気になっただけで大した事では無いのですが……』


 私はドランさんにだけテレパシーを飛ばして話をする。


『あの、ヨイトさんの仲間のシルクさんって人、妙なかんじだなって思って……』


「妙?」


『はい。ヨイトさんはシルクさんに好意を寄せてるようですが、シルクさんはヨイトさんに特に好意を寄せてるかんじではなくて……』


 あのシルクさんが夫婦みたいって言ってた時も、シルクさんは特に何も感じてなかった。ヨイトさんに好意を寄せてるかのような台詞を選んで読み上げているだけだ。


「つまり、シルクさんはヨイトさんを心から愛してないと」


『はい……もしかしたらシルクさんは、ヨイトさんの力を利用する為に近付いてるんじゃないかと……』


「彼女の性格ならまずあり得ますね」


 ドランさんシルクさんとは初対面でしょ……


「モヨさん。ミゥさんに関してはどう感じますか?」


『えっと、ミゥさんは……』


 私はそっとミゥさんの方を向く。


「(あの人の懐中時計、結構価値あるやつっぽい。あの人警戒心無さそうだし、あれなら簡単に取れちゃいそう)」


『ミゥさんは……時折周りを見回しては盗めそうな物を吟味しているようですが、何故か盗む気配は一切無いです。あとヨイトさん本人に一切関心が無いです』


「成る程。盗めそうな物を吟味するのは、きっと職業病でしょうね」


 その職業に該当するのは盗賊くらいしかないのでは……?





「うーん、何か早朝と比べてたいぶ騒がし過ぎるな?そんなデカい大会じゃないから、そんなに客は来ないと思ってたんだがな」


 私がヨイトさんの仲間を観察する中、トドさんは辺りを見回しながら不思議そうにしている。


『見た所では、トラブル等で騒いでる感じはしませんね。ドキドキやワクワクで溢れていてとても楽しそうな雰囲気がしますよ?』


「それはおかしいな。この魔法大会はそれなりに大きいがワクワクする程のイベントじゃねぇぞ。そんなに楽しみにしてる奴なんかいるのか?」


 それは流石に言い過ぎでは?


「だがモヨの言う通り、この町を行き交う人間は皆楽しそうにしてるな。やけに若い子も多い」


 レイトさんは辺りを見回しながらそう呟く。


「俺はライムルーフ育ちだが、この町に若い観光客なんて中々来ないぞ?魔法大会に来るのは、落ち着いた冒険者か年配ばかりだ」


 このライムルーフで育ったトドさんが此処まで言うって事は、今この町に相当珍しい現象が発生しているのだろう。


『一体何が……』


 と、私が辺りを確認しようとした所で、遠くから誰よりも目立つ若者がやって来た。


 軽く化粧をした若者の男性で、オシャレなシャツに付いたフリルを揺らしながら楽しそうにスキップしている。最先端な格好からして、彼は都会から来たのだろうか。


 見た目からして目立つ人間だが、私は外見よりも心の中の光景に非常に驚いた。


「フッフフ〜ン♪」


 側から見たらただの楽しそうな若者。だが、頭の中では遊園地を基盤とした複雑な妄想がぐるぐる回っている。物凄い想像力だ。


『(この人、明らかに只者じゃない……!)』


「フフフ〜……ん?んんん?」


 そんな明らかに只者じゃない若者は、私達を一目見て通り過ぎ……何かに気が付いたのかその場で立ち止まり、物凄い速さで後退あとずさりしながらこちらに戻ってきた。


「おおっ!おおおおーっ!これはこれは!つい昨日に冒険者として復帰した大英雄、レイト様ではありませんかっ!」


「お、おう……」


 若者はハイテンションでレイトさんに飛びつく。レイトさんは突然現れた若者に少し引いてるようだ。


「(えっ?あそこにいるのってウインクじゃない?)」


「(えっ?マジ?)」


 だが周りの観光客らしき若者達は、謎のハイテンションの若者を見て驚きと喜びでざわめいている。もしかしてこの人、凄い人?


「おっと突然失礼しました!私の名前はウインク、今このライムルーフで開催されようとしている魔法大会の……関係者、と言った所でしょうか」


 この人、大会の関係者なんだ……


「おっ!レイト様のおそばにいらっしゃるのはスカイシティギルド期待の新星、ドラン様!ナナト様に……おっ!ライト様までいらっしゃるとは!」


「おや、貴方は魔法研究会会員のスミス様」


 ドランさんは若者に淡々と返事を返す。


「魔法研究会はその名の通り、魔法について様々な研究をしている団体です。スミス様は主に、一般の方々でも安全に魔法を使える世界を目指した活動をしています」


 ……それってさっきトドさんに言ったやつだよね?


『(何故同じボケを……)』


「おや!まさかドラン様に知られていたとは!なんたる光栄!非常にありがたき事でございますよ!」


『(まさかの正解!?)』


 スミスと呼ばれた若者は、大喜びでドランさんの手を取り握手をする。


「ドラン様の後方にいらっしゃるのは旅人でございますかね?初めまして!私の事はお気軽に『ウインク』とお呼びください!」


「よ、よろしく……」


 ハイテンションの若者のウインクさんは、ヨイトさん達にも駆け寄り上機嫌で挨拶をする。あのヨイトさんも彼に若干引いている。


「これで全員でしょうか?さて……ああっ!そちらにいらっしゃるのは最近話題の妖精、モヨ様!お初にお目にかかります!」


『わわっ!は、初めまして……!』


 何と若者のウインクさんは地面で佇む私にも駆け寄り、わざわざ地べたに座り込んで私の小さな手を握ってきた。


 彼の脳内には相変わらず、物凄い解像度かつ高密度の妄想が巡っている。しかもその妄想に私達の姿もちらほら混ざり更にカオスになっていく。チカチカするし目が回る。


「お隣にはトコ様も!お久しぶりでございます!」


『ん、おひさ』


「んー!可愛らしいご挨拶をありがとうございます!」


 全員と挨拶し終え、ウインクさんは元気よく立ち上がって再び私達をまじまじと見つめた。


「やあやあやあ!まさかこんなに有名人と出会えてしまうとは!実は私、トラブル発生中の魔法大会の主催者のヘルプとして参加していまして、競技内容の見直しや周りの諸々も変更し、後は物凄い大物ゲストを呼び込むだけとなりまして……おや?もしや貴方方、これから始まる魔法大会に飛び入り参加するご予定なのでは?」


「そうです。我々、ちょっとした野暮用でどうしても大会が必要になりまして……で、丁度いい所に大会があったものですから、折角なので飛び込んでみようかと」


 ドランさんその説明で本当に合ってる?


「大会に人が不足してるってんでな、俺がグリーンタウンまで足を運んでコイツらを呼んできたんだ」


「おおっ!君が運んでくれたんだ!キミ凄いね!スカウトの素質あるんじゃない!?」


「おいおい流石に褒めすぎだろ!ガハハ!」


 ウインクさんに褒められ、トドさんが豪快に笑う。


「いや〜助かりました!これだけの大物が来てくだされば、来客してくださった皆様もさぞかし大満足してくださるはず!では、この大会の主催者の関係者である私が、皆様をまとめて大会会場のある大広場までご案内しましょう!こちらでーす!」




 ウインクさんは上機嫌で私達を引き連れて歩く。彼は周りの視線を集めながら、町の中央にある大きな競技場へと案内してくれた。小綺麗でシンプルで、とても大きな建物だ。


『凄い建物ですね!』


 闘技場には物凄い数の人が集まっている。此処に集まっている人は全員、魔法大会が目当てのようだ。


「普段は何も無い大広場だけど、イベントがある時は地面にある競技場をせり上げて使用するんだって」


『へぇ〜!地面から闘技場ですか!ナナトさん物知りですね!』


「ライムルーフのパンフレットに書かれてたのを覚えてたんだよ」


「おっ!ナナト様は素晴らしい記憶力をお持ちのようで!こんな賢い方が大会に出場したら、大会もさぞかし大盛り上がりになること間違いなし!でしょうね!」


「ウインクさん、それは流石に褒めすぎでしょ」


「そんな事はございませんよ!さて、皆様は飛び入り参加という事で、あちらの受付からエントリーをお願いします!」


 大きな闘技場の中に入り、綺麗なエントランスの奥に見える受付カウンターを指差す。


「受付の人から同意書を渡されますので、その同意書に記載されている注意事項をよーく読んで、全部大丈夫だよーって人は下記の空欄に名前を書いてください!」


「大会の同意書か……」


 ヨイトさん達は真っ先に受付へと向かう。受付の人から紙を受け取り、じっくりと紙面を見つめて内容を確認している。


「さてと……案内も終わった事だし、俺は仕事場に戻るとするか。じゃあな」


『トドさん、此処まで運んでくださりありがとうございました!』


 まだ仕事が残っているトドさんは、笑顔で手を振りながらこの場から去った。


「ほら!本部ギルドの皆様もレイト様も、モヨ様トコ様も並んで並んで!」


『わわっ!?』


 ウインクさんは私達を受付カウンターに向かって軽く押してきた。レイトさんはともかく、なんと私まで出場すると思われているようだ。


『あ、その……私は……』


「この大会は3人1組なのですが……レイト様とモヨ様のペアで特別枠として出場する事にしましょう!そうするとなると……そうだ!対になる存在としてドラン様とトコ様のペアも作りましょう!是非そうしましょう!きっと楽しくなりますよ〜!」


 ウインクさんはやけにカッコいいレイトさんとドランさんが対立する妄想を巡らせながら、1人でキャイキャイと盛り上がっている。


「えっ?そんな事したら本部ギルドチームが1人欠けるんだけど?」


「そこはご心配なく!本部ギルドのお2人には、まだ誰とも組んでいない特別ゲストの方と組んでいただきますから!」


「特別ゲストと?まあ、強い人ならいいけど……」


「とても強い人でございます!」


 何か話が勝手に進んでいる。このままでは私とレイトさんも大会に巻き込まれてしまう。


『いや、私は……』


「あれ?モヨも出るの?」


 私は慌てて出場拒否しようとしたら、早々にエントリーを終えたヨイトさんがこちらにやって来た。


「もしかしてギルド側で出るつもり?」


『えっと……レイトさんと一緒に出て欲しいって言われてしまって……』


「ふーん……」


 ヨイトさんは、私とレイトさんをまじまじと見つめる。


「……分かった。それなら、モヨもレイトさんって人もギルド側として出ていいよ」


『えっ!?いいんですか!?』


「いいよ。レイトさんが勝ってもギルド側の勝利って事で。でも、僕は相手が束になっても負けるつもりは無いから(こんなヨボヨボじゃ、多分無理だけど……)」


 どうやらヨイトさんはレイトさんをみくびっているようだ。


「ヨイト〜控え室行くよ〜」


「ミゥ、今行くよ」


 ミゥさんに呼ばれたヨイトさんはレイトさんに背を向け、そのまま仲間達と共にこの場から立ち去った。



「ほぉ……じゃあ、俺も出るとするか(確かギルド側が勝てば現状維持だったな)」


 ヨイトさんの話を聞いたレイトさんは、何と魔法大会に出る決心をしたようだ。


「だが、出るのは俺だけだ。モヨはこういうの好きじゃないだろうしな(モヨを訳の分からんアイツらに取らせない為に、少しでもギルド側が有利になるよう俺も大会に参加するか。モヨの顔が2度と見れんくなるのも嫌だからな)」


『!』


 そうだった。もしこの大会でヨイトさんが勝ったら、私は永遠にギルドと離れ離れになってしまう。


『(ヨイトさんは高度な魔法を使いこなすって聞いたし、私が永遠にギルドと関われなくなる魔法を掛けられるかも……)』


 これからの事は自分の意思で決めたい。今はギルドと離れたくない。ヨイトさんに人生を捻じ曲げられるなんて絶対に嫌だ。




『……レイトさん!この大会、私も参加します!』


「ん?」


 私の宣言に、レイトさんは目を丸くして驚く。


「この大会にモヨも出るのか?本当にいいのか?」


『大丈夫です!もしこの大会でヨイトさんに負けたら、レイトさんと離れ離れになってしまいますし……』


 レイトさんは私のことを気に入っているらしく、私の為に大会に参加してくれるようなので、それに応えたい気持ちもある。


『あと、私を拾ってくれたギルドと変な別れ方はしたくないんです!だから少しでも勝てるよう私にお手伝いさせてください!』


 レイトさんは黙ったまま、私の必死な叫びを真剣な顔で受け止める。やがてレイトさんは、その固く結んだ口を開いた。



「…………分かった。じゃあ、俺と一緒に参加するか」



『はいっ!』



 ギルドと離れ離れにならない為にも、私はレイトさんと共に魔法大会に参加する事を決意したのだった。


『(この大会、絶対に優勝してみせる!)』




 数分後……




 同意書の内容をよく確認し、名前の欄にサインして大会にエントリーした私達。


「どうもありがとうございます!では、貴方方の控え室にご案内させて頂きます!」


『?』


 控え室への道は看板などで分かりやすく示されているのに、何故かウインクさんに直々に案内される私達。大きな闘技場内、扉が沢山ある長い廊下をただひたすら歩き続ける。


「おい、今さっき控え室を通り過ぎたぞ」


 レイトさんは『控え室』と記載された扉を指差しながら指摘をする。


「レイト様、ご心配なく!皆様はスペシャルゲストなので、特別な控え室へとご案内しているのです!」


『そ、そうですか……あの、ウインクさん。先程から、やたら大会の会場が騒がしい気がするのですが……一体、何があったんですか?』


「やっぱり気になりますよね?いやあ、実は早朝に、魔法大会の出場選手がトラブルで数人欠けてしまいまして……主催者は周りにいる人員を集め、急いで代わりの参加者を探したのですが……想像以上に集まりすぎてしまったのです」


「そんな事ある?」


 ウインクさんの話を疑うナナトさん。


「あります!現にこうして起こってしまったのです!どうやら人員探しをしに行った者の中に、えげつない人脈を持つ方がいらしたようで……その方が大会の参加者を沢山呼びつけた上に、『スカイシティのアイドル』の1人を謎のコネで呼び寄せてしまったのです!!」


『アイドル……?』


「あ、それって『スカイダイヤ』の事?僕知ってる!ダンスが得意なイケメンだらけのグループで、更に魔法や武術の腕もあって最近物凄く人気なんだよ!周りの友達もめちゃくちゃハマっててさ」


『そんなのがあるんですか!?』


 スカイシティにそんなグループが居たんだ……


「そうです!その大人気グループ『スカイダイヤ』の1人が急遽こちらの大会に来て下さる事になり、それを聞きつけたファン達がこぞって大会に押し寄せる事態になってしまったのです!」


『物凄い人気ですね……』


 と言うか、大会当日のこの短時間でそんなに人が来れるものなのかな……そう言えばこの世界にはラジオとか様々な情報伝達できる物があるみたいだし、それで情報がすぐに広まったりするのかな。


「それだけではありません!その謎人脈を持つ人が、周りの友達に『だいぶ話を盛った魔法大会』の宣伝までしてしまったらしくて……今年の魔法大会は今までと違って物凄く面白くなるらしいとか、つい昨日に冒険者に復帰したレイト様がスペシャルゲストとして出場するとか……」


『ええっ!?レイトさんの冒険者復帰の話、もう広がってるんですか!?』


「ラジオや新聞で出てたよ」


 どうやらスカイシティは新しい情報が集まりやすいようだ。それだけでなくナナトさん自身と、新しい情報にそれなりに詳しいようだ。


「いやぁ、そんな感じで魔法大会に対して過度に期待を持った観客が集まってしまって……だから、偶然この場にいた私が主催者に代わって、魔法大会の内容を大幅に変更したりパワーアップしたり……とにかく私は、この大会を楽しいイベントにしようと頑張っていた所なんです!」


 どうやらウインクさんはただ観客を楽しませたい一心で、このトラブルだらけの大会を何とかしようと奮闘していたらしい。


「先程外を歩いていたのは、グリーンタウンに向かいレイト様を説得しに行く為だったりするんです。ですが、まさかレイト様が直々にこの大会に来てくださるとは……!いやはや、本当に助かりました!」


『(ウインクさん、魔法大会を何とか成功させる為に色々と頑張ってたんだ……)』


 ウインクさんの嘘偽り無い本音トークから察するに、彼は物凄い頑張り屋で、人の喜ぶ姿を見るのがとても大好きなようだ。


「ナナト様とライト様はこちらへ、ドラン様とトコ様はその隣の部屋へ、そしてレイト様とモヨ様はこちらの扉から部屋にお入りください!」


「ありがとな」


 ヨイトさん達が入った控え室は沢山の人の気配があったが、私達が案内された部屋はどれも人の気配がしなかった。


 ナナトさんとライトさんの部屋には1人居たようだが、この1人は先程ウインクさんが言っていた特別ゲストなのだろうか。



「さあさあ、お入りください!」



 ウインクさんはナナトさん達と、ドランさん達の部屋の扉を順に開けて案内して、最後に私達の部屋の扉も開けてくれた。私はレイトさんの後を追って部屋の中へと入った。


『失礼しま……』



 扉の先に現れたのは、物凄く豪華な控え室だった。



 フカフカでオシャレなカーペット、高そうなテーブルの上には沢山の菓子が置かれている。


 よく見るとケーキやジュースの種類が沢山書かれたメニュー表まである。此処で注文したら、わざわざ作って運んできてくれるのだろうか。


「レイト様、どうぞお座りください!モヨ様、こちらの席にどうぞ!」


 レイトさんを座り心地の良さそうな椅子を、私には物凄く高そうなクッション付きのミニソファーを用意してくれた。


「何かお困り事や、必要な物がございましたら遠慮なくこの鏡をご使用くださいませ!すぐさまスタッフが対応します!」


『(凄い……超VIP待遇だ……!)』


 元勇者のレイトさんへの物凄い対応に、私は心の底から震え上がった。

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