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17話 新しくなった環境

 ブルーベリー鉱山、安全地帯の中にて。


『私の体内がダンジョンに……?』


「うん」


 先程ミミンさんに言われた言葉を繰り返す私に対し、ミミンさんは相変わらずマイペースな様子で答える。


「ダンジョンフィッシュはね、ある程度大きくなると、体内の環境がジャングルになったり火山が出来たりするんだよ。海ができたらそこからマーマンが生まれて、ジャングルにはリザードマンが生まれたりするよ」


『場所によって生まれてくる魔物も変化するんですね……』


「うん。だから、モヨちゃんの体内にもそんな感じで、新しい場所ができたり魔物が生まれたりしたんだと思うよ」


『なるほど……』


 ミミンさんの言う通り、ジャングル地帯にはトカゲの頭を持つ生物が、そして鉱山にはコウモリらしき魔物が発生していた。


「ミミン、モヨちゃんのダンジョンに入ってみたいな〜」


『えっ?いいですけど……もう夜も遅いですよ?』


「少し見るだけだから。ね、おねがい」


「あ、私も見てみたい!」


「俺も俺も!」


「あ、あの……迷惑でなければ私も……」


「誰か俺を助けてくれ!!」


 ミミンさんやフーラさん達が顔を輝かせながら私に駆け寄る。ヤツメさんは助けを求めて私にすがり付く。


「私も行ってみたいけど、エミルを捕獲してるからねぇ……」


「あ〜、それなら私が持って行きますよ〜」


 エミルさんを片手に残念がるウルさんに対し、ホーさんがエミルさんの回収を申し出た。


「君に任せていいのかな?」


「いいよ〜。私、人混み苦手で早く外に出たかったから〜」


「そうか……じゃあ、頼んだよ」


「は〜い」


 ホーさんは、ウルさんからエミルさんを受け取ると、手に持っていた石を地面に投げつけた。ホーさんが一瞬光り輝いたかと思うと、一瞬でその場から姿を消してしまった。


「さて……モヨさん、少しだけでいいから新しくなった体内に入ってみてもいいかな?」


「頼むから俺をアルラウネから解放してくれ……!」


『わっ、わかりました!』


 まず初めに、ヤツメさんについて来たアルラウネ達は私が預かり、ヤツメさんはすぐに宿屋に戻した。


「じゃあ、失礼するよ」


「宜しく〜」


 そして、外を回りたいと申し出たウルさんとミミンさん、そしてフーラさん達を私の体内に入れた。真っ先に飛び込んできた景色を前に、皆んなの表情がじわじわと変わっていく。


「これは……」


『物凄い事になってます……!』


 私の体内に広がっていたのは、大自然で溢れる新しい世界だった。


 どうやらこの世界は外と連動しているようだ。周囲はまだ暗くて、空には満天の星が輝いている。大きな星によって、この世界は優しい光で照らし出されている。とても幻想的な風景だ。


「なあ……俺の記憶が正しいなら、此処って森くらいしかなかったよな?」


「あとアルラウネ畑……ですよね(明らかに世界が広がってる……!)」


『はい!森と畑、あとは山など建設中でしたが……全部完成して、更にグレードアップして大きくなってるみたいです!』


「どうやら本当に、先程倒したダンジョンフィッシュの力をマナを通して取り込んでしまったようだねぇ……」


 ウルさんはそう呟きながら、空に浮かぶ星々を見上げた。


「まるで外じゃない!?向こうにはジャングル、奥には山……見て!あっちには滝まであるわ!」


「綺麗です……!(まるで異世界……!)」


「すげぇ……!」


 フーラさんは大興奮で周囲を見回している。アマリリさんとカラさんも興奮気味で周りを観察している。


「……ん?向こうの木に何か黄色いやつが実って……あれってまさか、バナナか?」


 キョロキョロと周りを見ていたカラさんは、だいぶ離れた所で見事に実っているバナナの房を発見した。


「ほら、あの黄色いやつ。絶対そうだよな?」


「バナナ……?(もしかして、あのシャンデリアみたいな植物が……?)」


「南国の土地で取れる珍しいフルーツね。それにしても、あんな遠くに生えてる物によく気付いたわね(此処には色んな環境があるみたいね……)」


「(あのバナナは食べられそうだねぇ……)」


 皆んなはバナナに興味津々だ。


「バナナおいしそ〜」


「ですよね!あれは私が今まで見た中で特に見事なバナナだと思います!」


 カラさんは相変わらずミミンさんにデレデレだ。


「ミミン、あれ食べてみたい」


『食べますか?じゃあ私がひとっ飛びして取ってきます!』


「ホント!じゃあ私のも取ってきて!」


「私も食べてみたいです!(どんな味なんだろう……!)」


『とりあえず全員分のバナナ取ってきます!』


 私は宙に浮かび上がり、バナナの木に目掛けて勢いよく飛んだ。


 だが突然、周囲が早送りのようにギュッと迫ったかと思うと、あんなに遠くにあったバナナの木がいつの間にか目の前に。


『あだっ!』


 私はその勢いのままバナナの房に激突してしまった。


 結果、私はバナナの房ごと落下してしまった。


『びっくりした……』


 どうやらダンジョンフィッシュを倒したお陰で、更に色々と強化したらしい。


 とりあえずバナナは回収できた。私はバナナの房を下から持ち上げながら空を飛び、再び皆んなの元へと帰ってきた。


「モヨ、あんためちゃくちゃ早くなったのね!凄かったわよ!」


「まるで瞬間移動だったねぇ」


『自分でもビックリしました!』


 私は会話しながら皆んなにバナナを手渡した。バナナの食べ方が分からない人も居たので、改めてバナナの食べ方を丁寧に説明した。


「皮をむいて、中の実を食べるんですね……」


 アマリリさんは私が教えた通りにバナナの皮をむき、中身を一口サイズに千切って口に放り込んだ。


「とっても甘いです……!(すごく美味しい……)」


「これ美味いな……」


「これ物凄く甘いわ!いいバナナね!」


 皆んなはバナナの味を気に入ったようだ。


『どうやら別の場所にカカオもあるみたいです。カカオからチョコレートを作って、このバナナと組み合わせるのもいいかもしれませんね!』


 チョコバナナ、この世界でもきっと流行るに違いない。


「バナナにチョコレート?その組み合わせ、どこかで見た事あるな……」


「あるわよ。チョコレート専門店で色んなフルーツと掛け合わせたスイーツがあるのよ。他にもフルーツアイスやフルーツジュース、ホットチョコレートっていう飲み物もあるわね」


『そんなにあるんですか!?』


 私が頭に浮かんでいた物は既にこの世界に存在しているようだ。


『(異世界にも食に精進した天才がいるんだなぁ……)』


 私はバナナの房を頭に乗せたまま、この世界に存在するまだ見ぬ天才スイーツ職人の事を考えたのだった。




「他にも色んな果物があるみたいだな。これだけあれば、モヨを雇った冒険者は絶対に飢え死にしないだろうな」


『果物だけでなく、野菜や肉の木もあります!』


「肉の木もあるのかよ!それなら大きなダンジョンも……ん?」


 先にバナナを食べ終わったカラさんと会話をしていると、森に目を向けたカラさんが何かを発見した。


「あれって……ルンか?」


『あ、そうですね。森で作業している魔物達を観察しているようです』


 森の茂みに隠れ、耳をピンと立てながら一点を見つめるルンさんの姿を発見した。


「ん……?あ、みんな!こっちこっち!」


 ルンさんは一瞬だけ耳をこちらに向け、そのまま勢いよく私達の方を振り向いた。私達は、自分の元にに来るようジェスチャーするルンさんに静かに近付いた。


「あれ見ろ!ノームだ!」


 ルンさんは耳をピンと張りながら、木に群がっている人影を指差した。


「おぉ……」


「かわいいノームだね」


 気に群がっていたのは、見事な髭を生やした愛嬌のあるノームだった。


「えっほ!えっほ!」


「倒れるぞー!」


 オーバーオールを着たノーム達は、見事な出来の石斧で立派な木を切り倒しては、車輪の付いた台車のような物に倒した木を次々と載せていく。見事な手際だ。


「すげー……ノームが作業してるとこ、初めてみたかも……」


「見事なモンだろ?」


 カラさんがノーム達をじっと眺めていると、近くで作業していたと思われるノームが声を掛けてきた。


「うわあっ!?」


「わわっ!?」


 カラさんは飛び上がって驚き、ノームもつられて驚いて地面に転がってしまった。


「えっ!?ノーム、喋っ……!?」


「ごめんなさい、ビビリなカラのせいで転ばせちゃって……」


 腰を抜かすカラさんに代わってフーラさんが前に現れ、謝罪をしながら転がったノームを助け起こした。


「お、悪りぃな」


「おいフーラ!そんなのに無闇に手を差し出して助けるなよ!地面に埋められたりしたらどうするんだ!?」


「相手に敵意があったら、今頃は仲間を呼ばれるか不意打ちされてたでしょ!全く……ねぇ、あなた達は木材を集めて何をするの?」


「これで家作るだ。他に椅子とかテーブルとか色々使うど」


「へぇ、いいわね!」


「すげー!フーラがノームと会話してる!」


「おいおい……フーラ、よく初対面のノーム相手にそんなに喋れるな……」


 ノームと会話をするフーラさんを見て目を輝かせるルンさんと、ドン引きするカラさん。そんな中、ノームが私の頭に乗っているバナナに目をつけた。


「ん?モヨさんでねーか。その頭に乗ってんの、食いもんか?」


『バナナです!もし宜しければどうぞ!』


「いいんか?ありがとな」


 目の前にいるノームは笑顔になり、私の頭に乗っていたバナナの房を持ち上げて袋にしまった。


「じゃ、お返しにコレやる」


 ノームは腰につけていた小袋から大きな石を取り出し、私の頭に乗せてくれた。


「ん?何だコレ?」


 カラさんは私の頭に乗っていた石を取り上げ、顔に近付けてまじまじと見つめている。その様子を見ていたノームが、バナナが入った袋を背負いながらそっと口を開いた。


「それはルビーだ」


「えっ?」


「鉱山で見つけたやつだ。じゃあな」


 ノームは何食わぬ顔でそそくさと仲間の元へと駆けて行った。カラさんは、口をポカンと開けながらノームの背中を見つめていた。


「ルビーって……あの、宝石の……?」


「うん。カラくんが持ってるルビー、物凄く綺麗だね」


「純度の高いルビーだねぇ。これは結構いい物だよ」


 ミミンさんとウルさんは興味深そうにルビーを見つめる。


「まじ……?」


「へぇ。モヨの体内に宝石も発生するようになったのね」

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