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3話 ギルドに保護されました



 暖かい明かりに照らされ、私はそっと目を覚ました。


(あれ……?此処何処……?)


 そこは先程まで居た森の中ではなく、見た事無い物が沢山並べられた不思議な室内だった。


 光る物体が入ったフラスコ、クリスタルのようなものが実った植物の苗、その辺を忙しなく走り回る足の生えた卵……一言では言い表せない程にファンタジーで素敵な部屋だ。


 因みに私の身体はランタンから出されており、小さくて柔らかいクッションの上に丁寧に置かれていた。


(異世界転生は夢……じゃ無かった……)


 私の身体は相変わらず丸い球体のままだった。だが、森の中に居た時よりは状況は少し良くなった……とは思う。


 あのまま森の中に居たら私は今頃、ゴブリンにおもちゃにされ、下手したら消滅していた所だっただろう。


「気がついたか?」


 部屋の隅からしわがれた声。


 声のした方を向くとそこには、ファンタジーな衣装を着込んだお爺ちゃんの姿があった。


 頭部には丸くて分厚い帽子、身体は随分と重そうなローブに覆われており、ファンタジーな部屋に負けず劣らずのファンタジーな風貌のお爺ちゃんだった。


『え?あ、貴方は……?』


「俺はお爺ちゃんだ」


『えっ、あ、ハイ……』


「……」


『……』


 か、会話が続かない……


「冗談だ。俺の名前はレイト、ギルドってトコに住み込みで働いてる人間だ」


 ギルド……小説でしか聞いた事が無い場所だ。きっと旅人はギルドで依頼を受けたり、報酬を受け取ったりするのだろう。


『ギルドかぁ……あっ、ハイ!レイトさん初めまして!』


「おう……いや、お爺ちゃんである事は別に冗談では無いな。いや、さっきのは誰であるかの質問に対し、名前では無く見た目で答える冗談……いや……何て言うんだろうな」


『……?』


(この人、何を言ってるんだろう……)


「……?(さっきから俺は何を言っているんだ……?)」


 何でお爺ちゃんの方が私より困惑してるの?


「……まあいい。お前、名前はあるか?」


『えっと、私は……モモヨって言います……』


 本当は灯桃良ともしびももよって言うんだけど、別に今の所は苗字だけでいいかな……


「モヨ……不思議な名前だな」


(全然違う……)


『えっと……あの、此処は何処ですか?』


「此処はギルドにある俺の部屋だ。ミナが気絶したお前をギルドに運び込み、俺が治療を施して今に至る」


『そうだったんですか……あの、治療して下さりありがとうございます!そうだ!あの……』


(……いや、『あの子』の事は心の声でしか聞いてないんだった。下手にあの子の事を聞いたら危ないかな……)


 心の声を聞けると知られたら色々と面倒事に巻き込まれるかもしれない。せめて表では、気持ちが分かる程度で済ませておこう。


「ん?どうした?」


『いや、何でもないです!」


「そうか……まあ、これくらい礼儀正しいならアイツの頼みを聞いてやっても良いな……」


 頼み……?


「……単刀直入に言う。モヨ、このギルドで住み込みで働いてみる気はないか?」


『……えっ?ギルド……ですか?』


「そうだ。このギルドには毎日のように有望な冒険者が集うんだが……お前には、その冒険者の補助を頼みたい」


『冒険者の補助……』


「モヨは補助が上手いと聞いたからな。補助を受けた冒険者は生存率が上がり、モヨは冒険者の補助をした行為でお給料が貰える」


「お給料……」


 安全な場所に住める上に、給料まで貰えるなんて……願ったり叶ったりだ。


「それに、仕事の合間に世を生きる為の基本的な知識を教えてやれるし、休日は俺に声を掛ければ好きな場所に遊びに連れてってやれるぞ。俺と一緒なら人だらけの街にだって行けるしな」


 この世界の話を聞ける上に、街を自由に観光出来るのは非常に魅力的だ。しかもこんな私に普通に給料と休日が出してくれるとは……物凄く良い職場だ。


『え……本当に良いんですか!?こんな私を、このギルドに住まわせてくれるんですか……!?』


「当たり前だ。お前はマルクを手助けしてくれた上に、ミナと一緒になって王の娘のワガママを聞いてくれたからな」


『……ワガママ?』


「そうだ。ミナと一緒に、王の娘の誕生日プレゼントを取りに行っただろ?」


『プレゼント!?もしかして、ミナさんが頑張って取ったあのボンボンの事ですか!?』


「まさか誕生日にぶどう草を欲しがるとは、誰も予想だにしてなかったとの事でな……報酬を沢山支払うから、誕生日パーティーまでにたまゆら草を取って来てくれ!と、王様から依頼が来たんだ」


『そうだったんですか……』


 ミナさんが急いでいた理由が「パーティーに間に合わせる為」だったとは……だが、病気で苦しんでいる人は居なかったようだ。良かった。


「他にもお前を雇う理由はある。お前は人間の間では『ヒカリダマ』と呼ばれていてな。ヒカリダマが住む土地にはいい物があるとか、ヒカリダマを見たら『運気が上がる』とか……昔から俺達冒険者にとっては良い存在だって語り継がれていたんだ」


『そうなんですか?』


「ヒカリダマは中々に珍しいから、ヒカリダマ目当てで来る冒険者もいるかもしれん。つまり、モヨがこのギルドに居るだけで既に有難いって事だ。マスコットとして此処にいるだけでもいいんだ……どうだ、此処に住んでみないか?」


『……はい!私で宜しければ、是非此処で働かせてください!』


「よし、では明日からしっかりと働いて貰うからな。モヨ、宜しく頼む」


『はい!こちらこそ宜しくお願いします!!』


 まさかこの数日で優しそうな人間に保護され、安全そうなギルドに住み込みで働けるようになるなんて……安全な場所で暮らしたいと思っていた私にとって、まさに願ったり叶ったりだ。


(明日からお仕事……よし、冒険者の役に立てるように一生懸命に頑張ろう!)

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