5話 新装宿屋さん
アルラウネが大量発生した事により花だらけになった深緑森。今も尚、アルラウネの数がじわじわと増えていく絶望的な状況の中に、私は逆転のチャンスを見出した。
「僕達がアルラウネ達から逃げられる良い方法が……本当にあるのか?」
『はい!上手くいけば、全員無事に深緑森から脱出できると思います!』
「物凄いチャンスじゃないですか!?本当にそんな良い方法があるんスか?」
『あります!それは…………私自身を乗り物として利用する事です!!』
「「「………………」」」
私の発言を聞いた3人は口を開けたまま固まり、周囲がしんと静まり返ってしまった。
「……聞き間違いかな?モヨ、もう一度聞くけど……」
『私を乗り物として利用する事です!!』
「……(聞き間違いじゃなかった……)」
イルさんは顔に皺を寄せ、無言で頭を抱えてしまった。一方、サラサさんは……
「ええっ!?モヨさんに乗れるんスか!?」
目を輝かせながら私を見つめていた。
「……サラサ、本気?こんな小さなヒカリダマに乗れる所なんて無いじゃないか……」
『乗れます!実は……私が進化してから3日後辺りに、私の新たな機能を確かめる実験をしたんです!速さ、テレパシーなどの既存の機能を確かめ……そして、新機能の1つである体内の収納もじっくり確かめたんです』
「確かに、新機能がどれだけ使えるか気になりますね!」
『とにかく調べました!体内にどれだけ入るかとか、入れたらいけない物はあるかとか……そして、人間は入るのかも確かめたんです』
「……まさか、入ったのか?」
『はい!なんと……レイトさん含めたギルドスタッフの全員が入っても平気だったんです!!』
「(検証の為にわざわざスタッフまで……ギルドの関係者は一体何をやってるんだ……)」
イルさんはひたすら心の中で嘆いている。
「凄いッス!そんな沢山入ってもモヨさんは平気だったんスか!?」
『余裕でした!人を体内に収納したままハイスピードで飛べるし、高い所もスイスイ!そしてテレパシーを使えば、私の体内から周囲の景色だって見れちゃいます!』
「外の景色見れるの凄いッスね!で、体内の人間は外からは見えたりとかは……?」
『人間や一部の魔物は、私の体内にいる人間を一切認識できなかったので大丈夫だとは思いますが……』
「アルラウネに通用するかどうかはまだ分からない、って事ッスね?では、試しに自分がモヨさんの体内に入って確認してみます!」
「あ、俺も参加していい?モヨの体内が気になって……」
「では、僕は外で待機してモヨを手繰り寄せられるよう準備しておこう」
『皆さん……!ありがとうございます!是非お願いします!』
なんと全員協力してくれるようだ、物凄く有難い。私は全員に感謝を伝えた。
『では早速……いきます!』
私は身体をぷくーっと膨らませ、形を整えてドアそっくりの姿に変化した。
そして、身体に負けないくらいに大きく口を開けて見せた。
「ああっ!?モヨさんの口の中から扉が!?」
「これは一体……?(別の場所に繋がってるのか……?」
「えーっと……とりあえず開けてみるね(凄く綺麗な扉……)」
『はい!優しく開けてみてください!』
「失礼しまーす……」
ジェムさんがドアノブを回して扉を少し開け、中の様子をそっと伺う。
「………………」
「ジェムさん!何が見えてたんスか!?」
「や…………宿屋」
「…………宿屋?」
「そこそこ良い値段がしそうな宿屋のエントランスが見える……」
「ジェムさん、一体何を言って……うわーーーっ!?!?」
サラサさんがジェムさんの側に移動し、扉の隙間から中を覗いた途端……サラサさんは物凄い大声を上げた。
「宿屋の入り口が目の前にあります!!隣の部屋にはレストラン的な場所まで……!!」
「そんな馬鹿な…………本当だ」
サラサさんが勢いよく開けた扉から内装を見たイルさんが、呆然としながらそう呟いた。
『凄いでしょ!実は私……身体の中に宿屋を作ってもらったんです!!』
「(…………聞き間違いか?)」
「体内に……宿屋?」
「えっ?どうやって……?(まさか宿屋丸ごと食べたの?)」
『前に私の性能テストをした際、レイトさんが「モヨの体内がこれだけ広いなら、中に家建てられそうだな」って言って、私含めて周りの人がやる気になって……試しに大工さん呼んで、私の体内に良い感じの宿屋を建てて貰ったんです!」
「(幻聴かな?)」
「(一通り聞いても意味が理解出来なかった)」
『本日ついに宿屋が完成し、試しに皆さんに使用してもらおうと思っていましたが……まさかこんな形で役に立つ日が来るとは……』
「どちらにせよ、今日見せるつもりだったんだ……体内の宿屋を」
「身体の中に宿屋を建築……何だかファンタジー小説みたいで可愛らしいッスね!」
『可愛いですよね!』
「(気色悪くね?)」
「そういえば、前に大工がギルドに出入りしてるのを見たような……(まさかアレが……?)」
「何はともあれ、これは物凄く良い物である事は間違いないッス!これならアルラウネだらけの森を無傷で脱出出来るかも……!」
『その通りです!皆さん、是非入ってみて……あっ、まずは人を入れて飛んでもバレないかどうか大丈夫かテストするんでしたね』
「…………ああ、うん。えっと……とりあえず、サラサとジェムには中に入って貰って、試しに外に出てもらうとしよう……モヨに何かあったら僕が外から魔法で何とかするから」
『分かりました!!』
「早速テスト開始ッス!」
サラサさんとジェムさんは私の体内の宿屋に入り込んだ。
「うぉー!!凄く快適ッス!!」
「周りは最新機器ばかりだ……うわっ、最近流行りの水洗トイレだ」
「ホントだ!!大革命ッス!!これだけでも一生生きてけるかもしれないッス……!」
「(トイレ1つで盛り上がり過ぎじゃない?)」
『それでは出発します!!』
体内で2人が盛り上がり、外でイルさんが見守る中、私はそっと安全地帯から抜け出した。
「(アー、ダルイ……)」
「(エサ、エサ……)」
『…………大丈夫です!アルラウネの皆さんは私にも、体内の人間にも気付いてません!!』
「実験は成功のようだね」
全員で無事に森から抜け出せる事が分かった。とりあえずは一安心。
次回から週一更新となります。




