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2話 深緑森の異常現象

 私を擁護してくれたリースさんと別れ、若草草原を通り抜ける事数十分後……ようやく深緑森の入り口へと到着した。


「此処は鬱蒼とした森……いつ物陰から魔物が飛び出してくるか分からない、危ない森ッス」


『(サラサさん……ちゃんと声の大きさを下げられるようになったね……)』


 思わぬ所でサラサさんの成長を垣間見た私は、1人でしみじみと感動した。


「相手は森を知り尽くしている、気を抜いたらあっという間にやられるよ」


『はい!私の力で速やかに魔物の位置を知らせます!』


 進化した事で魔物の位置をリアルタイムで冒険者達に伝えられるようになった。これで探索もグッと楽になるだろう。


 それに、アレのお陰で多少は知識面でも役に立てるかも……


『……いや、今回の探索はやめた方がいいかもしれませんね。森の様子が妙です……』


「えっ?妙……ですか?」


「はい。森の中をうろつく魔物が普段と違うんですよ。何か全体的に強くなっているような……』


「……モヨの言う通りだ。残念だけど、今回は森には入れないみたいだね」


 イルさんは入り口付近に生えている木に近付き、残念そうに首を振った。


『あ、この花は……スカーレットアルラウネの花……ですね!』


 土地によっては時折ボスが発生する。土地のマナを吸い、魔物を沢山倒してマナを奪い進化した強力な魔物がやがてボスとなり、周りの魔物に様々な影響を及ぼす。冒険者の脅威となる、非常に厄介な存在だ。


 この森ではたまにスカーレットアルラウネというボスが現れる。このボスが出現している時は、森のあちこちに真っ赤な花が現れるそうだ。物凄く分かりやすい。


「森にボス出ちゃったんスか……今日は普通の探索がしたかったのに……」


「僕なら平気だけど、サラサはこの森に初めて入るからね……この森に慣れてないなら、下手に入らない方がいい」


 ランク2の冒険者なら、スカーレットアルラウネを倒せる力はあるらしい。だがサラサさんはランク2に上がりたて、しかも森は初見だ。イルさんも、初心者のサラサさんと共に森に入るのは少し危険かもしれないと判断したようだ。


「うーん、残念……自分はちょっと挑戦したかったんスけどね……」


「やめといた方がいい。見て、周りに生えている花の量が異質だ。恐らく、スカーレットアルラウネの数が異様に多いんだろう。この森に何か異常現象が起こってるのかもしれないな……(こんなにアルラウネの花が咲き乱れている光景、初めて見た……)」


『確かに、森に花が沢山咲いてますね……奥には、真っ赤に輝く花が見えます。あれは…………ルビーアルラウネの花でしょうか?』


 本来、マナの関係上この森に絶対現れないルビーアルラウネまで発生しているようだ。


『(前までは遠くの物なんて判別できなかったのに……)』


 空間をある程度把握出来るようになったお陰で、遠くにある物も理解できる。これは便利だ。


「ルビーアルラウネの花……本当か?(こんな所にルビーの花が生えているわけがないだろう……)」


『本当です!今現在、私が見てる物を共有しますね!』


 私はサラサさんとイルさんに、私が見たルビーの花をテレパシーで共有した。


「……本当だ。間違いない、これは異常現象だ。すぐにギルドに報告しに戻ろう(こんなにスカーレットの花が咲いているのもおかしいのに、ルビーの花まで咲いているとは……こんな現象、本でしか見た事がない……)」


『ルビーの花の中に、妙に豪華な物もありますね……えーと、アルラウネは強くなるほど模様も増える……生えているルビーの花にやたら豪華な模様があったら、それはルビーティアラ・アルラウネの花の可能性が高い……?』


「ルビーティアラか……考えたくもないが、その可能性もあるよ」


 ランクのある土地では稀に、異常現象が発生してしまう。このランク2の土地にも、ごく稀にアルラウネが大量発生したり、やたら高ランクのアルラウネが生まれる事があるそうだ。どれも滅多にない現象だから、生きてる間に出会えるのはとても珍しい。


「モヨ、君はアルラウネに対してそこそこの知識はあるようだね。文章を読んでるかのような台詞は気になったけど……ひょっとして本を丸暗記してるのかな?(この毛玉、勉強する頭はそれなりにあるようだね)」


『あ、さっき本棚で見つけた植物魔物図鑑の中身をそのまま読んだだけです!』


「……何だって?(この毛玉、何を言ってるんだ?)」


『後で説明します!それにしても、この地域にルビーアルラウネが出るなんて……ルビーの生息地は、この土地からだいぶ離れた大陸にあるみたいですけど……』


 生息地から此処まで、あまりにも遠すぎる。


「多分、魔物が種を運ぶタイプの種子散布で此処に来たんだと思います。いわゆる魔物散布って奴で、空を飛ぶ魔物などが高ランクのアルラウネを捕食して、その時に魔物に付着した種が森に落っこちて……僅かなマナと栄養をじわじわ吸って長い時を掛けて成長し、土地のマナに関わらず高ランクのアルラウネが誕生してしまうという……」


「それもあるだろうね。サラサもしっかり勉強しているようだね。まだ僕には遠く及ばないけど……(だからこそ他のやつと違って、サラサは一緒に居てもイライラしないんだ。この僕と一緒に探索出来るのはサラサくらいだ……)」


『サラサさん凄いです!』


「えへへ……しっかり勉強した成果が出たみたいですね!」


 サラサさんはイルさんの言葉も素直に受け止め、照れているようだ。


『今回は絶対に森に入らない方がいいですね。よーく見てみると、森の中の魔物達も妙に大きい気がしますし……それに先程から森の奥深くから、じっとこちらを見られているような……』


「アルラウネが花を通して探知してるだけだろう。さて、話はこれくらいにして……皆んな、ギルドに戻るよ」


「はいっ!……あ、それにしてもリースさん達はどうしたんスかね……引き返す姿は全然見てませんが……」


「ランク3の彼らの事だ。その辺にいるスカーレットアルラウネをある程度討伐したら、頃合いを見て帰るだろう。心配は無用だ。ほら、帰るよ」


『分かりました!……あれ?』


「ん?モヨさん、どうしたんスか?」


『こちらに向かって、何かが歩いて来てます……近いのに何故か察知しづらくて、よく見えないので分からないんですが……どうやら人のようです……』


「何だそれは……よく見えないって、力不足で見えてないだけじゃないのか?(この毛玉、本当にやる気はあるのか……?)」 


『努力します!』


 なんて会話をしていると、森の奥から冒険者らしき人影が現れた。冒険者はこちらに気がつくと、私達に向かって真っ直ぐ走ってきた。



「君!君達!そこの若い冒険者2人!!」


『うわーーーっ!?!?』


 冒険者の全貌を見た私は、思わず大声を上げてしまった。


「うおっ!?モヨさん急にどうしたんスか!?」


「うるさいな……君、急に叫ばないでもらえるかな?」


『えっ!?でも、目の前の……見えないんですか!?』


 だって、目の前のアレって……!


「いや、普通に見えてるよ……(何言ってるんだこの毛玉……)」


「そうだ、モヨさんはこの人とは初めましてですね?この人はピーターさん、ランク5の冒険者ッス」


『いや、そうじゃなくて……!』


「あのー、そろそろいいかな?」


 私達が会話していると、目の前にいる奴が更に近付いてきた。私は思わず後退りする。


「あ、申し訳ございません。大丈夫です」


「ピーターさん、何だか物凄く慌ててたみたいですけど……一体どうしたんですか?」


『ええっ!?』


 2人はごく自然に、目の前の冒険者と会話をしていた。


「実はね……森の中にルビーアルラウネが発生してしまってね……」


「高ランクの魔物ですね……」


「そう、で……このルビーアルラウネが咲かせる花は、ランクの高い魔物も引き寄せてしまう効果があるんだ。だから君達にも、アルラウネの花を摘むのを手伝って欲しいんだ」


「えっ?この森に私達も入るんスか?でも……」


「大丈夫、俺はランク5だから、俺と一緒ならランク2の君達もルビーアルラウネが咲いている森に入れる。頼む、俺と一緒に森の奥に来てくれないか?時は一刻を争うんだ……」


『(な、な何が起こってるの……!?)』



 目の前の冒険者は、先程から一言も言葉を発していない。サラサさん達の脳内を通してのみ、相手の声が聞こえてくる。




 それに…………私の目に映る見知らぬ冒険者は、どう見てもカラカラに干からびたミイラだった。




『(この人、多分もう生きてない……!でも、2人にはこのミイラが普通の冒険者に見えてるんだ……)』


 相手の話から察するに、どうやらピーターさんモドキはサラサさんとイルさんを森の中に連れて行くつもりだ。これは大変な事になった。


『(何とかして、この人からサラサさん達を引き離さないと!!)』

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