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1話 新しくなった私とサラサさんと

 シルバーキングオーガの事件から約数十日後……


 シルバーキングオーガの件に関わった事が原因なのか、冒険者からの指名が格段に増えた。


 なんと人気過ぎて予約待ちになるレベルで、その予約の紙の中には中々にレベルの高い冒険者やお偉い方々の名前まで刻まれているらしい。恐れ多い。


「モヨの収納技術……応用すれば物凄く便利になりそうだな。折角だからもっとパワーアップしてみるか?」


 そんなレイトさんの一言で、私の体内にある物を作成する事にした。私が休みの日に大工さんを私の体内に招き入れ、魔法と技術でどんどん作成していく。因みに、諸々の建築費用は全てレイトさんが払ってくれた。


 …………後、魔物研究者の方から追加で資金を頂けたので、更に豪華に出来そうだ。


 これが完成したら、私や仲間であるプラチナワームのナワとシルバースライムのバスラ、そして冒険者達から有り難がられる事間違いなしだろう。まあ、昨日その一部がついに完成したんだけどね。

 


『(今日の探索で、私の体内に作った「例のアレ」を試してもいいかもしれない……)』


「モヨさーん!本日の予約をしていた冒険者が到着いたしましたー!今日は深緑森しんりょくもりで自由探索するそうです!」


「はーい!」


 進化してランタンから卒業した私は、丸くなって宙に浮び上がってギルドスタッフの後を追った。


「モヨさん!お久しぶりッス!」


『あっ!サラサさん!』


 今回の相手は元気な方のサラサさんだ。そんなサラサさんの背後には見知らぬ冒険者の魔法使いが1人、どうやら今回は2人で探索するらしい。


「見ない間に随分と大きくなりましたね!カッコいいッス!」


『ありがとうございます!見た目だけじゃなくて中身も強くなって、更に新機能も追加されたんですよ!』


「頼もしいッス!!」


 サラサさんは相変わらずの裏表の無い素敵な笑顔を見せ、私を心から誉めてくれた。


『えーと、今回は深緑森に向かうとの事でしたね!』


 この土地に行けるのは冒険者のランク2からだ。


『此処に行ける、と言う事は……』


「そうなんスよ!なんと私、ついにランク2になったんスよ!」


 サラサさんはランクが上がったギルドのカードとランク2のバッジを見せてくれた。


『凄いです!新しく入ったばかりだと聞いてましたが、もうランクが上がったなんて……!』


「ギルドの人からも褒められました!何とも恐れ多い……!」


『凄いです!所で……サラサさん、今回はお2人で探索するんですか?』


「あっ!忘れてた!」


 サラサさんはハッとして、背後で不機嫌そうにしていた冒険者を私の前に突き出した。


「モヨさんに紹介します!この人は今日、私と一緒に探索をする仲間の『イル』さんッス!」


 イルさんは魔法使いの装備を万全に装備し、髪型もバッチリ整えた綺麗な男性だった。見た目からして、サラサさんと同年代のように見える。


 そしてサラサさんと同様、しっかりした高そうな服を着ていた。もしかしてこの2人は貴族の子だったりするのかな?


「冒険者ランク2、イル・ロイドだ。最近物凄くサポートが上手い人が入ったと聞いていたが……まさかこんな縫いぐるみみたいな奴だとはね」


 イルさんは髪をいじりながら私を見つめ、深いため息をついた。


「イルさん!モヨさんはこう見えて本当に有能な方なんスよ!私も前に危ない所を助けてもらったから、モヨさんの有能さはよーく分かってます!」


『サラサさんありがとうございます!』


 そうです!こう見えてそれなりに冒険者のサポートが出来るんです!


「ふーん……こんな奴に、この僕のサポートが務まるとは到底思えないね……(逆にサポートされる側にしか見えないね)」


 相手は不満そうだ。だがそう思うのも無理はない。こんなぬいぐるみのような弱そうな見た目をした謎の生き物に補助を任せるなんて、普通の人なら絶対にしないと思う。


『イルさん!私はこんな姿でもバッチリサポート出来ますよ!サラサさん、イルさん、本日はよろしくお願いします!』


「宜しくお願いします!!」


「…………(かなり不安だ……)」


『(イルさん、その気持ちはよく分かります!ですが、その不安を拭えるほどのサポートをしてきいますからね!)』





 サラサさんとイルさんの2人は私を連れて街から出た。道を歩いて若草草原の中を通り抜けていく。


『先に魔物の気配はしません!そのまま真っ直ぐ進んで大丈夫です!』


「はい!」


 余力を残す為、道中は魔物に遭遇しないよう気配を察知しながら道案内をした。


「無駄に気を張らなくて済むから楽ちんッス!」


「だからって油断は禁物だよ。若草草原だろうが何が起こるか分からないからね(それに、この毛玉を信用出来ないし……)」


 サラサさんは私を心から信頼してくれているが、イルさんは全然信頼出来ないらしく、常に気を張り詰めながら辺りを見回していた。


「イルさん、油断禁物は分かりますけど……少しはモヨさんを信頼してもいいんじゃないスかね……」


「逆に聞くけど、何で君はこんなのを信頼して命を預けられるんだ……僕はサラサの方が心配だよ……(腕はあるのに、性格が能天気過ぎる……)」


『そうですよ!私もまだ経験不足、信頼し過ぎるのも危ないですよ!』


「まさかの2対1!?もう!2人とも心配し過ぎッス!」


「だから何を根拠に……ん?向こうに見えるのって……別の冒険者かな?」


「どうやらこっちに近付いてくるみたいッスね」


 イルさんが発見した3人の人影がコチラに近付いてくる。


「おっ、やっぱりサラサじゃねーか」


 現れたのは……ガタイのいい青年、斧を担いだ戦士、魔法使いっぽい人の3人で構成された若い冒険者グループだった。


「あ、リースさん、お久しぶりッス!」


『サラサさんのお知り合いですか?』


「はい!この人は隣町『ライムルーフ』の町長の息子さんのリースさんッス!ランク3の冒険者で、大きな剣を使用した攻撃が大得意ッス!」


 サラサさんはグループのリーダーらしきガタイのいい青年を手で指し示しながら簡単に紹介してくれた。そんなリースさんは、サラサさんの顔を見つめながらゆっくりと口を開いた。


「サラサ、この間ランク2になったんだってな。お前みたいのがランク2になれるなんて、ギルドも随分と緩くなったもんだな(あっという間にランク2に上がったとか嘘くせぇ……絶対にギルドに金積んでんだろ)」


「そうですかね?難しさは昔からあまり変わってないと思いますよ?……って言っても、過去の検定は受けてないんスけどね……」


「ハッ!どうだか!どうせ金積んで合格にさせたんだろ?(過去の検定知らねぇって……遠回しに一発合格出来たって自慢してんのか……?)」


「いや、これはお金積んだ所で合格出来る物じゃないですよ?」


「口ではどうとでも言えるよな(ムカつく野郎……!)」


「?」


 何故か、リースさんから凄まじい敵意を感じる……


「おっ、その毛玉って今冒険者の間で話題になってるモヨって奴か?」


「そうです!物凄く便利なお手伝いさんなんですよ!」


「知ってるよ。それ、探索を超怖がる弱虫の腰抜けがこぞって指名するっていう、腰抜け御用達のオモチャなんだろ?」


「オモチャじゃなくてホコリだろ?」


「あはは!そうに違いねぇな!」


 リースさんと斧を担いだ青年は私を指差しながら笑い合っている。


「ちょっ……!?何て事言ってんスか!?モヨさんはオモチャとかホコリなんかじゃないッス!」


「あ、本人の前でこんな事言ったら怒っちまうかぁ〜?モヨたん、悔しいでちゅか〜?それとも、ボクの言ってる事が分かりまちぇんかぁ〜?」


『言葉はちゃんと分かります!それに、そのくらいで私は怒らないので大丈夫ですよ!』


「あ?(何だコイツ……)」


『価値観は人それぞれですから、私は人によってはゴミにも廃棄物にも見えると思いますよ!ですが、私は補助ができるそこそこ有能なゴミである事は間違いありません!』


「……ゴミである事は否定しないのかよ」


『逆にリースさんは私とゴミの見分けが付くんですか!?私はどう見てもホコリの寄せ集めじゃないですか!?』


「ホコリの寄せ集めが喋るわけねーだろが!!つーか何でそこでお前がキレんだよ!?お前はヒカリダマじゃねーのかよ!?」


『……………………』


「そこで黙るんじゃねえっ!!…………えっ、お前ヒカリダマじゃねーの……?ヒカリダマじゃなかったら何なんだよっ!?」


『…………光るワタボコリ』


「お前はヒカリダマだろ!!」


「モヨさんは超有能な光るワタボコリッス!」


「何でお前までホコリ呼ばわりしてんだよ!仲間なら否定しろよ!!」


「実際、図鑑でヒカリダマの項目を見たら「ホコリと区別がつかない」とも書かれてるよ」


「お前までホコリ呼ばわりかよ!?仲間なら擁護しろよ!!」


「モヨと僕が仲間だって?出会って間もないのに、仲間も何も無いだろう?」


「お前、物凄く冷たい奴だな…………(モヨって奴、こんな奴らと居て大丈夫なのか……?)」


 会話をしている内に、何故かリースさんが私を擁護するという謎の流れになっていた。何故かリースさんから憐れみの目まで向けられている。


「そうだ!もし良ろしければリースさんも、また機会があったらモヨさんを使ってみては?モヨさんの良さが分かりますよ!」


「……ケッ!そんなの要らねーよ!あーつまんね!お前達と喋ってるだけ時間の無駄だったわ!お前ら、行くぞ!(ランク上がって余裕たっぷりってか!?くっそムカつく!!)」


「おう」


「…………(リース、また人に八つ当たりして……)」


 リースさんは何故か大激怒し、戦士と魔法使いを引き連れて深緑の森へと走って行った。去り際、魔法使いっぽい最年少の青年がサラサさん達に「本当にごめんなさい」と言って立ち去った。


「何だったんスかね……」


「側から見たら八つ当たりにしか見えなかったよ。多分あのリースって奴、ランクが上がらない焦りからサラサにちょっかいをかけたんだろうね。でも、2人が予想以上に乗って来なかったから空振りに終わって逆ギレしたんだろうさ(能天気も時には役に立つね)」


「久しぶりに喋れて嬉しかったけど……モヨさんをからかわれたのは流石に許せなかったッス!」


『大丈夫ですよ!逆に、赤ちゃん言葉を使いたくなる程に可愛い存在だって事を再認識したので……えへへ……』


「分かります!可愛い子見ると思わず赤ちゃん言葉を使いたくなっちゃいますよね!」


「はぁ、2人とも能天気だな……(でも、そのお陰でトラブルを回避する事は出来たね)」


『じゃあ、気を取り直して進みましょう!』


「はい!」



 …………何故だろう。悪い空気に包まれているリースさん達を見ていると、物凄く嫌な予感がしてくる…………


『(初めての感覚……この後、何もトラブルが起こらないといいんだけど……)』

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