21話 お礼の手紙と、新しい仲間
シルバーキングオーガの討伐後……
ギルドに帰還した私は、いつものようにレイトさんの部屋に戻った。
『ただいま戻りました!』
だが、そこにレイトさんは居なかった。感覚で誰も居ないのは何となくは分かってた。
『(それにしても、私のテレパシー?の力が随分と上がったみたい……部屋に入らなくても、部屋の中の大きさや家具や道具の位置が何となく分かるようになってる……)』
この能力を上げていけば、いつかは見知らぬ土地に迷い込んでも、地図よりも正確に土地の事を理解出来るかもしれない。
『……今日はもう寝よ』
私はいつも使用しているクッションの寝床に乗り、そのまま朝まで眠ったのだった。
暫くして……
「ピチチ……(オイ、ナンダヨオマエ)」
「ピチチピチ……(ヤンノカコラ)」
『んー……もう朝……?』
外から聞こえてきた小鳥の声を聞き、私はそっと目を覚ました。昨日は随分と疲れたのか、ぐっすりと眠ってしまったらしい。
『……ん?あれ?』
私の寝床が変わっている。寝る前はこんな掛け布団は無かった筈だ。
『あれれ?』
私は飛び起きて寝床から降り、寝床の全貌を眺めた。
『ご、豪華になってる……!?』
何と寝床がクッションから、天蓋付きの豪華なベッドにランクアップしていた。布も骨組みもしっかりしていて、とても高そうだ。
「目が覚めたか」
『あっ!レイトさん!おはようございます!あの、このベッドは一体……?』
「ん?覚えてないのか?昨日、クッションから立ち上がって自らベッドに入ったが……あれ寝ぼけてたのか」
『全然記憶に無いです……』
「ならもう一度説明するか。このベッドは、いつも頑張るモヨの為に俺が作ったベッドだ」
『ええっ!?こんな素敵なベッドを私の為に……!?』
「真面目に頑張ってたからな。余裕が出るように大きめに作ったが……ピッタリになったな(丁度いい大きさになったかもな)」
『昨日の戦いで更に大きくなりました!冒険者の皆さんのお陰で、更に進化も出来ました!』
「マルクから聞いた。一昨日は大活躍だったらしいな、よく頑張った」
『ありがとうございます!(……ん?一昨日……?)』
素敵なプレゼントをくれた上に素直に褒めてくれる。物凄く優しい人だ。
『(って私、まさか丸一日寝てた……?)』
「……ああ、そういえばモヨはずっと寝てたな。進化後の影響か、探索の影響で相当疲れてたんだな」
『し、しまった……!私、お仕事丸一日休んでしまったんですか!?』
「いや、疲れたらしっかり休むのが大事だ。それよりも、ベッドの使い心地はどうだった?」
『最高です!物凄く寝心地が良かったです!それにしてもこのベッド、本当によく出来てますね!細部までよく作り込まれて……まさに高級品です!』
「ありがとよ……因みに、そのベッドは何で出来てるか分かるか?」
『分からないです!何で出来てるんですか?』
「骨だ」
『ええっ!?』
レイトさんの想定外の一言に私は驚き、急いでベッドから距離を取った。
「周りの骨組みは肋骨で、このカーブの所は下顎骨で……」
『待ってください!!私、そんな禍々しい物体の上で寝てたんですか!?』
「冗談だ。頑丈な白銀木を切って削って、組み合わせて作った」
『どんな冗談ですか……はぁ、骨じゃなくて良かった……』
私が知らないうちに、レイトさんのギャグセンスが何かよく分からない事になっていた。上手くは言えないけど、レイトさんと初めて出会った頃よりはギャグは上手くなった……のかな?
「……所で、モヨの腹にくっ付いてるそれは何だ?」
『えっ?お腹……?』
私は自分のお腹に視線を落とした。そこには……洞窟で助けた小さな玉のような魔物が静かにくっ付いていた。
『ああっ!?まさか洞窟からそのまま着いてきちゃったんですか!?』
「洞窟……その色から察するに、恐らくシルバースライムの赤ちゃんだろうな」
『赤ちゃん!?』
「おう。どうやらモヨの事をいたく気に入ってるようだが……何かあったか?」
『ええと、実は……洞窟の中でシルバーバタフライが暴れ回っていた時に、この子が床で震えていて……で、声を掛けて私のいる隙間に誘導したんです。その時に身体にくっ付いて、そのまま着いてきちゃったみたいです……これ、マナとか大丈夫ですかね……』
「大丈夫だ。人間に懐いた魔物は、マナとか関係無しについてくるようになるからな(原理はまだ分からんがな)」
『そうなんですか……』
私は、未だにお腹から離れないシルバースライムに視線を向けた。シルバースライムは微動だにしない。
「……そうだ、今日はマルクからモヨにプレゼントを預かってるぞ」
『えっ?私に?』
レイトさんはポケットから小包みを取り出し、私の前にポンと置いてくれた。
「まずは手紙から読んだ方がいいかもしれんな」
『はい!』
私はレイトさんのアドバイスを参考にして、まずは小包みに挟まっている手紙から読む事にした。小さな手で何とか手紙を開け、中の文字をじっと見つめる。
[小さな頑張り屋、モヨへ]
『そんな、頑張り屋だなんて……』
私は照れながらも文字に目を通す。
[この手紙を読んでいる頃には、僕は既に「マルク様、お茶をご用意しました」「うん、ありがとう」「えーと……あ、そうだ」僕は既に、別の地域に探索に出かけてる事だと思う]
ん?
[あの時は、ブロックワームを説得してシルバーキングオーガを倒してくれてどうもありがとう。あの時、モヨが居なかったら「マルクにいちゃん!剣のお稽古して!」「準備して待ってて!この手紙を書き終えたらすぐ行くから!」]
???
[あの時、モヨが居なかったら僕達は今頃この世には居なかったのかもしれない。シルバーキングオーガに気付くのにも遅れてただろうし、戦闘しても押し負けて倒れていただろう(……少し重いかな?)]
何故だろう。手紙の文字が何故か妙に読みづらい。
『(これ、まさか……手紙を書いていた状況が、テレパシーの力か何かで事細かに伝わっているのでは……?)』
恐らく、手紙に込められた心を全部読み取ってしまったのだろう。折角マルクさんから貰った手紙なのに、物凄く読みづらい。
[あの後、シルバーキングオーガの素材は皆んなで山分けする事になった。モヨも呼びたかったけど、睡眠中だったからそっとしておいた。本当にお疲れ様(本当にありがとう……)]
心を読まなくても、マルクさんの気遣いが読み取れる優しい手紙だ。
[でも、折角モヨが頑張ったのだから僕らも何か贈りたいと思い、全員でモヨにプレゼントを贈る事にしたよ。その小包みには色んな物が入るポーチと、魔物を入れる為のカゴが入ってるから、後で確認してみてね]
『えっ!?プレゼント!?』
私は手紙から一旦目を離し、急いで小包みを開けた。
『わぁ……!』
中からとても綺麗なポーチと、おしゃれなカゴが出てきた。
[そのポーチはオシャレ用で贈ったよ。モヨは必要無いかもしれないけど……折角だからお出掛けの時に着けてみてほしいな。そのポーチの中にはシルバーキングオーガの落とし物の銀色結晶と銀球魔石、あとバタフライの落とし物が幾つか入ってるよ。1番の功労者であるモヨにも絶対に何かあげたいと思ったから、皆んなと相談してこの2つを選んで入れたよ]
[(でも、これだとモヨは受け取らないよね……これだけは書いておかないと)そうそう、皆んなは目当ての素材をしっかり手に入れてるから、心配しないでね。むしろ、モヨが連れてきたブロックワームのお陰でいい素材が沢山手に入ったから、逆に余ってるくらいだよ]
[バタフライの素材は皆んなからのお礼だよ。特にフーラは、いらない物を押し付けるとか言いながら中々に良い物をポーチに入れてたよ。(いらなくてもギルドで売れば、結構なお金になるのに)]
『皆んな……』
[魔物のカゴは、文字通り魔物を入れておく為のカゴだよ。小さな魔物なら何でも入るらしいから、もし仲間になった魔物と冒険する時は、そのカゴに入れてあげてね。そうそう、そのカゴには既に1匹、魔物が入ってるよ]
『えっ?』
私は再び手紙から目を離し、カゴを開けて中を覗いてみた。本当だ、何か入ってる……
『……虫?』
カゴの中には小さくてまんまるな虫が入っていた。物凄く単調な造りで、すごく可愛い顔をしている。
[この子は物凄く珍しい魔物の、プラチナワームの幼体だよ。プラチナバタフライの落とし物の中に混じってたんだ]
[この子は魔物なのに穏やか、らしいよ。人間を見ても敵意を感じないし、むしろ人の手に積極的に乗ってくるんだ(この子は僕を信用して手に乗ってくるのに対し、僕は……僕は相手を信用し切れない一心からか、この子を上手く受け止められず、何度か地面に落としてしまいそうになった……僕は……最底辺の人間だ……)]
『それは流石に言い過ぎですよ!?』
心の声が長い上に暗過ぎる。明らかにこの手紙を書けるテンションじゃない。
「モヨ、何だか騒がしいな(何かあったのか?)」
『あ、すいません……』
私はレイトさんに頭を下げ、気を取り直して手紙を見つめた。
[そうそう、そのプラチナワーム、折角だから飼育してみたら?と、リーサが言ってたよ]
『えっ!?』
[モヨが飼育したいならさせる、無理強いはしない……だって。ギルド長にもギルドスタッフにも報告済みだから、もし飼育したいならギルドの人に一声掛けてみてね。力になってくれる筈だよ。もし要らなかったらリーサに送ってね]
『(マルクさん……そこまで考えてくれてるんだ……」』
[銀色結晶はプラチナワームの餌になるよ。多分、成長して進化するまでの餌の分はあると思うから、餌代は気にしなくて大丈夫だと思う]
[最後に、改めて伝えるよ。モヨ、本当にありがとう。君は僕の命の恩人だ。これからも頑張ってね、僕はずっと君の事を応援してるよ。マルクより]
『マルクさん……』
マルクさんの手紙は、心のこもった素晴らしい手紙だった。私は嬉しすぎて、ギルドスタッフから指名の声が掛かるまでずっと読み返したのだった。
[小さな頑張り屋、モヨへ。この手紙を読んでいる頃には、僕は既に「マルク様、お茶をご用意しました」「うん、ありがとう」]
うーん、これはこれで中々味がある……
次の日……
『ナワ!バスラ!おはよう!』
「プウ!プウ!」
「♪、♪」
私は、マルクさん達から貰ったプラチナワームに『ナワ』、私のお腹にくっ付いてきたシルバースライムに『バスラ』と名前を付け、大事に飼育する事にしました。
『今日も元気がいいね〜』
「プィ」
「?」
2人はまだ会話出来ないけど、いつか会話出来るようになれば楽しいだろうなと思ったので、これからはテレパシーで積極的に声を掛けたり、色んな事を教えようと思う。
『(2人を大切に育てる為にも、将来の為にも……これからもお仕事を頑張らないとね!)』
第一章完結。次回からは第二章・オオヒカリダマ編が始まります。




