16話 緊急事態発生
「(ブガイシャノニンゲン!サンタイ!センメツセンメツ!)」
『相手がどんどん接近してきます!!』
「まずい!皆んな、急いで!(遠くから凄い魔力を感じる……!)」
『マルクさんの脳内に周りの魔物の様子を常時伝えます!』
「頼んだよ!」
洞窟の奥で暴れ回る巨大な魔物に追いかけられ、急いで逃げるマルクさん達。
「(アイアンキングオーガ……アイツは探知なんて器用な真似は出来ない筈……)」
「(何かがおかしい……暴れ回っているのはアイアンキングオーガじゃないのか……?)」
リーサさんとマルクさんは、普段と違う魔物の様子に疑問を抱いているようだ。
「そろそろかな……モヨ、この洞窟内に人間の気配はあった?」
『私が探知した範囲には居ませんでした!多分、この洞窟内に私達以外に人間はいません!』
「分かった!皆んな、細い通路まで走って!道を遮蔽石で塞ぐ!」
「分かった!」「おう!」
3人は物凄い速さで通路を駆け抜け、あっという間に細い通路に到達した。
「ふんっ!」
マルクさんはポケットから茶色の石を取り出すと、1番細くなっている通路目掛けて石を投げた。石が地面にぶつかった瞬間、地面から壁のようなものがせり上がり道を塞いでしまった。
「(キエタ……ニンゲンキエタ……)」
『……巨大な魔物は私達を見失なったみたいです』
「と、言う事は……多分だけど相手は、魔力探知を使ってこっちを発見したみたいだね……」
「でも、アイアンキングオーガはそんな器用な真似はしない……これ、何かおかしいよ」
話をしながら走り続け、結界が張られた安全な出口へと到着した。
「此処まで来れば大丈夫、遮蔽石が消えても襲われる事はない……でも、大変な事になったね……」
『まさかあんな大きな魔物に追われるなんて……』
「いや、魔物が大量発生する地域では時折、こういったトラブルは発生するんだ。僕も覚悟は決めていたけど……これは想定外だったよ」
「……マルク、どうする?もうグレムリンどころじゃないと思うけど……」
「ギルドに報告しに行く。これは僕達だけではどうする事も出来ないと思う」
「だよね、私も賛成」
「……分かった」
どうやら3人は探索を中止し、ギルドに戻るようだ。
『あの……巨大な魔物はこの洞窟から出たりしますか……?』
「大丈夫だよ。力の強い魔物はマナ無しでは生きていけない。わざわざマナが薄い外に飛び出すような真似は絶対にしないよ(時折出てくる事はあるらしいけど、それはレアケースだったりするし……)」
「今はグレムリン対策として前より強力な結界を張ってるし、グレムリンどころかボスすら碌に出れないって(日数が立てば弱くなるけど、たった1日で弱くならないし)」
『良かった…………あれ?』
「(ソトデル!ソトデル!)」
「モヨ、どうしたんだい?」
『あの……さっきの巨大な魔物が外を求めて、出口に向かって接近してるみたいで……』
「えっ?でも、そもそも道は塞いで……」
と、マルクさんが言い終える前に突然、遠くに見える壁が大爆発した。
「何!?」
壁が崩れ……そこから、身体中が銀色の金属に覆われ、ツノを生やした巨大な魔物が姿を現した。
「……(ニンゲンハッケン!センメツ!センメツ!)」
『うわーっ!?出たーー!!』
間違いない!これは私が遠くで観測した巨大な魔物だ!
「シルバーキングオーガ……!(まさかアイアンキングオーガが進化を……!?)」
「壁を破壊して此処まで来たのか……!(まさか、こんな所で出会うなんて……!)」
「マルク、アイツ魔物避けが効いてない。このままだと魔物避けも壁も、何もかも壊して外に出るぞ」
「まずい事になった……もし此処であの魔物を放置したら、魔物避けが崩れてシルバーキングオーガが外に出てしまう!今まで張られてた結界がなくなったら、洞窟内の魔物も一緒になって飛び出すだろうし……!(僕が此処で食い止めないと……!)」
『そんな……!?』
つまり此処であの魔物を食い止めなければ、周囲に甚大な被害が出てしまうという訳だ。もはやグレムリンどころではない。そんな事を話している間も、シルバーキングオーガは出口に向かってズンズンと進んでいく……
「やあっ!!」
マルクはそんなシルバーキングオーガの顔に何かをぶつけた。すると、オーガの顔に生えていた金属が急成長して顔を覆ってしまった。
「リーサ!受け取って!」
『わわっ!?』
マルクさんは私が入ったランタンをリーサさんに投げると、剣を構えてシルバーキングオーガの元へと駆けて行った。
「ちょっ!?何!?」
「此処は僕が何とかする!リーサとドラはモヨと一緒に外に出て高ランクの冒険者を呼んできて!」
マルクさんは構えた剣で、シルバーキングオーガの足に次々と斬撃を喰らわせていく。
「そんな真似出来るか!!俺も残る!!」
ドラは大声で叫び、剣と盾を構えながらシルバーキングオーガに突撃した。
「私も残る!」
「リーサ!君は近くの村や街に飛んで一般人の避難を呼び掛けて!早くこの事を伝えてくるんだ!下手したら周囲が大変な事になる!」
「……!分かった!(悔しいけど、今は一般人の安全確保が最優先……!)」
リーサさんはランタンをポーチに着けると、急いで外に飛び出した。
ビッグクロウが来れる場所までひたすら走り続けるリーサさん。焦りが顔にでている、とても不安そうだ。
『だ、大丈夫ですかね……』
「避難を呼びかけるのが先。それに、逃げる前に外に助けは呼んであるから」
『えっ?』
「スモークラットを戻す時に、マジックバードを飛ばした」
『マジックバード……?』
「紫色の鳥で、近くに冒険者を発見すると「助けて!」って言って私の元に飛んでくるよう教えてる。多分あの子なら、発見した冒険者を青金洞窟に案内してくれるよ。簡単に事情も説明出来るし……だから、大丈夫」
『すごいですね!それならきっとマルクさん達も大丈夫ですね!』
「うん、きっとね……(大丈夫、大丈夫……)」
どうやら助けを呼んでもまだ不安なようで、自分自身に大丈夫と言い聞かせて落ち着こうとしているようだった。
『……あっ!近くに人間が居ます!』
「ホント!?」
『はい!どうやら3人グループで……あれ?何かあったみたいですね……』
冒険者っぽいが、心の声から察するに何やらトラブルが発生しているようだ。
「……?モヨ、とりあえずそこに案内して。さっき起こった事を伝えたいから」
『分かりました!』
リーサさんに冒険者の位置を伝え、急いで他の冒険者がいる場所に駆けつけた。
「はぁ……はぁ……!何なのよもう!」
「ただの魔物だろ!そんな事より早く逃げないと……!」
「あの、この鳥……人が飼ってる魔物じゃないですか……?多分リーサさんの……」
少し開けた所で目当ての冒険者3人組を発見した。と言うか、何か会話が不穏な気が……
「フーラ!カラ!アマリリ!」
「ん…………?あーっ!?ゲテモノ飼い女!!(この間、私の顔にキショい虫ぶちまけてきた奴!)」
手にグローブを付けた背の低い勝ち気な女の子『フーラ』さんがフーラさんを真っ先に見つけ、妙なあだ名を叫んだ。
「こらフーラ!妙な名前で呼ぶな!……すいませんフーラさん!この子、ちょっと気が動転していて……!私が代わってお詫びを……(ああ、相変わらず美人だ……!)」
銃っぽい物を腰に提げた、お調子者っぽい男性の冒険者『カラ』さんがフーラさんの前に飛び出し、下心ありありでリーサさんに声を掛ける。
「あ、あの……リーサさんも此処に来てたんですね……えと……(魔物の事、言わないと……)」
魔法使いっぽくて、気弱そうでオドオドした女の子『アマリリ』さんがモジモジしながら、リーサさんに何かを伝えようとしている。
「ねえ。今、大丈夫?ちょっと話が……」
と、リーサさんが言い掛けた所で、地面に何かを見つけたらしいリーサさんが突然固まってしまった。
『リーサさん、どうしたんですか?地面に何か……』
「タ、タス……」
『ん?』
地面から僅かな心の反応と共に声が聞こえ、私も思わず下に視線を向けた。
「タ、タスケ……テ……」
地面には、力なく横たわる紫色の鳥の魔物の姿があった……
ん?紫色の鳥って、まさか……
『ま、まさか……リーサさんのマジックバードさん……?』
「うわーっ!?リリアン!?」
この反応からして、地面に倒れる魔物はリーサさんのマジックバードだったようだ……
「へ……ヘイキヘイキ……ワタシハヘイキ……」
「こんな時に気を遣わなくていいから!」
「イエ、マジデダイジョウブナンデ……」
どうやらリリアンさんは命に別状はないようだ。
…………本当に大丈夫だよね?




