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陰陽相見える  作者: 霜月昴
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七話 デート①


 謎の式神を退けた後で彼ともう一度、話をしてみたいと思った。

 「今週の日曜は予定が空いてますか?」

 自然と口からそんな言葉が出ていた。

 (まるで私から誘ったみたいじゃない。これは情報収集よ。恋愛感情ではないのだから)

 そう思ってから脳内で彼の言葉が反芻される。

 「見事な術でしたね」

 それはそうだ。実戦で扱えるように鍛錬と努力を積み重ねてきたのだから。

 けれど陰陽師の仕事を請けるにこれくらいは出来て当たり前だ。なので誰もそのことを褒めてはくれないし、私も当たり前だと思っていた。

 けれど彼の言葉がなぜか反芻されていた。

 「服、新しいのを買おうかしら」

 私は財布を持って買い物に出かけた。

 

 ※


 そうしてデート当日。指定された場所に行くと彼はすでに来ていた。

 「遅れてすいません」

 「あ、いえ・・・俺も今さっき来たところです」

 鐘羽さんはすこし戸惑っているような様子だったが何か不自然な事があったのだろうかと思う。

 (もしかして選んだ服が良くなかったの?可愛さを重視したんだけどスーツのようなきっちりした服が良かったのかしら)

 年上の男性は可愛い服装を好むと雑誌に書いていたのでそれに従ったのだが判断ミスだったのだろうか。そんなことを考えていると鐘羽さんから提案があった。

 「行き先ですが雨路(あまろ)デパートはどうでしょう?」

 地元で有名な雨路デパートは日常生活で必要なものほとんどのそろっている商業施設だ。

 「お互いに仕事道具を見に行くのが効率的かと思いまして」

 「構いませんよ。私も護符を作る道具を買いに行きたいと思ってましたから」

 そうして行き先が決まった。

 まさに一石二鳥だ。効率的な彼の選択を好ましいと思った。

 護符を作る材料を買いに私達はお店に入る。

 「まずは紙と墨汁ですね」

 「それならこちらの売り場ですね」

 彼の案内で私はその後を付いて行く。

 (そういえば買い物に来るのも久々かも。材料はネットで手に入れてたし)

 そうしては一つの墨汁を薦てきた。

 「これが俺のお薦めです。筆で書く時に一番使いやすい」

 「そうなんですか」

 「いつもどのメーカーの墨汁をつかっています?」

 「えっと確かこれですね」

 メーカーなど気にしたことがなかったのでブックマークしているサイトを見せる。

 「あやかし堂の墨汁か。書道には向いているけど護符作りにはイマイチですね」

 「何か違うのですか?」

 「紙は何を使っています?」

 「普通のコピー用紙ですけど」

 「やっぱりそうだったんですね」

 何か問題でもあるのだろうか?他の陰陽師に聞いてもコピー用紙を使っていると言ってるものがいたのでそれが普通なのかと思っていた。

 「確かに護符は使い捨てだから、大量生産するなら経費面を考えればコピー用紙が最適です。けれど大符のように威力を望むならコピー用紙よりも半紙です。筆は本来半紙に使うものだからです」

 「半紙・・・」

 「言いたい事は分かります。大量に書くならコピー用紙の方が値段的にお得だ。しかし先ほども言ったが威力を求める大符になると半紙がお薦めで、そしてその半紙に合う筆のノリが一番良いのがこのコクホーの墨汁だ」

 「なるほど」

 それから一時間ほど彼のレクチャーに聞き入ってしまった。

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