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「LGBT」というレッテルを貼られて。  作者: 千石杏香
「LGBT」とは私のことではない。
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2.仲が良いとは言い難いレズビアンとゲイ

「LGBT」と言うと、L・G・B・Tが仲良くしているような印象を受ける。


しかし、そうではない。この四つには大きな隔たりがある。


同じ同性愛者でも、男性と女性では事情が違う。


よく問題視されるのは賃金格差だ。女性の平均収入は男性の半分程度である。なので男性同士で暮らせば豊かになるが、女性同士で暮らせば貧しくなる。


もちろん、これは年代ごとに推移する。たとえば平成二十四年に国税庁が発表した調査によれば、男女の平均年収には次のような違いがみられた。


【二十代】

男性 313万円

女性 258万円

【三十代】

男性 464万円

女性 295万円

【四十代】

男性 588万円

女性 285万円


つまり、三十代の男性が二人で暮らせば928万円ほどの年収、三十代の女性が二人で暮らせば590万円ほどの年収になる――338万円も開きがある。


当然、これは大雑把な数値でしかない。加えて言えば、妊娠したら女性は働けなくなる。しかしそうでなくとも、男性と同じ報酬や出世から女性が遠ざけられていることは誰もが知る通りだ。


レズビアンとゲイの溝はこればかりではない。


いつのことか、四十代初めのゲイを部屋に招いたことがある。私の部屋には本が多いので、「お勧めはどれ?」と彼は問うてきた。色々と紹介した後、一冊の百合漫画を勧めたのである。パラパラとページを捲り、彼はこう言った。


「ところで、レズなんて本当にいるの?」


びっくりした。あんたは同性愛者じゃないのか。


「そりゃいますよ」と言ったものの、レズビアンなど当時の私も見たことがなかった。


基本的に、男性当事者は男性当事者にしか会わない。女性当事者も同じだろう。異性愛者の多くが同性愛者を見たことがないように、レズビアンを見たことのないゲイや、ゲイを見たことのないレズビアンも多いのだ。


カミングアウトしてからは、女性当事者と話したり、会ったりするようにもなった。それでも、女性当事者と初めて話してから一年しか経っていない。


新宿二丁目など、同性愛者が集まる場所ではレズビアンとゲイが顔を合わせることもある。


しかしゲイは男にしか関心がない。むしろ女性を異分子として見ている節がある。このような傾向はレズビアンからも感じられる。なので互いに関心を持つことは少ない。


私の知人のレズビアンは「仲が悪いっていうか、寄り添わないんだと思いますよ」と言っていた。


「あたしなんか、九〇年代の初めごろ、新宿二丁目にあるビルの階段を昇っていたら、ゲイから蹴っ飛ばされたことありますよ。そこにある物っていう感じでしたよ。」


私の知人のゲイは、「寄り添わないというより、寄り添えないんだと思うよ」と言った。


「知り合いのFtM(女性から男性になった者)に誘われてレズビアンバーに行ったことあるんだけど、すげー敵対心強かったよ。俺はゲイだって言ったんだけど、『何しに来たんだ』っていう目を向けられたの。ノンケが二丁目に何で来てんの的な意識が強いんだと思う。」


このようなことはLGBT活動家も認めている。例えばゲイ活動家の宇田川しいは、あるサイトでこう語っていた。


「宇田川 ゲイにはミソジニー((引用註・女性嫌蔑))の強い人もいて、とくに昔はそうだったんですよね。僕は昔、新宿2丁目で東郷健さんがレズビアンバーの店員と摑み合いの喧嘩をしてるの見てたりするわけです。〝ここはアンタたちの来る街じゃないのよっ!〟とか言ってね、東郷さん。


古賀 壮絶ですね……。


宇田川 ひどいでしょ。でも、レズビアンバーの子に簡単に組み伏せられちゃうの東郷さん。弱いんですよ。おかげで、まあ憎めないっちゃ憎めないというか、救われたんですけど。だから、リブの世界((引用註・活動家) )でもLとGの軋轢が露呈するようなこともあったんだと思うんです」

https://greenfunding.jp/thousandsofbooks/projects/2179/activities/5509


同性愛者に異性嫌いの人がちらほら見られるのは事実だ。それは、異性愛者の異性嫌いとは性質が違う。つまり、自分が属する性ではなく、必要とする性でもないがゆえの嫌悪だ。


私の知り合いのゲイなどは、「男性の方が純心じゃないですか」という理由で女性を嫌っていたし、別のゲイは「女性は宇宙人みたい」「胸や尻が突き出てるのが厭」とさえ言っていた。レズビアンの中にも、男性自体や男性器を怖がっている者もいると聞く。


著名人にもこの傾向はある。


折口信夫などは、女性が作った料理には一切手をつけなかったほどの女嫌いだったという。三島由紀夫に至っては、『生きる意味を問う 私の人生観』の中で次のように述べている。


「大体私は女ぎらいというよりも、古い頭で、『女子供はとるに足らぬ』と思っているにすぎない。女性は劣等であり、私は馬鹿でない女(もちろん利口馬鹿を含む)にはめったに会ったことがない。事実また私は女性を怖れているが、男でも私がもっとも怖れるのは馬鹿な男である。まことに馬鹿ほど怖いものはない。」


こんな罵詈雑言が、ここでは引用しきれないほど続いてゆくのだ。


ちなみに、越境性差(トランスジェンダー)では違う傾向にある。


これも不思議なことだが、私が知る越境的性(トランスセクシュアル)たちは、逆に同性嫌悪が激しかった。中学生の時点で過激派フェミニストだった身体男性、男性に恋をするのに男嫌いが酷すぎてゲイの集まる場に近づかなかった身体男性、女性となったにも拘わらず「あんな生き物(男性)何で好きになるんですか!」と震える声で言っていた者もいた。


同時に、その全員が発達障碍や双極性障碍であった。


――私と同じように。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 千石杏香様 LGBTという概念は、真正の性犯罪者にとって非常に便利な隠れ蓑になる事が分かって、非常に勉強になりました。
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