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童話シリーズ

君が教えてくれたもの

作者: 葉月みつは

少年は、人混みに揉まれいくら努力しても人とうまく付き合えず、家族ともうまくいかないことに疲れはてていた。日常のなかで気力を奪われていたある日、祖父母の家に行く事になる。

そこで出会った少女との日々が少しずつ少年に変化を与えるきっかけとなり、少年が少しずつ成長していく優しい物語。


男は、日記を書いていた。

昔のことを懐かしく思いながらペンを進める。


これは、僕とあのことの遠い思い出。

そして、僕が気づかなかった僕自信の気持ちをしるきっかけになった出会いでもあり、僕自信の小さな可能性を見つけて成長する物語でもある。

僕たちは、人混みに揉まれながら人の和のなかに入ろうと必死で時には無理をして回りに会わせて、かえって和からはみ出してしまうときもある。

それはとっても悲しいこと、辛いことでもある。

からに閉じ籠りたいほど世界が怖くなってしまうかもしれない。

視野が狭くなり、大事なものを見落としていくかもしれない。

これは、そんな日々のなかで僕が忘れていたもの、気づかなかったことを見つけていく掛け替えのない思い出。

あの日以来、君とは会えてないけど、またいつか会える日を楽しみにしている。

きっと、生涯忘れることはないだろう。


僕は、家族で祖父母の家に帰っていた。

冬休みで、祖父母が僕たちに会いたいということもあり住み慣れたお家に少しの間さよならをした。

祖父母とは、なかなか会うことが少なくいつの間にかどうやって接していたのか、どうしたら喜んでくれるのかわからなくなっていた。

会話もなかなか続かず正直気まずかった。

だから、、祖父母の家についた当日も村の中をお散歩したいとは挨拶をすませるとすぐ祖父母の家からでた。

運がいいことにその日は晴れていて雪もそこまで積もっていなかった。

前来たときとあんまり変わらない村の中を探索し終えて、お気に入りの場所に向かう。

そこは、前来たときに偶然見つけたお気に入りの場所だった。

だが、今日は先客がいたらしい。

気づかれないよう離れようとしたとき、

「キャッ!」

先客が足を踏み外し盛大に転んでしまっていた。

よく見ると動物を捕まえるための穴につまずいたようだ。

その時に目があってしまい、仕方なく声をかけ助け起こす。

「ありがとう!助かった」

「どういたしまして」

この後なにも話せばいいかわからず会話が止まった。

少し気まずさも感じ、その場から離れようと頑張って声を出す。

「えっと、大丈夫そうだから僕はこれで…」

そのまま来た道を戻ろうとすると、

「あっ、まって、お礼がしたいの」

先客が僕を呼び止めた。

「えっと、別にいいよ、大したことないし」

「そんなことないよ!この場所のこと知ってるってことは、何て言うのか…うん、そう、なかよくなりたいなって」

先客が“ダメかな?“と少し悲しげな表情をこちらに向ける。

僕は、結局断りきれずにお礼を受けることになった。


「ここにおいでよー」

「ここ…きれい」

お礼と称して、あのこと僕は村の絶景スポット(自称)巡りをしていた。

案外それは楽しいもので、人見知りな僕でも会話が弾んでしまうほどだった。

時間はあっという間に過ぎ気づけば夕日がでていた。

「ねぇ、よかったら明日も一緒に回らない?」

「…うん」

そのとき初めて少女の姿をちゃんと見た。

長いロングの髪の毛をポニーテールにまとめあげ、凛とした顔立ちは、まるで妖精のようだなと思った。

トントン

ガチャリ

「ただいまー」

まだ、父さんと母さんは親戚の家から帰って来ていないのか靴がなかった。

「お帰りなさい。外は寒かっただろう。お風呂か、ご飯どっちがいいかな?」

祖母が僕に優しく声をかけてくれる。

「お風呂すぐはいってから、ご飯にするよ。ありがとう」

さっとお風呂にはいり、ご飯を食べにいく。

「今日はどんなことをしたんだい?」

「えっと、村巡りしたよ、久しぶりだったから」

「ほぉ、それはいいね」

始めは、会話は続いていたのだが、話題がなくなりだんだん気まずくなり足早にご飯をすませ部屋に戻った。

「どうして、こんなに会話って難しいんだろう?」

ふと、学校でのことを思い出した。


「あの、」

「ん?」

「今日はいい天気だね」

「そうだね」

「……」

「えっと、友達まってるからいくね」

「あっ、うん」


どうにか友達を作ろうといろんな人に声をかけるが、なかなか会話が続かずいつの間にかぼっちになっていた。

そして、いつの間にか僕は友達を作るのをやめた。

それからは人見知りにも拍車がかかってしまい、人としゃべることも減ってしまった。

人には得意、不得意があり僕にとっては会話は不得意な部分で仕方がないと思っていた。それに比べ、今日のあのこは、とっても積極手に会話をし何より生き生きしていた。羨ましいなと思った。明日は、どこに案内してくれるのだろうか?いつの間にか明日の約束が楽しみになっていた。


「あっ、おっはよー」

少女は待ち合わせ場所で僕の姿を見つけると満面の笑みで向かえてくれた。

「今日はね、取って置きの場所に案内してあげる」

彼女の案内で、森の奥へと進む。

すると、そこにはかわいらしいお家があった。

「私のお家へようこそ」

部屋のなかにはいり、会話が時には続かないときもあるけどなぜか嫌な気持ちや気まずい気持ちはならず楽しく過ごした。

夕日が沈む頃にもちろんおうちに帰った。

そんな楽しい日々が三日過ぎた頃に祖父母から冬祭りの話を聞いた。

「そういえば、じいさん、そろそろ冬祭りじゃないか?」

「そうだな、今年も来たか」

「冬祭りって?」

「由来があってな

冬の日のある日に狐が罠にかかったんじゃが、その狐は孤独でな、死ぬ前にどうか話し相手になってくれないかって罠を確認しに来た男にいったそうだ。ちょうど男もうまく人付き合いができずに孤独だったそうだ。お腹は減っていたがそれをこらえて、狐の頼みを聞いてあげたんだ。それに喜んだ狐はお礼に山の木の実や、きれいな景色が見れる場所など精一杯お礼をしたそうだ。ちょうどその年は飢饉に村は苦しんでいて男は木の実を他の村人にも分けてあげた。ある日、狐は満足し男に“もう思い残すことはないです“と命を差し出そうとした。だが、男は命をとることはなかった。狐は感謝すると森へと帰っていた。男は狐が持ってきた木の実で村の英雄になっていた。木の実でどうにかしのいで飢饉を乗り越えることができたからだ。男は狐とで会った場所にほこらをたて、時々狐の好きな食べ物を置いた。それから、この日を村を飢饉から救った狐を称えるひとなった。

という話があるんだ。」

僕はなぜか親近感を感じた。

なぜかは理由がわからなかった。


雪まつり当日。

家族で祭りにいくことになり緊張していた。

二人とも仕事が忙しく普段の日でも顔を会わせることも少ないから会話も滅多に交わしたことがなかったからだ。

「何が食べたい?」

母に声をかけられる。

「これお願い」

目にはいった串ものを適当に指差す。

「これお願いしまーす」

母から渡されそれをがぶっと食べながら歩く。

ふと、目の前をこどもたちが走り抜けた。

それを見て母が訪ねてきた。

「学校はどんな?」

「普通」

「友達もできた?」

「…」

「馴染めていないの?」

「男ならぶつかればなんとかなるぞ?」

そのあとは、ひたすら友達作りの大切さを聞かされ続けた。

「…わかったか?友達は必用だぞ?」

「そうよ、学校が今より楽しくなるわよ」

二人の話が終わると頭がいたくなってきた。

そのあとも休み休みにその話題がでた。

二人の言いたいことはわかるけど、僕は、友達を作りたくっても作れないのだ。

ポタッポタッ

「あっ、」

気がつくと涙が溢れてきて止まらなかった。

「ごめん、とうさん、母さん体調悪いから先戻るね」

二人に気づかれないよう逃げるようにその場からはなれた。


「どうしたの?」

少女が僕の姿を見て心配していた。

今までのことを気がつけば全て話してしまっていた。

そして、話し終わると涙も止まっていた。

「そっか、辛かったよね」

少女は僕の話が終わるとそう呟いた。

「あのね、私の話しも聞いてくれるかな?」

「うん、なんか僕ばっかり話してごめんね」

「いいよ、君のことが知れて嬉しい」


それから、少女は自信についてゆっくりと話し始めた。

それは、少女が孤独と向き合う中での出会いと別れと自分自身の葛藤、そして、大切な人たちとの思い出だった。


「まぁ、いろんなことがあってね。だからあなたも自分の気持ちを伝えると案外スッキリするかもよ?私はそうだったから…“学校“だって、どんなところかはわからないけど始めっから会話とかじゃなくって、自分に会ったものを見つけてみるのもありかもしれないよ?」

「じぶんにあったこと?」

「そう、例えば、私との出会いを思い出してみて!」

「えっと…人助け?」

「うん!そこからの出会いはどんなかな?」

「僕にもできるかな?」

「挑戦してみて!それから、うーと、そうだ!お気に入りの場所探しをして見るとか、そこなら似たような子ともともだちになれそうじゃない?」

「そうかな?学校で僕のお気に入りの場所…確かに回りを見たことなかったかも…」

「そうそう、その調子で探してみようよ」

それから、たくさんおしゃべりして、悩んで、時には冗談を言って楽しい時間が過ぎた。そして、まずは身近な人から向き合うことに決めた。



トントン

ガチャン

「ただいま」

「お帰りなさい」

今日はおとうさんとお母さんがで向かえてくれた。

「さっきは悪かったな」

「あなたの気持ち考えてなかった…」

三人の間に気まずい沈黙が漂う。

いつもならこのまま部屋に戻るんだけど、今日はあのこと約束したことがある。行きを吸い込みお腹に力を込める。

「本当だよ!僕の気持ちなんて今までちゃんと聞いてくれなかったじゃんか!いつもシゴトシゴトで…」

思ったより大きな声がでて自分でも驚いた。

それからすらすらと自分の今までの気持ちが口から吐き出された。

おとうさんとお母さんは驚きながらも静かに僕の話を聞いてくれた。

言葉で気持ちを話すうちに、自分でも気づかなかった気持ちがあり驚いた。

思った異常に、僕は、寂しかったんだと思った。

もっと二人に見てほしかったこと、一緒に悩んで考えてほしかったことなど言葉になって初めて僕自信の気持ちに気づいた。

涙がボロボロこぼれ叫ぶように気持ちを伝え終えたあと、二人が僕のために頑張っていることを思い出し、ごめんなさい と伝えると二人は僕を抱き締めてくれた。そして僕のことをたくさんしろうとしてくれた。嬉しかった。その日の家族での会話は少しぎこちないけどきまずくはなかった。


次の日、祖父母に僕ができることを挑戦してみた。

祖父は畑をしていてそれをお手伝いした。

祖母には、皿洗いや選択のお手伝いをした。

会話は相変わらず続かないが、一緒にいて楽しかった。

祖父母は自慢の孫だとたくさん誉めてくれた。

心がホッコリとした。

会話がなくってもそばにいることで落ち着けることがあるってなんだか不思議な気持ちだった。

苦手だった祖父母との時間が今は楽しみに変わっている自分に驚いた。

食事時間も少しは気まずく感じることもあるがそれも回数を重ねていくうちに薄れていて気にならなくなっていた。

そんな自分の変化に嬉しかった。


その翌日。

僕に起きた変化を少女に伝えようとあの場所に向かう。

少女は、いつもと変わらない笑顔で僕を向かえてくれた。

「久しぶりだね!なにか嬉しいこと会った?」

「うん、聞いてほしいことがあるんだ!実はね…」

これまでの出来事を少女に伝えた。

聞き終えると

「君ならできると思ってたよ!おめでとう!」

と喜んでくれた。

それからいろんな話をして夕日が沈むまで楽しんだ。

そして、僕はあることをふと思い度した

「あっ、そうだ!僕明日帰らないといけないんだ!来年も来たら会えるかな?」

「会いたいね」

少女は少し悲しげな表情をしたような気がした。

それは一瞬だったから僕はそのとき気のせいだと思った。

「じゃあ、今日が最後の日になるんだね。それなら君にひとつ探し物をお願いしようかな」

「探し物?」

「うん、君ならきっと見つけられるはずだよ。ここの昔話について知ってる?」

「この間祖父から聞いたよー」

「その狐の為に男がどうしたのか調べてきてほしいんだ」

「わかった!約束する。」

「ありがとう」

その瞬間すごい風がふいた。

少女は呟いた。

「そしたらきっと、君の悩みの解決へのヒント探しにもなるはずだから…」

この呟きは少年には聞こえなかった。

そのあと暗くなる前に二人はそれぞれのお家へと帰った。


ガチャ

「ただいまー」

「お帰りなさい」

祖父母が今日は迎え入れてくれた。

どうやらおとうさんとお母さんは忙しいみたい。

「ねえ、おじいちゃん昔話の狐についてしりたいんだけど?」

「ん?あぁ!あの話しか。そうか、そうか。実はなあれのもとは、うちの先祖様なんじゃよ」

「えっ!そうなの?」

「そうだ、そういえばその先祖様の日記が大事に保管してあったはずだ。少しまってぇな」

お家の外の納屋から祖父は大事に包まれた古い紙の束を持ってきた。僕では何てかいてあるか読めなかった。

「えぇーと、

私は、狐と会ってから人としゃべる機会が増えた。狐は私に必用なものを見つけてくれた。村を飢饉から救ってくれたことも感謝している。あの別れの日以来狐とは会えていない…時々ほこらに狐が好きなものを置いておくとなくなっているので元気でいるんだろう


村の人たちと大分打ち解け妻をめとってこどもも生まれた。祠にお供え物を添えて、報告した。でもでてきてはくれなかった。長いこと生きた狐は守り神になるというしどこかで見守ってくれると嬉しい。


こどもたちが大きくなり、孫も生まれた。何度か飢饉に襲われたが、狐に教えてもらった木の実は枯れずそれで飢えをしのぐことができた。その後でやっと村の人たちに狐のことを話すことができたよ。ばかにされると思ってしまい、君の功績なのに今まで黙っていてすまなかった…村人たちは、始めは信じてくれなかったが、ついに、君のための祭りをしてくれるところまできたんだ。君を狩ろうとするものはもういないと思うから安心してね


これで一旦終わりじゃ。あとは昔話と内容がにているからそこはいいじゃろう。他にもあったはずなんじゃがきばみや寿命で読めなくってな…」

「狐はなんで姿を表さなかったの?」

「そうじゃな、もしかしたら狐はかみさまだったのかもしれんのう。村をひもじさから救ったから役目を終えて帰ったのかもしれんな」

「神様かぁ…」


その日の夜中みんなが寝たのを確認し、少女がいつもいた場所へと向かった。

なんとなくそこに少女がいるような気がしたから。

その場所につくと、月に照らされた少女がいた。

いつものようにこちらに気づく素振りはなく、なぜかそれは神秘的に見えた。

無意識に後ずさる。

パキッ

枝があることに気づかず踏んでしまった。

少女がこちらを驚いた表情で見ていた。

僕も驚いた拍子に少女と視線がぶつかる。

そして、少女がいつもと違うことに気がついた。

少女の耳は狐のような耳になり、尻尾までついていた。

「あっ、えっと…」

「えっと…」

沈黙が流れる。

それに耐えきれず僕は、声をかけた。

「次会うときでいいっていわれたんだけど、昔話の男について調べてきたんだ!聞いてくれる?」

まだ緊張しているのか早口になってしまった。

恥ずかしくなり顔が熱くなる。

その様子を見て少女は“ふふ“と笑った。

「ありがとう。聞かせてもらえる?」

「うん!」

祖父から聞いた話を少女に一生懸命伝えた。

話してる間、少女は懐かしいような、寂しいような、嬉しいような、そんな表情を時々見せていた。

話し終えると、少女は“ありがとう“と満面の笑みをみせてくれた。

「ねぇ、きみは、この事が全部狐のおかげだと思う?」

ふと、少女は訪ねた。

「うーん…僕は…違うんだと思う。」

「なんでそう思うの?」

「確かに狐が教えてくれなかったら村は助からなかったと思うんだ。でも、狐だけだと村を救うことはできないんじゃないかなって思ったんだ…」

「そうだね、じゃあ、この人は特別だったって思う?なんていうのかな、えっと、村を救う英雄みたいな人物っていうのかな」

「…わかんないけど、なんとなく違うような気がする。男の人はきっと自分ができることを探して、考えて、見つけて一生懸命頑張っているうちにそれが皆にわかってもらえたんだって思うよ」

「そっか」

少女はなぜか嬉しそうだった。

ふとその笑顔を見て、ある疑問を聞いてみたくなった。

「えっと、気になってることがあって、狐はどうして最後まで男の人に姿を表さなかったか君はわかる?」

「狐の気持ちね…それは、内緒かな?」

「えっ?」

がっくりとかたを落とす。

「そんなに落ち込まないで?じゃあ、ヒントをあげるね。答え合わせはできないけど、狐は、男の人と村人を救った英雄みたいなものだよね?」

「そうだね」

「なら、これからもっと辛い混乱が訪れたとき、狐がそのままそこにいたら村の人たちはどうすると思う?」

「頼っちゃうかも…でも頼っちゃダメなの?」

少女は少し悲しげな表情をした。

そして、人差し指を口に当てた。

「ここからは、あなたの想像に任せるね。これ以上のヒントはあげられないから、ここに来るときに聞かせてくれると嬉しいな」

「わかった」

「それとね、この姿見られちゃったから気づいちゃたかもしれないけど、私ねこの村の守り神なの。時々皆の様子を見に来るんだけど…君に見つかっちゃった」

少女は後ろを向いた。

「私たちは、見守る事が前提なの。あんましかかわりすぎると和を壊して争いに発展したり、いいことばかりではないから…」

スゥーと深呼吸をする。

「君との少しの時間楽しかったよ。君が見つけた大切なことを忘れないでね」

少女の身体が透けていく。

「あっ、ありがとう!僕休みになったら必ずここに来るよ!たくさんたくさん面白い話し伝えに来るから楽しみにしてね」

少女は、振り返り少年を見つめる。

そこには出会った時の曇った表情の少年はいなかった。

とっても生き生きしていて明るい姿の少年を見て微笑んだ。

(もう大丈夫だね。あなたの遠い遠い先であなたの思いを知ることができて、子孫を見ることごできて嬉しいな。ありがとう。ずっと忘れないでいてくれて…)

少年は、少女が消えた場所に古い祠があることがあるのに気づいた。そっと、少年は手を合わせた。


村から帰ってきて、家族との関係も少しずつ心地よいものになっていった。

祖父母には、たまにしかいけないから手紙を時々だしている。

そして、“学校“については、正直始めはうまく行かなくってくじけそうになることもあった。でも、少女との約束や、あの村での出来事のおかげで自分なりに頑張ることができた。

そして、

「おーい、一緒に勉強しよう」

「いいよー。えっと、どこでやろうか?」

「図書館でいいんじゃない?」

「そうしよう」

僕は、あれから少したち初めての友達ができた。

自分なりの方法で周りと接していくうちにいつの間にか仲良くなって気がつけば友達になっていた。

まだ、スラスラと会話したり自分の気持ちをうまく伝えることは難しいけど、少しずつできることが増えるといいなと思う。

これからも、辛いことや嫌なことがなくなるわけじゃない。でもその度に自分らしく方法を見つけ乗り越えていきたい。

そして君に楽しい話をたくさん用意するからまっててね。

少年は、あの日の思い出を大切に今日もマイペースに前に進む。


パタン

日記をつけ終えて、ふと、祠へと向かう。

あれから少女には会えないが、ここに来るとなんとなく少女が私の話を聞きにきているのではないかという気分になる。

私も結婚をし、子供もでき、その子達は成長し結婚し今は孫までいる。

あれから自分なの可能性を自分で見つけたり、時に誰かに教えられることもあった。それを伸ばしていくなか出会いもわかれもたくさん会った。時には後悔したこともある。嬉しかったことも楽しかったことも悲しかったこと、傷つくことだってあった。

それでも歩き続けた。辛すぎるときは、少し休みながら前を向いた。後ろを振り向くことはなかったとは言えないが、自分なりに歩んだ道だったと思う。

私と妻は身の回りのことが大分落ち着きこちらに引っ越してきた。

昔と比べ村の景色は変わってしまったがこの祠は相変わらずだ。

私は、あの日の約束を守ることができているだろうか?

君からはいろんなことを学んでもらってばかりだったから申し訳ない。

君は、私との出会いは、君にとっていいものだったのだろうか?

ザァー

突然強い風が吹いた。

風が落ち着いた頃私の足元に木の実が落ちていた。

木の実をよく見てみるとニッコリとしたかわいらしい顔が掘られていた。

それはなんとなく少女ににていた。

風が優しくほほを撫で“大丈夫だよ“と伝えているようだった。



おしまい

短編小説でごんぎつねをもとに書いてみました!

小説の感想、アドバイス、脱字や、文字の間違いなど指摘していただけると嬉しいです。


もう1つ違う小説で短編があり、そちらはファンタジー要素が強いのでよろしければ読んでくれると嬉しいです!(完結済み)

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― 新着の感想 ―
[良い点] ∀・)絵本のような雰囲気を持った作品でしたね。小学校の国語の教科書にのっているかのような。あとがきを読んで納得しました。なるほど、これは作者様の手の内に入りますね(笑)良いお話でした。 […
[良い点] とても心温まる話でした 狐さんがずっと一人で見守り続けていると知った時、とても切ない気持ちになりました ありがとうございました!
[良い点] あたたかくて力強いお話に、胸がじんとしました。 私も人と関わるのが苦手なので、余計にそう感じたのかもしれません。 二人のやりとりも昔の逸話も、とても良かったです。 読ませて頂き、ありがと…
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