第6話 困惑! 行く場所の無い猫娘はポイポイ出来ないの!
「あ、言葉、日本語分かる?」
わたしは、座り込んだままの猫娘の前にしゃがんだ。
猫娘は、恐怖で身体をこわばらせて震えながら、短剣を握ったままだ。
「だいじょーぶ。貴方には何もしないよ。ほら!」
わたしは、猫娘の前で変身を解き、両手を大きく広げた。
「メイ! 危ないわ!」
「おかーさん、大丈夫だって。この子さっきわたしの話聞いてくれたし、訳の分からないところに来たんだから怖くて当然だもん。なら、こっちに敵意が無いのを見せるのが一番でしょ!」
お母さんは心配するけど、わたしは気にしない。
わたしのカンでは、この子は大丈夫。
「メイ、お前の心に従え!」
「うん! おにーちゃん、ありがとー!」
お兄ちゃんは、わたしの方を見て頷いて応援をしてくれた。
……こうやって、いつもわたしの味方だから、おにーちゃん大好き!
「ねえ、貴方お名前は? 言葉分かるんだよね? さっき、わたしの話分かってたし」
わたしは、なおも笑顔で猫娘に話しかけた。
「らーら」
猫娘は、ぼそっと呟いた。
「え、ラーラって貴方のお名前?」
「うん」
猫娘は頷いた。
「そうなんだ。可愛いお名前だね、ラーラちゃん。わたしの名前はメイ。5月生まれだから英語の5月、Mayから決めたってお父さん言ってたの」
「めい? めいは、こわいひと?」
「ううん。わたしは戦うけど、それは皆を助けて悪いヤツラをぶっ飛ばすため。ラーラちゃんは悪い人?」
「ううん。らーら、わるくない」
「なら、だいじょーぶ。ラーラちゃんはわたしが守るの! だから、危ないから剣納めてね」
「うん」
わたしは、ラーラちゃんが短剣を鞘にしまうのを確認して、後に振り返る。
「ね、おかあさん! 大丈夫だったでしょ?」
「もー、この子ったら。とりあえず一件落着ね。さて、本部にどう説明しようかしら。この子、どこかで保護しなきゃいけないわよねぇ」
お母さんはやっと安心したのか、変身を解きスマホを操作し出した。
「えー、本部にラーラちゃん渡したら解剖されちゃうよぉー」
わたしは、急に怖い考えになってラーラちゃんを抱きしめた。
「なに? なに?」
ラーラちゃんは、いきなりわたしが抱きついたのでビックリしている。
……ラーラちゃんってすっごく柔らかいし、イイ匂いするのぉ!
「姉さん、流石に俺もこの子を本部のマッドなヤツラに渡すのは賛成できない」
お兄ちゃんも変身を解き、わたしの方へ歩み寄り、わたしとちょっとびっくり顔のラーラちゃんの頭を撫でてくれた。
「あらまあ、困ったわねぇ。そりゃ、わたくしも可愛い子を生贄にはしたくは無いわ。では、しばらくはわたくしの家で保護監禁という型を本部に提案しましょうか。本部にはアチラの人も居るし、流石に小さな女の子をいきなり渡せという事も無いでしょう。ウチから逃がさないという条件付なら、文句も言わせないわ」
お母さんから聞いた話では、わたしたちの装備は「向こう側」、レギーオの作られた世界の技術を応用したもの。
その開発には、向こうから亡命してきた技術者が関係しているらしいの。
「おかーさん、ありがとー! ラーラちゃん、良かったね。ウチで一緒に暮らせるの!」
「メイ、いっしょ?」
「うん、一緒よ!」
わたしは、ラーラちゃんをぎゅーっと抱っこした。
「しょうがない子達ね。じゃあ、わたし自動車をこっちにもって来るわね」
お母さんはそう言って再び変身をして、高く跳躍した。
「メイ、良かったな」
お兄ちゃんは、ぐいぐいとわたしの頭を撫でてくれる。
「うん!」
◆ ◇ ◆ ◇
「さあ、ここはコネの使いどころね。本部、さっきの会話聞いていたわよね。アンタ達は無害な女の子を捕まえて酷い目に合わすのかしら?」
タカコは飛翔中、本部へ連絡をしていた。
「そ、それは……。しかし、彼女は貴重な生体サンプルだ。向こうのヒト以外のサンプルは初めて。是非とも研究したい」
むすっとした男性の声が聞こえる。
「あら、向田さん。貴方、別れた奥様との間に娘さんいらっしゃったわよね。ラーラちゃん、娘さんと同じくらいの年頃よ。向田さんは、娘さんに自慢できるの? 娘さんと同じくらいの女の子を虐めて、最後に解剖したなんて」
「ぐ、ぐぅぅ。タカコさん、それは誤解だ! いくら私でも生きている子をいきなり解剖はしないぞ。せ、せめて血とかCTとかデータさえ取れたら……」
「あら、じゃあウチで保護して、メディカルチェック共々関係の医療機関へ連れて行けば済む話よね」
「……わ、分かった。しかし、神楽本部長は、それで納得するのかは知らんぞ」
「本部長、聞いていますわよね。多分、ラーラちゃんは『向こう側』の現住民族だと思われます。今まで未知だった『向こう側』の政治・生態状況とかも分かる可能性は十分ありますの」
一方的に話すタカコだが、本部からの返答は無い。
「ですから、ラーラちゃんには安心してお話しをしやすい環境にしてあげるのが情報収集の一番早道です。ですので、……」
「もういい。話は分かった。秋月の好きにしたら良い。お前こそ、姉夫婦を『向こう側』によって失ったはず。なのに、どうしてこうも甘いんだ!」
男の低くイラついた声が聞こえる。
「それはですね、本部長。わたくしは母親ですから。娘が信じる道をサポートするのが、当たり前ですもの。それに異世界人拾うの、わたくし二回目ですし」
「好きにしろ!」
ブツンと通信が切れた。
「神楽さんも、まだ引きずっていらっしゃるのね……」
タカコは、ため息をついて自分の軽自動車の横に着地した。
「後は、マナブさんにどう説明するかよね。猫の子拾いました、じゃ通じないわよね」
うふふ、とタカコは笑いながら変身を解き、運転席に座ってエンジンをスタートさせた。
「ウチに帰るまでに、皆で説明を考えましょうか」
なお、この後、帰宅したマナブは「またなのかい? ふぅ」と、ため息一つで納得をした。
「ほう、今回は色々伏線を仕込んでおるのじゃ! 先の展開が楽しみなのじゃ!」
読者目線での解説、ありがとうございます、チエちゃん。
「今回は、ワシ関係無いから、態々作者殿の脳内や設定書いてあるパソコンの中身まで覗きこまないだけなのじゃ! 純粋に読者するのじゃ!」
どうもありがとうございます。
後書きも対談風にすると纏めやすいので助かってます。
「うむなのじゃ! さあ、次回更新まで作者殿頑張るのじゃ! 皆の衆はブックマークなどして待っておるのじゃぞ」
では、明日をお楽しみに。