第5話 恐怖! 女の子を虐める怪物なんてポイポイしちゃうの!
「え、え――!!!! もしかして、異世界美少女なのぉ!!」
わたしは、助けた女の子を見て驚いた。
尻餅をついた女の子、彼女には猫耳があったからだ。
よくある頭頂にあるタイプじゃなくて、少し下側、やや横向きで少しへにょっとしている。
その下の頭髪はウェーブが緩く掛かったセミロング、猫耳と同じく黒に近い程濃い藍、いや濃い紫色だ。
瞳はエメラルドグリーン、だけど人間と同じ瞳孔に見える。
そして良く見ると、頭髪と同じ色の尻尾もあって八重歯っぽい小さな牙が見える、ちょっと垂れ眼の超絶美少女だ。
そしてコーカサスとかグルジア辺りっぽい民族衣装を身に纏っている。
あと、女の子の周囲が何かキラキラしているの。
……うん、わたしよりも大きいのぉ。見た感じ、わたしと同じか少し歳下くらいだけど、ヒトじゃないから判断出来ないよねぇ。
少女の豊かな胸の膨らみに、つい視線が行ってしまったわたしだけれども、戦闘中なのを思い出して、わたしは彼女を背後に庇った。
「あなた、言葉分かる? 分からなくてもいいから、そこを動かないでね」
わたしは、少女が頷いた気配を感じて、残る敵を睨む。
敵レギーオは、わたしが突然乱入してきたので、まだ混乱状態だ。
「ちぇーい!」
そこに、お兄ちゃんが空から舞い降りる。
上段の構えからの火炎を纏った斬撃は、蟹型レギーオを真っ二つに切断した。
「ふぅぅ。『烈火斬・飛燕』!」
お兄ちゃんは、着地後大きく息を付き、技名を呟いた。
……お兄ちゃんの技は、漢字っぽいネーミングだよね。わたしは、英語風。中二病とか言われそうだけど、わたし中1だもん!
本来、技名は言う必要は無い。
わたし達が使う武具は考えた事が、そのまま技となるからだ。
でも、技名を叫ぶ事でイメージがはっきりして技の効果が出やすいというのは、本部の研究結果。
「だから、別に中ニ病じゃないもん」
「おい、メイ。油断するなよ」
お兄ちゃんは、わたしの横へ来て、わたしを庇う様に残るトロールへ剣を向けた。
「うん!」
こういう、お兄ちゃんのさりげない優しさが、わたしは大好きだ。
「突撃技、『やまじ』!」
お母さんは、トロールよりも10m程離れたところに着地後、旋風を纏ってトロールに突撃をした。
「やまじ」とは、日本三大局地風のひとつ。
四国の瀬戸内側に吹く、高圧鉄塔をも薙ぎ倒す強風の事と、お母さんに聞いた。
お母さんは、その風の名前と同じく、トロールを激しく吹き飛ばした。
「ぐ、ぎゅるぅぅ。オ、オバエ、ダレヂュアァ!」
吹き飛ばされながらも、まだ死んでいないトロール型レギーオ、レギーオ特有の紅い単眼を光らせて何か唸りながら、立ち上がる。
「貴方に名乗る名など無いわ! 多くの命を奪う悪鬼共、わたくし達が殲滅します!」
お母さんは、高らかに宣言した。
「2人とも、支援を! 無理に近付かずに牽制を御願い。あーちゃんはタンクシフトで、メイは脚狙い!」
「了解!」
わたし達は、まだ元気いっぱいのトロール型に挑んだ。
「ぎ、ギジュア!」
お母さんは、風を太刀に纏わせてトロールに切りつける。
そしてお兄ちゃんは、お母さんに向かってトロールが振り下ろした斧を大剣で弾き、「切り落と」す。
……『切り落とし』って、剣道の技にもあるけど、相手の武器を本当に切るんじゃなくて、斜め方向から剣をぶつける事で、攻撃の軌道をずらす技なんだよね。
わたしは、部活中に横で竹刀を振るっていた顧問の先生の技を思い出す。
……わたしも、色んな技勉強しなきゃ!
「いっけー! 『|水撃・飛礫《ウォータースプラッシュ・ストーン』!」
わたしは射線を考えて回り込み、足元の地面に槍を突き刺して飛礫をトロールへと飛ばした。
その飛礫は水の属性を纏っていて、トロールの硬い肌に突き刺さる。
「ぐぅ!」
トロールは苦痛の声を上げた。
「へーんだぁ。今度は物理攻撃に属性付与だから効いたでしょ!」
「まあ、ギリギリ及第点かしら? でも、隙が作れたから十分よ。えい!」
お母さんは可愛い掛け声で、わたしの攻撃で怯んだトロールへと深く切りつける。
「メイ、やったな!」
お兄ちゃんも、火炎剣でトロールの腕に切りつけ、斧を持った右腕を切り飛ばした。
「でしょでしょ。でも、まだまだこんなものじゃないよ!」
わたしは、「水月斬」でトロールの左足膝裏に切りつけた。
「ぐ、ぐがぁぁぁ!」
立っていられなくなり膝を付き、右腕も失ったトロールは残った左腕を振り回す。
「そろそろ決めるわよ! わたくしが左腕切り飛ばすから、2人でトドメ御願い!」
「うん!」
お母さんはトロールの攻撃を掻い潜り、トロールの左側に回りこんで左下から右上へ切り上げた。
「はっ!」
「ぎゅえぇぇ!」
お母さんの一閃は、トロールの大木のような左腕を切り飛ばした。
「メイ、シンクロ技行くぞ!」
「うん、お兄ちゃん!」
わたしはお兄ちゃんの左側に立ち、槍先を天に向ける
お兄ちゃんも大剣を、わたしの槍に沿わせるように上に掲げる。
「シンクロ!」
お兄ちゃんが宣言する。
「「和音・爆裂!」」
わたしとお兄ちゃんは、ハモって技名を唱えた。
わたしの槍先から青い水のフィールドエネルギーが、お兄ちゃんの大剣から赤い炎のフィールドエネルギーが迸る。
そして2つの力は混ざり合い、わたし達の頭上で虹色の大きな太矢となった。
わたし達は、武器を振り下ろした。
「「発射!」」
そして2人の声が重なり、ボルトはトロールへ目掛けて発射された。
「ぎ!」
避ける事も出来ないトロールに虹色の矢は突き刺さり、激しい光を放った。
そして閃光が消え去った後、トロールの影も型も残っていなかった。
「よし! 合体技せーいこー!」
わたしは、お兄ちゃんとハイタッチをする。
普段無愛想なお兄ちゃんも、この時ばかりは嬉しそうにわたしの手に自分の手を合わせてくれた。
「貴方達、ちょっと後を考えて技を使いなさい。周囲酷い有様よ?」
お母さんが、わたしとお兄ちゃんの頭を軽く叩く。
「えー! あんなに強いヤツだもん。周囲に出来るだけ被害出さなきゃいいじゃん」
「あれは、少ない被害なのかしら?」
おかあさんが指差す先、工場のプラントらしいけど……
「あ、やっちゃった!」
「ごめん、姉さん!」
わたしたちは揃ってお母さんに頭を下げた。
なぜなら、わたしたちの攻撃はトロールをぶち抜いた後、後ろの工場の敷地半分くらいまで、5mくらいの幅で綺麗さっぱり消し飛ばしていたから。
「もうしょうがない子達ね。さて、あの子どうするの?」
お母さんの視線は、座り込んだままの猫少女に向かっている。
「あ、すっかり忘れてたの! おかあさん、どうしよう。わたし、あの子拾っていい?」
「面白い娘じゃの、メイ殿は。猫型とはいえ、女の子を拾っていいかとは!」
まあ、少しくらい変な女の子じゃないと、バケモノ退治なんてしていないですよ。
「それはそうじゃな。しかし、兄殿との合体技、実に面白いのじゃ。作者殿は、コラボ書いて戦隊系の技の研究が十分出来たのじゃな。うむうむなのじゃ」
少々派手にやった方が面白いですしね。
それに今回は刀剣アクションなので、技とか考えたり、実在の技研究したりで楽しいです。
「良きかな、良きかな。後は、これで沢山読者がついてくれたら嬉しいのじゃ。読者の方々、宜しく頼むのじゃ!」
では、明日の更新をお楽しみに。