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第29話 壊れる日常! わたしはみんなを守るから、敵なんてポイポイしちゃうの!

「じゃあ皆、明日から夏休みだからって夜更かしなんてするんじゃないぞ。それと、もう分かっていると思うが、緊急警報があったら所定の避難場所に逃げるように!」


 今日は1学期の終業日、担任の先生から夏休みの注意がされている。


 ……随分、異世界帝国がおとなしかったから、期末試験の勉強がはかどったのはラッキーだったけどね。成績は……、ま、まあクラス中頃ならだいじょーぶ、……なのかなぁ。


 夜間、敵来襲を警戒していて待機中にお母さん、お父さん、お兄ちゃんに勉強を見てもらったので、中間テストよりも期末テストの点数は良かった。


「休み明け、全員が無事に揃うのを楽しみにしているぞ! それでは、解散!」


 クラス内は、早速夏休みに遊びにいく子達の話で賑やかになる。


「メイちゃん! メイちゃんは、夏休み忙しいの?」


「うーん、あまり遠出は出来ないかなぁ。待機してなきゃだし」


「そ、そうだよねぇ、やっぱり。ごめんね、変な事聞いちゃって」


 カナエちゃんは、表情を暗くしちゃう。

 どうしたのだろうか、ずっとわたしに対して何か遠慮をしている気がする。


「カナエちゃん! 今日は何も無いから一緒に帰ろ!」


「う。うん。メイちゃん」


 わたしは、元気が無いカナエちゃんを心配になって、一緒に学校から帰った。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「最近、何か慌しいね」


 下校中の「はりま市」内は、沢山の自衛隊さんや警官さん達がいっぱいだ。

 おそらく帝国のターゲットがわたし達なので、はりま市内が戦場になるのを想定しているのだろう。


「う、うん」


 カナエちゃんは俯いたまま。


「カナエちゃん、一体何があったの? 最近おかしいよ。わたし心配なの。わたしで良かったら話し聞くし、力にもなるよ。これでもわたし、偉いヒトとコネあるから」


「メ、メイちゃん。わ、わたし、メイちゃんの事が心配なのぉ!」


 急に大声で泣き出すカナエちゃん。


「ど、どーしたのぉ! こ、ここ(道の上)じゃ何だから、近くの公園に行こ!」


 わたしは途中の自販機でジュースを2本買って、通学路の途中にある児童公園へ泣いているカナエちゃんを連れて行った。


「さあ、これ飲んで。一体どーしたの? わたし、何かやっちゃったの?」


「だ、だってぇぇ……」


 カナエちゃんは中々泣きやまない。

 わたしは、困ってしまう。

 そんな時、非情にも情報端末から国民保護法の警報音が鳴った。


「え、何!」


「あ、来ちゃった……。メイちゃん……」


 端末の画面には、レギーオの大量発生が表示されていた。

 それは全国5箇所、東京、名古屋、大阪、福岡、そして……。


「……やっぱり、ここが戦場になるのね」


 はりま市がレギーオの襲撃場所として表示されていた。

 なお、わたしの端末には別途テルミナスからの詳細情報が表示されている。

 どうやら、今居る場所と反対側の市街地に大型1体、中型8体、ゴブリン型十数体、そしてヒト型が1人現れた様だ。


 ……いよいよガンダルヴァと決戦ね。


「カナエちゃん、早く逃げよう」


「……! メイちゃん! こっち行こう!」


 カナエちゃんは俯いて泣いていた顔を上げて、わたしの手を取って走りだした。


「ちょ。カナエちゃん、そっちに避難シェルター無いよぉ……!」


「いいの! 誰にも見られない場所の方がメイちゃん都合がいいでしょ!」


 わたしは、カナエちゃんに引きづられて、路地裏へと連れ込まれた。


「一体、どーしたの、カナエちゃん?!」


「メイちゃん! メイちゃんがバルキリーちゃんなんだよね!」


 カナエちゃんは、どっちかというと愛嬌のある狸顔を真剣にしてわたしの顔を見た。


 ……えー! バレてるのぉ!!


 わたしは、どっと背中に汗をかいてしまう。


「ごめんね、メイちゃん。本当はこれから戦うメイちゃんにいう事じゃないんだろうけど、わたしメイちゃんが心配で心配で溜まらないのぉ」


 涙を溢しながら、わたしを見つめるカナエちゃん。


「わたし、気が付いちゃったの。メイちゃんの様子が怪我したくらいからずっとおかしかったから」


 ……いっぱい失言しちゃったものねぇ。


「まず、バルキリーちゃんが怪我したのと、メイちゃんが怪我したの同じ日だったの。そしてメイちゃん、まるでバルキリーちゃんみたいな事言うし、バルキリーちゃんの話題になると逃げるし……」


 ……あー、これはマズったのぉ。


「それとね、メイちゃんとバルキリーちゃんの体型全く同じだもん。わたし、これでもアパレル店の娘だよ。見ただけで3サイズ分かるもの」


 ……それで、わたしの水着姿をじっと見ていたんだ。


「それに、さっきも夏休み中、待機って言ったし」


 ……あ、トドメ言っちゃったよぉ。


「あ、あのね。……カナエちゃん、わ、わたし、わたし……」


 わたしは、今まで騙すようにしていた事が恥ずかしくなった。


 ……よし、まず謝ろう。


「「ごめんなさい!!」」


 わたし達、2人の謝る声がハモった。


「「え!!」」


 驚く声もハモった。


「「どうして……」」


 次の声もハモる。


「ちょ、まずカナエちゃんの話しから聞くの」


「メイちゃん、ありがと。ごめんね、メイちゃん。これから戦いに行く人に、こんな話ししちゃって」


 ぺこぺこと頭を下げるカナエちゃん。

 とりあえず涙が止まったのは良かった。


「ううん、良いの。わたしこそ、ごめんね、今まで騙すような事をしてて」


「それはしょうがないよ。だって、今でもバルキリーちゃん人気でメイちゃん、大変でしょ。その上にマスコミや敵に正体ばれたら危ないよ」


「敵には多分バレているから、そっちは問題ないよ。マスコミはちょっと怖いかな」


 わたしは苦笑して、わたしと同じくらいの背丈のカナエちゃんの頭をナデナデした。


「メイちゃんは、戦うの怖く無いの?」


「うーん、怖く無いって言ったら嘘かな? でもね、せっかく戦う力があって皆を守れるのなら、守れなかった方がイヤかな? わたし、別に立派な事したいと思っているんじゃないんだ。誰か助けられたら嬉しいし、守りたいと思っているから戦うの。ただの自己満足だよ?」


「えー! それって立派だもん。わたしなら、怖いほうが先にきちゃうよぉ」


 確かに普通の女の子は戦うのが怖いだろう。


 ……わたし、ふつーじゃないもん。ぐすん。


「それに、お母さんやお兄ちゃんも一緒だしね」


「あ、そうか。お兄さんとラブラブだもんね」


 いきなり笑顔になって、わたしのわき腹を肘でエイエイし出すカナエちゃん。


「あ、あのね、カナエちゃん。わたし達って従兄だよ!」


「従兄とは結婚できるよね、うふふ。バルキリーちゃんは恋する乙女だったんだぁ」


 一気に話しが変な方向にいっちゃう。


「わたし分かったの、メイちゃん。メイちゃんは、大好きな人を守りたいんだね」


「うん! その大好きな人には、もちろんカナエちゃんも入っているからね!」


「ありがとー!」


 わたしに抱きついてくるカナエちゃん。


 ……ラーラちゃんほどじゃないけど、柔らかいし良い匂いなのぉ! わたし、最近百合なのかなぁ?


「じゃあ、カナエちゃん。悪いけど、そろそろわたしは行くね!」


「うん、メイちゃん。武運長久だよ! 絶対元気に帰ってきてよ! 夏休み遊ぶ計画あるんだからね!」


「うん、ぜーったい!!!」


 わたしは変身ペンダントを取り出した。


「じゃあ、カナエちゃんにファンサービス。変身シーン見せちゃうね! 変身(ムーターティオ)!!」


 わたしは青いバトルスーツ姿、バルキリーちゃんに変身した。


「か、か、かっこいい!!」


「でしょでしょ! じゃあ、カナエちゃん。いってきます!!」


「いってらっしゃい!」


 わたしは、大きく手を振るカナエちゃんに軽く手を振って、路地裏から高く跳躍した。

 そして戦場目掛けて、大きく空を駆けた。

「とうとう大規模侵攻が開始されたのじゃな。しかし、カナエ殿は随分と我慢しておったのじゃな。友達思いの良い子なのじゃ!」


 ええ、分かっていて黙っているのは苦しかったでしょうけど、メイちゃんが困るのも分かっていたのでしょう。

 ただ、しばらくメイちゃんに会えないとなって、堰が切れちゃったのかも。


「メイ殿も良い子なのじゃ。嘘も方便、必要のある嘘だったのを一番に謝るのじゃからな」


 お人好しで困った人を見るのがイヤなメイちゃんらしいかと。


「うむなのじゃ! さあ、メイ殿達の戦いを見せてもらうのじゃ。出来れば助っ人行きたいのじゃか、辛抱するのじゃ。まあ、裏技もあるしのぉ」


 チエちゃん、物語を壊すのだけは勘弁してくださいませ。


「ワシはご都合主義の権化なのじゃ! 好きにするのじゃ! じゃが、作者殿を困らせては困るから手加減はするのじゃ。では、明日の更新までに、読者の方々はブックマークなどで応援頼むのじゃ!」

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