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第26話 怒涛! ファンクラブ創設なんて、ポイポイしちゃいたいの!

 時間は遡り、金曜日の朝。

 対異界災害対策局内の小会議室に、ある男性が閉じ込められている。

 彼は、木曜日夜にネット上にメイ達が戦う様子を公開してしまった。

 その動画は瞬く間に世界中へ拡散、話題になってしまった。

 この事態を重く見た対策局は警察と協力し、金曜日未明に男性宅を強襲、パソコン共々彼を確保したのだ。


「お、俺は一体どうなるんですか?」


 顔を真っ青にした彼、杉谷(すぎたに) (まさる)

 29歳、独身、都内某ソフトハウス社員である。


「そうだね、そこは君の反省と今後の行動次第かな?」


 神楽(かぐら)本部長は、眼の下を真っ黒にして、マサルを睨む。

 本部長は、今回の対応で一睡も出来なかった。

 首相の会見原稿のチェック、公開情報の吟味、マスコミ対策などなど。

 その原因を作ってくれたマサルを恨んでいてももおかしくはない。


「今回、君が起こした動画拡散で世界は騒然となってしまった。一歩間違えばパニックにもなりかねない。更に被写体である少女達の身を危険に晒している」


 本部長は、じっとりとした眼でマサルを見る。

 まるで蛇がカエルを見るかのように。


「ひぃ!」


 本部長の視線と話に恐怖するマサル。

 今更ながら自分がしてしまった罪の大きさを実感してしまった。


「と言っても、今回の事で具体的に君を罰する法律は無い。動画は友人から直接貰ったとの事だし、動画撮影も遠景からで違法性は全く無い」


 恐怖に震えるマサルを一端落ち着かせるように、本部長は一端表情を和らげる。


「なら、どうして俺を監禁して……」


「ん? 我々は君を監禁したのではないよ、保護をしたのさ。このままでは海外エージェントや異世界から狙われるからね」


 宥めつつ、新たなプレッシャーをマサルにかける本部長。


「じゃ、じゃあ、俺はどうしたら……」


「ああ、そこが問題なのさ。君には2つ、いや3つの選択肢がある。どちらも君の身柄は保護しよう。まあ、自由は一部失われるがな」


 ニヤリと意地悪く笑う本部長、ここぞとばかりに怒りをマサルにぶつける。


「まず、一つ。素直に警察に今回の騒動をおこしたと自首した形になって、拘置所でしばらく過ごす。監視つきだけど3食の心配は無いな」


 ひぃという顔をするマサル。

 自分の睡眠を奪ったバツでいい気味だと、本部長は嘲笑する。


「次は、政府の科学調査員の一員として南氷洋でのクジラ捕獲調査船団への出向、もしくは南極観測隊へ合流して、しばらくほとぼりを冷ます。ちゃんと給料も出すし、衣食住の心配は無いよ。流石にレギーオやマスコミも南極までは行かないしね」


 更にひぃぃと顔を青くするマサル。

 本部長、実は元々科学畑の人で、本当なら自分が研究者として南極に行きたい口なのだ。


「ちょ、両方とも酷いじゃないですかぁ?」


「あれ、君のせいでどれだけ沢山の人が困ったと思うのかな?金額的にも膨大な損害が発生しているけど、それを支払えるとでも? 南極行きでも給与を奪わない分良心的だとは思うよ。もしかして遠洋マグロ漁船の方が良かったのかい? そっちは民間になるから、今から連絡しないと無理だけど?」


 とことんマサルを虐める本部長。


「あ、あと一つは、何ですか?」


「よく聞いてくれた。これをやってくれるのなら、君は今まで通り暮らしてもいい。警護も付けよう。君には、政府公民のファンクラブを設立してほしいのさ」


「えぇぇぇ!?」


  ◆ ◇ ◆ ◇


「もー、誰がファンクラブなんて作っていいって言ったのよぉ!」


 わたしは、ファンクラブの公式サイトを見てぷんぷんしている。


「これ、めい? かっこいい!」


 ラーラちゃんは、サイト内のわたしの活躍する動画を見て褒めてくれる。


 ……そういえば、ラーラちゃんはガンダルヴァ戦を知らないんだね。


「ありがと、ラーラちゃん。コイツがラーラちゃんのお父様を殺したガンダルヴァなの。わたし達に負けて、ししょーに酷くやられたから、当分はこっち来ないと思うけど……」


「わたし、かたきうち、じぶんでする。でも、めいのからだ、もっとだいじ!」


 ラーラちゃんはわたしの両手を自分の両手で覆うようにして握ってくれる。


 ……ラーラちゃんの手、温かいの。


「ラーラちゃん、心配させてごめんね。今度、こいつ来たら、ギッタンギッタンにして土下座させるから、ラーラちゃんは上から頭踏んづけたらいいの!」


「うん、ありがと!」


「メイ、それって生け捕りにするってことだぞ。普通に倒すよりも難しい気がするんだけど?」


 お兄ちゃんは、わたしの頭を撫でながら、問題点を指摘してくれた。


「あ! 確かにそーだよね、おにーちゃん。後は成り行きでいきましょ! どっちにしろ決着はつけないとだしね」


 ……今度、ガンダルヴァと会うときは、最終決戦の時って気がするの。


「もう、メイったら。しょうがないから、わたくしは最大限サポートするわね。アイツは、もっと虐めたいし……。うふふ」


 お母さんが悪い笑顔をして呟くのを見て、わたしはガンダルヴァの不幸を思った。


 ……まあ、自業自得だよね。


 なお、後からお母さん経由で本部長の説明を聞いたけど、わたしのアイドル化計画は、わたしを守る為に行ったとの事で、公式ファンクラブサイトは、映像を拡散した人への罰及び生贄として作ったんだって。


 まずはファンクラブを民間に作らせて、国民の間にわたし達への応援する気持ちを持ってもらうためなんだそうな。

 そして、敵の大規模侵攻時に、皆に安全に避難してもらう様にファンサイトからも案内するんだって。


 ……それにしても、一切相談無しにアイドル化は、はずかしーよぉ! これ、わたしの正体バレたら、戦っている事よりもアイドルって見られる方が、ぜーったい恥ずかしいと思うのぉ。

「メイ殿、すっかりアイドルなのじゃ! 秘密の変身アイドルなのじゃ! 歌って踊れたら、古典魔法少女アイドルのマミ殿じゃな」


 まあ、流石に歌までは歌わない……はづですぅ。


「なるほど、この先の展開次第ではアリなのじゃな。それはそれで面白いのじゃ! しかし、ラーラ殿は偉いのじゃ。自らの復讐よりもメイ殿が傷付くのを心配しているのじゃから」


 ええ、ラーラちゃんは、本当にいい子。

 復讐を忘れてはいませんが、それ以上に今自分を大事にしてくれているメイちゃん達を大事に思っていますからね。


 ということで、明日の更新をお楽しみに!

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