第25話 驚愕! わたし、一晩でアイドルになっちゃう! ファンはポイポイ出来ないのぉ!
「レギーオを倒せる武具と幼少者を戦わせている事についてお答えします」
まだテレビでの首相会見は続いている。
「わたし達の事、どこまでいうんだろーな?」
「俺やメイは未成年だから、流石に正体までは公表しないさ。姉さんに関してはなんともだけど……」
「あら、わたくしがバレたらすぐに貴方達の事も分かるわ。それにテロ対策もあるから、誰の事も身元は明かさないわよ」
神楽本部長の説明は続く。
……わたし、このオジサンちょっと怖いから、あんまり好きじゃないの。でも、おかーさんとはずっと一緒だったし、大丈夫だよね。
◆ ◇ ◆ ◇
「まず、レギーオに対してどうして通常兵器では効果が薄いかから、ご説明します。彼らは異界技術から作られたロボットの一種ですが、その身体の周囲を防御フィールドで覆っています。このフィールドは一種の次元断層、こちらからの干渉の大半を無効化させてしまいます。なので、ヒトと同じサイズのレギーオ一体を倒すのには、アメリカみたいに戦車砲を持ち出す必要があった訳です」
わたしもなんとなくは知っていたけど、フィールドの力が次元断層、様は異世界というのまでは知らなかった。
……だから、普通の拳銃とかじゃ中まで通らなかったんだね。
「そこで、対抗すべくわたしたちテルミナスでは、異界の技術の一端、フィールド発生技術を手に入れることに成功しました。どうやって入手したかは、国家機密にもなりますので、今回は説明しません。ただ、技術及び利用方法は国連を通じて、各国へ送りました」
……まさか、開発元が異世界へ行った日本人で、亡命してきた人から教えてもらったとは言えないよね。それこそ、国際問題になっちゃうもん。
「異界技術ですが、まだ未解明の部分も多く、剣や槍などの武具の形、そして防具として使うのがやっとです。フィールドを武具や防具に纏わせることで、レギーオのフィールドを打ち破ったり、逆にレギーオの攻撃を防ぐ事が出来ます。つまりフィールドの同士の相互干渉で、こちらのフィールドの強さが敵を上回れば勝てます」
……そう言われれば、身も蓋も無いの。
「このフィールドですが、発生させる原理が未解析で、今使用できるものは、使い手の個人的才能に大きく影響されます。つまり、使い手によってフィールドの強さが異なります」
……誰でも使えるのなら、戦車や兵士さんにも使ってもらえるものね。
「更に弾丸へフィールド発生機能を持たせるのは難しく、まず大型砲弾への導入を研究中です。他の遠距離火器では弓矢になんとか実装可能という状態で、どうしても接近戦用武具が主体になっています」
……こうやって聞けば、わたし達がなんとかしなきゃならないのは良く分かるの。
「という事で、現在、対レギーオに使えるフィールド武器は、特定の個人用のみが実戦レベルにある状態なのです。これが、未成年者を実戦に投入している理由でもあります」
本部長は、心苦しそうにカメラに向けて訴える。
……わたしが戦いやすい様に説明してくれているんだ。
「今、戦っている方々は、我々が個人的ネットワークで探した方、そしてその方々の血縁者が大半です。フィールドを扱う才能ですが、遺伝性がある事までは分かっています。少女も血縁者が才能持ちだったので、スカウトしました。以上で、説明を終わります」
「つまり、我々は生き延びる為に、その幼い少女を生贄にして、異界の侵略と戦わせているのでしょうか? 私にはそう聞こえましたが」
新聞記者、高津という人は本部長へ掴みかかる勢いで質問をする。
……わたし、別に生贄のつもり無いよ。だって、せっかくみんなを守れる力があるんだから、守りたいもん。
わたしは、別に義務だけで戦っている訳では無いし、皆を守りたいから戦っているだけ。
逆に知らないところで誰かが泣いているのを知ってしまったら、そっちの方が安心できない。
手が届く範囲くらい、見える範囲くらい、誰にも悲しんでほしくない。
自分が安心して日常を楽しみたいから、戦うのだ。
……それに、おにーちゃんをほっとけないもん!
わたしの脳裏に、昔小学生のお兄ちゃんがお母さんに、両親の敵討ちで戦いたいと言った時の事を思い出していた。
「私は、貴方が指摘している少女とは話した事がありますが、彼女は『守りたいから戦う』と言ってくれました。確かに彼女は、ある意味生贄です。彼女の力無くしては恐らく我々が異界の侵略に勝つ事は不可能でしょう。ですので、銃後の我々は彼女が戦いやすく、生き残れる様にするだけです」
「ひぇぇぇぇ! 本部長、わたしを買いかぶりすぎだよぉ!」
「確かにメイは、俺が見守っていないとナニやるか分からないからなぁ。そんなに立派じゃないさ」
「おにーちゃん! わたし、そんなにフラフラしていないもん!」
本部長に褒めてもらって、私は嬉しいのと恥ずかしいのが半分半分だ。
……おにーちゃんの方が心配だよぉ。口では敵討ちは関係ないって言っているけど、わたしが見ても無理しているもん。
「あれ、でもわたし本部長に戦う理由なんて言った事あったっけ?」
「あ、あれはわたくしが言ったの。多分メイはこう思っているわってね。間違いじゃないでしょ?」
「うん! わたしは皆と一緒に普通の暮らし、したいだけだもん!」
本部長が新聞記者を言い負かした後も、質問は続く。
「さすが、神楽さんね。上手く質問方向を変えたわ」
「え、もしかして何かやったの?」
「質問を最初にした記者さんは、神楽さんのお抱えよ。仕込みしたのね。メイの事を聞いたのも予定通りでしょ」
……オトナ、ずるいのぉ!
「なるほどね、メイを生贄、高貴な戦乙女として神聖化する事で、逆にメイを守る形にしたんだね。そして他の戦う隊員の方々について聞かれない様にしたんだろうね」」
「おとーさんまで、わたしを持ち上げないでぇ!」
「でも、もうメイのファンクラブも出来ていたぞ。それも政府公認の。すっかりアイドルだな」
「うっそ――――!!」
わたしは、お兄ちゃんに情報端末を見せてもらい、わたし、「ロリっ子バルキリー」のファンクラブのサイトを見た。
確かに政府、国家公安委員会からのリンクも張られていて、今回の会見で使われた映像、写真が載っている。
「それも多分神楽さんの仕込みね。メイ、正体がばれないように頑張りなさいね」
「え――――!!」
「めい、あいどる?」
一夜にしてアイドルになったわたしの運命は、どこに行くんだろうか?
「ほう、メイ殿を神聖化して守るとは、神楽殿は策士なのじゃ!」
動画を拡散されてしまっては、もうどうしようも無いですからね。
なら、せっかく可愛いメイちゃんが被写体。
彼女を戦うアイドルとして神聖化してしまえば、ファンも出来て、メイちゃん個人を酷く言う事も少なくなるでしょう。
それに秘密のアイドルって方が神秘性も上がって、効果抜群。
「因みに、このネタは作者殿は何処から思いついたのじゃ?」
何処からでしょうか?
なんとなく脳内でプロット考えていたら思いつきました。
古今東西、戦うアイドルって多いですもの。
「ふむぅ、ワシもこの方向性があったのかもなのじゃ!」
チエちゃんは、もう信仰対象でしょ?
これ以上ファンという名の信者増やしますか?
「それは、勘弁なのじゃ! ワシ、信仰されたらこそばゆくて恥ずかしいのじゃ!!」
物語は、徐々に大規模侵攻へと近付きます。
では、明日の更新をお楽しみに。
「読者の皆の衆、応援を頼むのじゃ!!」