第23話 驚き! わたしは、萌えアイドルなんてポイポイしちゃいたいの!
迫る異世界帝国の魔の手、それを知ってか知らずか、ネット上では帝国の尖兵、レギーオについて、そしてレギーオと戦う戦士について話題となっていた。
マスコミには、レギーオについて、そてメイ達が所属する対異界災害対策局の存在は公表されていたものの、誰がそこで戦っているのかは、もちろん秘密であった。
レギーオについても、彼らが人造の兵士である事等は秘匿されており、ましてや同じ元地球人が操っている等は公開すれば大問題になろう。
世界各国でもレギーオの脅威は発生しており、中でも被害が一番多く発生している日本の動向には注目されていた。
◆ ◇ ◆ ◇
【異界からの恐怖】異界生物との戦いPart.32
1:名無しのゴンベ
このスレッドは、世界各地で発生している異界生物「レギーオ」について、そして彼らと戦っている人たちについて議論しましょう。
※不確定情報、戦っている人の個人情報は書き込まないようにしましょう。
15:名無しのゴンベ
マスゴミは、俺達に何も教えてくれないぞ。
どうやら、最近西日本で被害が続出らしいじゃねぇか?
21:名無しのゴンベ
パニックになるのを警戒してんでしょ?
警察どころか自衛隊でも相手厳しいんじゃない?
32:名無しのゴンベ
アメリカの方じゃ、戦車とかA10を街中に投入したって動画が上がってたぞ!
48:名無しのゴンベ
ガトリング砲ばんざーい!
57:名無しのゴンベ
バルカン砲って言わないのはヨシ!
120:名無しのゴンベ
オレ、知り合いからこんな動画貰ったけど、大変だぞ!
***.mp4
168:名無しのゴンベ
>>120
こりゃすげぇぞ!
映っているのは姫路市内じゃねぇか!
もしかして、このあいだ湾岸沿いで爆発事故が起きたってのは、これだったのかよぉ!
184:名無しのゴンベ
>>120
なんだ、あれ!
あんなのと戦っていたのかよぉ
すっげぇ
253:名無しのゴンベ
>>120
最後の、ヒトじゃねぇかぁ!
斧持って暴れているんじゃないかよぉ
352:名無しのゴンベ
>>253
それより、斧使いと戦っているの、女の子じゃねぇ?
身長低いし、手足は細いし胸も……
382:名無しのゴンベ
おにゃのこ、萌え
450:名無しのゴンベ
ロリっこ、萌え。
貧乳バンザイ!
620:名無しのゴンベ
おにゃのこ、お姉さん、おとこのこ、3人パーティだね
槍、日本刀、グレソなんてロマン装備
721:名無しのゴンベ
こりゃ、政府が内緒にするのも当たり前だな
あんなのが侵略してくるのが表ざたになったら、パニックだぞ
>>120
こんな映像、ネットに流したらオマエ捕まるぞ
812:120
>>350
オレ、あぶないの?
ん、こんな時間に誰だ? 宅配もピザも頼んでいないぞ?
911:名無しのゴンベ
>>120
あ、オワタ
マジ、大変じゃね?
932:120
オワ
978:名無しのゴンベ
おい、120!
本当にオワタなのかよ?
じゃ、このスレに居る俺達マズイんじゃねぇか?
姫路市で発生したガンダルヴァとメイ達の戦闘映像、姫路市内からの望遠撮影だったものの、それは姿形、男女くらいが分かるものであった。
そして、それは深夜のネット上を高速で拡散されていった。
◆ ◇ ◆ ◇
「本部長、深夜申し訳ありません。問題の映像を公開したバカ、先ほど捕まえました。どうしますか?」
「そうだな、今更拡散してしまった映像は消せない。そして秋月親子の姿も遠景ながら知られてしまった。こうなれば、明日にでも政府には、公開可能な情報を発表してもらおう。バカについては、情報の出所を吐いてもらってから、処遇を考えようか」
午前2時、緊急で呼ばれた神楽本部長は渋い顔だ。
近日中に帝国の強襲が考えられる現在、国民がパニックになる事だけは絶対に避けなくてはならない。
「なら、これを期に大規模侵攻時には国民保護法の運用をしやすいように法改正をしてもらうか……」
眼の下の隈を酷くしながらも、神楽は対策を考えた。
◆ ◇ ◆ ◇
「メイ、コレ見てみろ。オマエ、一晩ですっかりアイドルになっているぞ!」
朝一番、お兄ちゃんはわたしに情報端末を見せてくれた。
そこには、姫路でわたし達とガンダルヴァが戦っている映像が映っていて、SNSや匿名掲示板では、わたしの事を「ロリっ子バルキリー」ってアイドルっぽく話題にしていた。
「え――――――!! ナニ、これぇぇぇぇ!!」
早朝の我が家に、わたしの悲鳴が広がった。
……戦乙女でアイドル扱いは嬉しいけど、ロリっこだの、おにゃのこだの、貧乳萌えだのってのは、どーいうことなのぉぉぉ! わたしだって好き好んで胸小さいんじゃないもん!!!!
「あらあら。これは困ったわねぇ。本部からもメールが来ているし、今後大変だわぁ」
「めい、どしたの?」
お母さんは胸を強調するようにして腕組みをする。
そしてラーラちゃんは、わたしを心配してくっつくけど、ラーラちゃんの豊かなお胸も当然の様に一緒にわたしにくっつく。
……2人とも、わたしに大きなお胸、見せ付けないでぇ!!!!
◆ ◇ ◆ ◇
なお、学校でも「ロリっ子バルキリー」の事は話題沸騰。
比較的近所での事件だっただけに、誰が正体なのか注目されていた。
「メイちゃん、ネットの動画見た?」
「カナエちゃん、あの『バルキリー』って子の事?」
「うん。見た感じ、わたし達と同世代っぽいんだよね。凄い槍捌きしていたし、動きがどこか可愛いよね。メイちゃんは、薙刀使うから興味あるんじゃない?」
親友のカナエちゃんから、ズバリな質問が飛んでくる。
……興味無いとは言えないし、あるって言うと根掘り葉掘り聞かれるからボロ出しちゃいそう。どーしよう。
「うん、確かに凄いよね。でも、あんな映像何処で入手したんだろう? どーみても遠いところからの隠し撮りだし」
「なんか、映像をネットに流した人は警察に逮捕されたんだって。朝のニュースだと、その事で今晩総理大臣から話があるそうだけど……」
わたしは、上手く話題の方向をずらした。
……カナエちゃん、ゴメンね。貴方を巻き込みたくないし、それ以前にわたし、とーっても恥ずかしいのぉ。
学校に行く前に見たテレビ、どの局もわたしの戦う姿を拡大して写すばかり。
どーやら男が戦うところよりも、女の子が戦う姿の方が華があるとか、コメンテーターが言っていた。
……でも、どの局もわたしの体型見て、幼い少女だって言うの辞めてほしいのぉ。特に胸の大きさに注目するテレビ局なんて、だーいきらーい!!
「ほう、とうとう戦闘映像がネットに流れてしもうたかや。一端放流されたデータは、もはや削除は不可能なのじゃ。まあ、時間の問題であったろうがなぁ」
誰もがネット配信可能な現代、情報拡散が早いのも当たり前。
そして不適切な内容を配信する愚か者や配信中に亡くなる方が多いのも昨今。
「配信中に火災になったものや、富士山から滑落したものもおったのぉ。御嶽山の噴火犠牲者にも所有スマホから噴火の映像が残っておったとも聞くのじゃ!」
ええ、チエちゃん。
今、どういう状況なのか、そしてその情報は流して良いものなのかどうなのか。
よく考えた行動が必要ですね。
「俗に言うバカッターじゃな。ワシはSNSを使った高度情報収集システムを組んだのじゃが、誰しもバカッターして炎上する危険性を秘めておるのじゃ。作者殿も気をつけるのじゃぞ」
はい、気をつけますです。
今回で2020年の更新はおしまいです。
明日、新年もいつもどおり正午更新しますので、宜しく御願いしますね。