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第22話 暗黒! 帝国の酷さにわたしは、ポイポイしちゃいたいの!

「これで手術の準備出来ましたよ、ガンダルヴァ。次、貴方が目覚めた時、最強の戦士になっているのです」


 カルラは、液体に満たされたベットに深く眠るガンダルヴァを見下す。


「では、マイクロマシン投薬。体内に定着次第、大型レギーオとガンダルヴァを接続します」


「はい!」


 カルラは手術を行う医師団に指示をした。

 そして思いだす、今までに自分が受けてきた迫害の数々を。


  ◆ ◇ ◆ ◇


 カルラは異世界から転移してきた純血貧乏貴族を父に、下働きだった現地ヒト族を母として生まれた。

 俗に言う「お手付き」という事だ。

 カルラの父には正妻が居たものの、男子が生まれなかった。

 そして、妾を作るほど裕福でなかったカルラの父は、カルラを自らの子として認知し、幼い頃に母から奪い取った。


 幼いカルラは、冷酷な父の元、一般教養・帝王学・作法・武術・秘術・科学などを厳しく教えられた。

 カルラには、遺跡由来の器具を利用した秘術を使う才能があり、貴族が通う学校では、殆どの科目でトップクラスの成績を残した。


 しかし、母親ゆずりのカルラの朱色の髪、そして緋色の眼は、黒髪、黒目が大半の帝国貴族の中では浮いた。

 薄汚い混ざり物と呼ばれ、陰口を沢山言われた。

 中には、後に同僚となったガンダルヴァの様に、カルラに直接手を出し暴力を振るう(やから)も多かった。


 そんな中でもカルラは、着々と実力をつけてゆき、のし上がっていった。

 そして帝国の軍団長である28部衆の一人にも選ばれた。

 カルラの名も、その時皇帝から授かった名前だ。


「ガンダルヴァのヤツ、私が同僚になったらすっかり今までの態度を変えて、私の『力』を利用しようと擦り寄ってくるなんて……」


 手術中のガンダルヴァを憎しみの目で見るカルラ。


「オマエには、存分に私の『武器』として戦ってもらいます。簡単には死なせないですよ。うふふ」


 カルラは冷たい眼で、ヒトから機械兵士へと生まれ変わっていくガンダルヴァを見ていた。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「ししょー、まだ早く動くのは無茶ですよぉ!」


「メイちゃん。そうは言うけど、そろそろ動かなきゃ、身体がなまるよ。タダでさえ、老人は骨折から寝たきりになるんだし?」


 わたしは、師匠のリハビリのお手伝いをしている。

 師匠と話すのは楽しいし、時々武術のコツも教えてくれる。


「でも、ここで傷が悪化したら大変だもん」


「ししょー、むり、だめ!」


 わたしだけでなく、一緒にお手伝いをしているラーラちゃんも可愛い顔をちょっと怖くして、師匠を叱る。


「しょうがないなぁ。メイちゃんとラーラちゃん、両方から頼まれちゃったら、イヤとは言えないよぉ」


 師匠は、歩行訓練を休んでどかっと座る。

 妙に汗をかいているから、痛くても無理してるんじゃないかと心配なの。


「朝霧さん、無理しなくても良いんですよ。敵と戦うのは、本来わたくし達の役目。現役引退した朝霧さんまで戦う必要は無いんです」


「ああ。俺もいるから、師匠はゆっくりご隠居したらいい」


 お母さんとお兄ちゃんは、師匠の事が心配で休めと言う。


「あのね、幼い女の子を戦わせておいて自分だけ銃後で見守るってのは、ボクはイヤだな。せめて後方支援とかやりたいよぉ」


 師匠は、わたしとラーラちゃんの頭を撫でて、自分に出来る事をしたいと言う。


 ……ししょーの手、お兄ちゃんよりも小さいけど、とっても温かいの! ししょー、大好き! わたしも自分が出来る事やらなきゃって思うし。


「はいはい。分かりましたから、今日のリハビリはここまでにして下さい。続きは明日ね。わたくし達は来ないから、無茶しちゃダメですよ?」


「タカコさん、まるでボクの奥さんみたいだね。分かったよ。無理はしない。その代わり、早く治して今度大規模侵攻があったら、ボクも参戦するからね」


「あ、朝霧さん! わたくし、そんなに歳くってませんですわ!」


 お母さんと師匠の愛ある師弟漫才に笑ってしまうわたし達。

 こんな幸せな関係、絶対壊しちゃダメなの。

 多分、次に敵が動く時は大規模だと思う。

 ガンダルヴァも今度こそ、わたし達の命を狙ってくる。

 絶対に負けられない戦い、わたしは師匠の笑顔を見ながら、心に必勝を誓った。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「タカコくん、今後の事で本部で作戦会議が行われる。秘匿回線でネット会議をするから、参加してくれ」


 タカコは、技術開発主任の向田(むこうだ)から連絡を受け、自宅のPCを起動した。


「急な話になってすまない。今回、どうしてもお互いで情報共有をしなくてはならない事態が起きている。現場の情報を教えてもらえないか?」


 画面の向こうの向田、いつもよりも顔色が悪い。

 他の幹部達も、画面越しに疲れが見える。

 更に本部長の神楽(かぐら)に到れば、蒼白だ。


「秋月、お互いに言いたい事はあるだろう。しかし、原状はそういう事を言っている暇は無い。なんとかして、異世界からの侵攻を停めなくてはならないのだ」


「本部長。わたくしも、同じ意見ですわ。絶対、地球を、そして身近な人々を守らなくてはなりませんもの」


 タカコは苦笑しつつも、神楽に話しかけた。


「現場には無理ばかり言って申し訳ない。さて、今回秋月を呼んだのは他でもない。異世界帝国が直接ヒトをこちらに送りつけ、戦闘になった。これは異例な事態、それも2回も発生している。その両方とも秋月が深く関係している。是非とも何が起こっているのか、教えて欲しい」


 神楽は、普段の慇懃な態度を改め、タカコに頭を下げた。


「本部長! 頭をお上げ下さい。本部長が国との折衝をしてくださっていますから、わたくし達現場は戦えるのです。では、文書では報告済みですが、最初からお話しします。最初に起こったのは、異世界人少女、ラーラ・ファビウスとの邂逅、そこからすべては始まります……」

「戦闘前の静けさなのじゃ。これは大規模な侵攻が考えられるのじゃ! テルミナスでは、戦力を集中運用は出来ても広範囲には対応出来まい。自衛隊や警察の装備では、レギーオとやらの相手は難しいしのぉ。ワシ、応援に行きたいのじゃ!」


 チエちゃん、それは平にご容赦を。

 チエちゃんには、必ず新たな出番をどこかで作りますから、今回の出陣はご勘弁を。


「ふむぅ。作者殿に土下座されては、しょうがないのじゃ! 約束じゃぞ。ワシ、悪党共をふっ飛ばしたいのじゃ!」


 そういえば、リーヤさんの話でチエちゃん、何か暗躍してませんでしたっけ?


「それは、作者殿が書いてくれねば、表ざたには出来ぬのじゃ! こちらを一区切りさせたら、リーヤ殿の過去話を早く書くのじゃ!」


 はいはい、了解です。

 しっかし、何処に脳内登場人物に虐められる作者がいるんですかねぇ。


「ワシ、作者殿を虐めてはおらんぞ。励ましておるのじゃ! では、明日の更新を楽しみに待つのじゃ! ブックマークなどしてくれたら嬉しいのじゃ!!」

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