表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/40

第20話 驚愕! 恐ろしい帝国の足音。わたしは負けずにポイポイするの!

「おかーさん、早く! もっと早くぅ!」


「あのね、メイ。道路交通法ってものがあるの。元婦警のわたくしが、速度超過で捕まる訳にはいかないでしょ?」


 お母さん、お兄ちゃん、ラーラちゃん、わたしは姫路市内の国立病院機構姫路医療センターへ、早朝の道路を急いで車を向かわせている。

 朝霧師匠が、深夜敵に襲われて病院へ担ぎ込まれたと今朝聞いたからだ。


「一体何があったの! 師匠が怪我するなんて!!」


「ししょー、だいじょうぶ?」


「おい、メイ。今、姉さんは運転が忙しいんだ。あまり話しかけるなよ」


 わたしは今朝、師匠に不幸が襲ったのを聞いてから、気が気では無い。

 続報が入ってこないから、師匠の様子が気になって仕方が無い。


「詳しい事は、わたくしも聞いていないの。とりあえず病院に行って詳細は聞きましょうね」


 お母さんは制限速度ぴったりの速度で軽自動車を走らせる。

 わたしは、師匠の無事を祈った。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「早く、みんな急いで!」


 わたしは、受付で師匠の病室を聞いて、急いだ。

 他の皆が来るのが待ちきれずに、1人階段を走る。

 そして師匠の病室がある3階まで一気に駆け上がったわたしは、ナースステーションで急いで確認をした後、師匠の病室へ飛び込んだ。


「朝霧ししょー!!」


 病室には心電図などのモニターがある。

 ピ、ピとモニターから音か聞こえる。

 そしてベットの上に点滴が繋がれた師匠が眠っている。

 師匠の顔の上には、白い布が被っていた。


「し、し、ししょー! どーして! どーして死んじゃったのぉ!」


 わたしは、師匠に飛びついた。

 酷い怪我だとは思っていたのが、まさか死んでいたなんて。


 「ししょー、どうして! 誰が、ししょーを殺したのぉ!」


 わたしは師匠に(すが)り付き、大声で泣いた。

 そんな時、お母さん達が病室に入ってきた。


「朝霧さん!」


「し、師匠!!」


「ししょ、しんじゃったのぉ!」


 3人の驚きの声が病室に響く。


「おいおい、まだボクを殺さないでくれるかい?」


 そんな時、顔の上に置いた布を自分で取り除き、師匠が起きだした。


「え――――――――!!!!」


 わたしは驚きと喜びと意味の分からない感情で大声で叫んだ。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「まったく早とちりだよ、メイちゃん。もっと観察の眼を凝らさなきゃ」


 案外、元気そうな師匠、ベットに寄り添ったわたしの頭を撫でてくれる。


「でもぉ……。白い布を顔に被せてたら、誰だって勘違いしちゃうもん」


「ああ、俺もすっかり騙されたよ」


「らーら、びっくり!」


 お兄ちゃんやラーラちゃんも騙されたのか、少々複雑な心境っぽいの。


「まず、御遺体に点滴や心電図の測定器は繋いだままにはしないでしょ? それに死後変化の事を考えて看護士さんが処置するから、御遺体を無人で放置もまずは無いよ?」


 師匠は、たんたんと事実を話す。

 聞いてみれば、師匠の言う通り。

 騙されたわたしが確かに悪い。


「なら、どーして顔の上に布被せていたの?」


「それは朝日が眩しかったからさ。もう少し寝ていたかったのに、明るいと寝辛いもの。そういう意味ではメイちゃんの泣き声は、イイ目覚ましになったね」


 ヨシヨシとまだ涙声のわたしを、あやしてくれる師匠。

 その暖かい手に、わたしは亡くなったお爺ちゃんの事を思い出していた。


 ……ししょー、わたし大好き!


「もう、朝霧さんはお茶目なんですから。イタズラは、このくらいにしましょうね」


「あれ? タカコさんにはバレてた?」


「ええ、本部からは重症とまでは聞いていましたけど、命に別状があるとは聞いてませんでしたもの。それに心電図がちゃんと動いているの見てますしね。第一、わたくし達が来るタイミングを狙ってませんでしたか?」


 お母さんは、一瞬驚いたものの、心電図の拍動データを見て師匠が生きているのは分かっていたみたい。


「え、ししょー! ま、まさか、わたしを驚かすつもりで……!!」


「ま、まあ。今になれば問題なしという事で……」


「し、し、ししょーのばかぁぁぁぁ!!」


 度々のわたしの咆哮(?)で、看護師のおねーさん達が病室に飛び込んできて、わたしはこっぴどく怒られました。


 ……ししょーが、全部悪いんだもん。ししょーのばかぁ。もう嫌いだもん! ぐすん。


  ◆ ◇ ◆ ◇


 なにかの液体に満たされた治療ポッドの中に傷だらけのガンダルヴァが眠る。

 ガンダルヴァだが、右手が肘から、左足は膝から先が欠損している。


「まったく、情けないですねぇ。私が回収しなければ相打ち、いえ、一方的に殺されていたでしょう」


 28部衆のひとりカルラは、ボロボロになったガンダルヴァの姿を嘲笑しながら見る。


「貴方のような純血貴族、どうせ碌に苦労もせずに皇帝に認められて、28部衆にのし上がったのでしょう。私のような混血種は、どれだけ苦労をして、今の地位まで上ってきたのか」


 カルラは冷たい緋色の眼で、昏々と眠るガンダルヴァを見る。


「貴方は私にとっては出世の道具、切り捨てる事も出来ますが、存分に働いてもらい、最後まで役にたってもらわねば……」


 カルラは、治療ポッドのある部屋から出る。


「さて、陛下に進言をして、ガンダルヴァを生贄にさせて頂きましょう。地球の小娘共には退場願わねば……」


 カルラの脳裏には、娘を守る母(タカコ)の姿が思い出された。


「母とは、アアいうモノなのか……」

「もう、心配させるのでは無いのじゃ! 朝霧殿は人が悪いのじゃ!」


 チエちゃん、お疲れ様です。

 ええ、狙って驚かす気、満々でしたもの。

 さすが、罠にも長けた戦術家ですね。


「竹やりボールや木の杭トラップ、まるでベトコン並なのじゃ!」


 ええ、ベトナム戦争時にアメリカ軍は竹を使ったトラップに苦戦したと聞いています。

 バンジ・スティックといって竹やりを上に向けて地面に埋めていたそうで、酷い時には槍先に糞便を塗って、毒槍にしていたとか。


「エグイのじゃぁ。ワシも今度勉強するのじゃ」


 チエちゃんには必要ない気もするんですけど?


「勝利するのに手段は選ばぬのじゃ。ワシとて、強大な敵相手には策を講じるのじゃ!」


 ということで、明日の更新をお楽しみに。


「ブックマークなど、待っておるのじゃ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ