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第17話 修行! 武道のプロは厳しいけど、努力はポイポイ出来ないのぉ。

「えい! やぁ!」


 わたしは、やっと怪我が回復して部活に通っている。

 実戦からだいぶ遠ざかっていたから、カンが鈍っている気がするの。


「ちょ、ちょっと待って! メイちゃん、もー終わり!」


 薙刀(なぎなた)の相手をしてくれている部活の高等部先輩が悲鳴を上げた。


「えー! わたし、病み上がりなんですけどぉ?」


 わたしは軽く慣らし運転のつもりだったけど、どうやら中学高校の薙刀の範囲を超えちゃったみたいだ。


「うーむ。先生が見ても、秋月さんの薙刀は十分インターハイクラスだよ。でも、何かちょっと普通の薙刀とは違うよね。突き技も時々仕掛けていない?」


 顧問の松本先生、わたしの薙刀さばきを見て、わたしが本来槍使いなのを見抜いたっぽい。


「え、えーっとぉ。それは先生の気のせいでは……」


「そうかなぁ。わたしもメイちゃんの薙刀は、どこか違うと思うけど?」


 高等部の先輩もジトメでわたしを見る。


 ……やばいのぉ。どーやって誤魔化そうかなぁ。


「秋月さん。なら、お兄さんが通っている道場に行ってみたらどうかな? あそこは武器なんでもありだからね。部活に席を置いてくれて、たまにこっちで練習しつつ、大会にさえ出てくれるのなら、ウチは問題ないけど?」


 先生は、意外な提案をしてくれた。

 お兄ちゃんも、以前はわたしと同じ剣道部に参加していたけど、最近は腕も上がって敵ナシので、お母さんの師匠筋の道場に通っている。


「はい、父母に相談してみますね」


  ◆ ◇ ◆ ◇


「おかーさん、部活の先生にわたしが槍使いって、半分バレちゃったのぉ」


 わたしは、帰宅後夕飯準備中のお母さんに部活でのことを話した。


「そうなのね。まあ、槍と薙刀では穂先の使い方が微妙に違うし、この間の戦いでメイは一皮剥けたとわたくしも思うの」


 剣術では人1人切ったら初段、2人で二段の実力があるという噂はある。

 ガンダルヴァとの戦いで、わたし自身何か掴んだような気はしている。


「じゃあ、朝霧さんに連絡をするわね」

「うん、おねがい!」


 朝霧 勝(あさぎり まさる)先生、お母さんとは兄弟子の関係になる人で、天真正伝(てんしんせいでん)香取(かとり)神道流(しんとうりゅう)の免許皆伝の人。

 神道流は、室町時代発祥の総合武術で剣術、居合い、柔術、棒に薙刀、槍に手裏剣と、なんでもあれ。

 お母さんの強さを分かってしまう流派だ。


「朝霧さんは、わたくしよりも強いから覚悟してね」


「えー、ちょっと怖いかもぉ」


「めい、こわい?」


 わたしは、お母さん以上の強い人ってとこで身震いしちゃう。

 その様子にラーラちゃんが心配してくれた。


「た、たぶん、だいじょーぶよ、ラーラちゃん。」


「あら、心配ならラーラちゃんも見に行く? 朝霧さんはテルミナスの武術顧問もなさっているから大丈夫よ」


「うん、わたし、めい、しんぱい。いっしょ、いく!」


 どうやら、わたしは大変な事になりそうだ。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「ほう、キミがメイちゃんか。外見よりは強いオーラしてるね」


 わたしは、週末お母さんに連れられて、お兄ちゃん、ラーラちゃんと一緒に姫路市内にある朝霧さんの道場に来た。


「タカコさんやアキラくんとは、また違うタイプだけど、可愛い顔して今後に期待だね」


 朝霧さん、とても武術の達人には見えない外見。

 身長も高校1年のお兄ちゃんとそう変わらないし、細身で白髪の優しいお爺ちゃんって感じだ。


「はい、宜しくお願いします!」


「じゃあ、さっそくで悪いけど、着替えてからボクに打ち込んでごらん?」


「はい?」


 ……いきなり実践なの?

 

  ◆ ◇ ◆ ◇


 ジャージに着替えたわたしは、道場に入ってスポーツチャンバラ用の槍を借りた。

 どうやらこの道場、普段は子供向けにスポーツチャンバラの講習をしているみたい。

 そして柔術も扱う流派なのか、床も板張りじゃなくて柔道用の畳だ。


「その槍なら手加減無しに打ち込めるよね。ボクはこの小太刀使うから、いつでも打ち込んでおいで」


 朝霧さんは、短めのスポーツチャンバラ刀を自然に持つ。


「は、はい!」


 わたしは、朝霧さんに向かう。


 ……自然に構えているけど、隙がまったく見えないの!


 表情も柔らかいのに、朝霧さんに打ち込むのが怖い。

 ガンダルヴァなんて比じゃない。

 お母さんとは戦うのが辛いと思うけど、朝霧さんとは戦うこと自体をしたくない。

 背中が冷や汗でじっとりと濡れてくる。


 ……このおじーちゃん、怖いよぉ。何か分からないけど、怖いのぉ……。


 こちらから殺気をぶつけてみるけど、それが鏡みたいにそのまま返ってくる。

 そして朝霧さん自身は、無心に見える。


「ほう、イイ殺気だし、ボクの気配を感じられるんだ、メイちゃん。その若さで凄いね。じゃあ、これはどうかな?」


 朝霧さん、今度はこちらに殺気まではいかないけど「気」、攻撃の兆しを見せてきた。

 それがわたしの攻撃の直前、動かそうとしている手足に来るから一歩も動くことも出来ない。


 気配を見抜けるお母さんやお兄ちゃんは、朝霧さんの「攻撃」を感じて、ピクピクとしている。

 その辺りが分からないラーラちゃんは、周囲をきょろきょろ見て不思議そうにしている。


 ……せ、攻めれない。必ずカウンターされそうなのぉ。


「ほれ、ほれ! まだ攻撃できないのかな? じゃあ、ボクは小太刀手放すよ」


 ポイと小太刀を手離して、両手を上にあげた朝霧さん。

 そしてわたしを遊ぶように、わたしの身体を舐めるような感じに気配を伸ばしてきた。

 特に胸周りと腰周りを念入りに。


 ……こ、このエロじじい!


「……は、はぁぁ!」


 わたしは、セクハラ攻撃(?)に我慢できずに、ランスチャージをした。


「残念、直線的攻撃じゃダメだよ」


 朝霧さんがボソっと言うのが聞こえたけど、その時わたしの視界は天地が逆になっていた。


「え!?」


 どしゃんとわたしは突っ込んだ勢いのまま、転がされて道場の壁に激突した。


「い、いたぁいのぉ」


 道場の壁には危険防止の為に衝撃緩衝材が張ってあったから、わたしには怪我はない。

 でも、痛いのは痛い。


「もう少し頭を使おうね、メイちゃん。メイちゃんは攻撃に走りすぎなんだ。アキラ君は逆に守りに走り気味。もう少しバランスよくしないと」


 朝霧さんは、ニッコリと笑いわたしに手を差し出して立ち上がるのを助けてくれた。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「えい! えい!」


「ラーラちゃん、なかなかいい動きだよ!」


 わたしが一休みしている間、朝霧さんはラーラちゃんとスポーツチャンバラ中。

 猫族だからこそのラーラちゃんの素早い攻撃を、朝霧さんは息も切らさずに簡単に捌いている。


「朝霧さんってすっごいの!」


「ええ、そうよね。どう、メイ。何か掴めたかしら?」


 お母さんは私の背中をタオルで拭いてくれて、砂糖で甘くした麦茶も渡してくれた。


「うん、自分が強くなったと天狗になっていたのを、ぽっきり折られちゃったの。なんだろう、全部読まれてましたって感じなの」


「だろうな。俺もいつも自分から攻められずに、負けてるし」


 お兄ちゃんも朝霧さんには、手も足も出ないっぽい。


「でも、逆に言えば朝霧さんの技を使えたら、無敵じゃないかしら? わたくしも完全に使える訳じゃないけど、敵の動きを読めたら楽に戦えるわ」


 どうやらお母さん、朝霧さんに先日の戦いでガンダルヴァに蹴り喰らって隙を作ったのを叱られたらしい。

 斧の動きに集中しすぎて身体全体の動きを見切れなかったからだそう。


「わたし、もっと修行しなきゃ!」

「ほう、朝霧殿は凄いのじゃなぁ」


 なお、朝霧さんの流派は実在しまして、千葉県に伝承され県の無形文化財に指定されているそうです。

 なんでも扱える古武術ということで、師匠キャラの流派にしました。

 あの塚原ト伝も修めた流派だとか。


「それは興味深いのじゃ! これでメイ殿はますます強くなるのかや?」


 でも敵はあのガンダルヴァ、そして暗躍するカルラが居ます。

 さて、どうなるのか。

 今後に期待ですね。


「では、明日の更新を待つのじゃ! それまでにブックマークなどして待つのじゃぞ!」

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