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第16話 学校! リハビリしながら学業は大変、面倒な宿題はポイポイしたいのぉ。

「い、痛いのぉ」


「メイちゃん、だいじょーぶ?」


「うん。わたし、まだ完治していないから……」


「トラックと喧嘩したんだって? 無茶しちゃダメだよ、メイちゃん。昨日まで松葉杖だったし」


「ありがと、カナエちゃん」


 わたしは全治三週間の予定をブッちして10日目に退院をした。

 お医者さんもびっくりの超回復だったって。


 ……頑張って『力』を回復に廻したし、痛いリハビリを頑張ったんだもん。


 そして12日目に中学校に復帰して、今は14日目の掃除の時間。

 昨日までは松葉杖だったけど、今日は普通に歩いている。

 もちろん体育や部活はまだ無理ので、ゆっくり身体を動かしてリハビリ中。

 でも、やっぱり治りきっていないから、ほうきを使っての床掃除しかやっていないけど、全身が痛い。


「でも、よくトラックに轢かれて、大丈夫だったよね。ふつー、異世界転生しちゃうもん。なんでトラックと喧嘩したの?」


「ま、まあ。わたしにも色んな事情があるのぉ。それにわたし、身体だけは、がんじょーだからね」


 たぶんお母さん辺りが学校へ説明したんだろうけど、なんでトラックと私が喧嘩したことになっているんだろうか?


 私の怪我について学校での噂を纏めると、……。


 トラックと喧嘩になり、轢かれる時に四つ相撲をしてトラックを『うっちゃり』投げたけど、その時に無理したから全身肉離れになって相打ち……。


 という事になっていた。


 ……わたしぃ、可憐な女子中学生だよぉ。トラックと相撲なんてとらないもん! それにまだ異世界転生する予定ないのぉ!


 世の中のラノベには相撲を取る悪役令嬢ってのも居るらしいけれど、正統派美少女(?)のわたしは相撲レスラーじゃない。


 ……槍使いだから、どっちかと言うとバルキリー(戦乙女)だもん!


 そんな事を思っている間に、掃除の時間は終わる。


「メイちゃん。今日は部活どうするの? すぐに帰るなら一緒に帰ろ?」


「ありがと、カナエちゃん。今日は、少し顧問の先生と話してから帰るよ」


 わたしが、ほうきを用具箱に入れたとき、何処からかの視線を感じた。


「ん!」


 わたしは周囲を見回した。

 もちろん急に動いたから、身体中に激痛が走る。


「あいたぁぁ!」


「メイちゃん、いったいどうしたの? 急におかしな事しちゃって」


「え、えーっとね。なんか視線感じたの。嘗め回すよーな、嫌な感じで」


 感じた視線は何か、わたしの中まで透かすような感じがした。


「メイちゃん、可愛いもんね。どこかの男子が覗いていたのかも」


「それならいいんだけどね」


 視線は感じなくなったので、わたしは武道館へと足を向けた。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「松本先生、ご心配をおかけしました」


「秋月さん、もう普通に歩いて大丈夫なのかい? 確か昨日くらいまでは松葉杖だったような……」


 剣道部の顧問、松本先生は、まだ包帯に覆われた箇所が多いわたしの身体を見て心配してくれる。


「正直、全身痛いですけど、なんとかです。今日は、お礼とご挨拶に来ました」


「お礼ってお見舞いも普通にしかやっていないぞ。それにお礼は君のお母さんからも聞いているし……」


 剣道着の先生、少し顔を赤くしている。

 多分、お母さんの顔を思い出しているんだろう。

 松本先生は30歳そこそこで、まだ独身。

 お嫁さん募集中との話だ。


「いえ今回、わたしは先生に教えて頂いた技に助けてもらいましたから」


 わたしが部活で使っているのは竹刀ではなくて薙刀(なぎなた)

 剣道部の中で薙刀を練習しているのだ。


 ……槍の使い方と薙刀は似ているから、槍の練習も兼ねているんだけどね。


「え? 確か秋月さんはトラックと四つ相撲をして相打ちだったって聞いているけど? 俺が教えたのは剣道の技だけだよ? 相撲や柔道は専門外だし……」


「あ、うーみゅぅ! わたしぃ、トラックと相撲なんて取ってません! 第一、どーやってトラックを投げ飛ばすんですかぁ!」


 わたしは「切り落とし」を使って助かったのを言おうと思ってたけど、それを言うと事情を説明出来ないのに気が付いたから、別の事で怒って誤魔化した。


 ……でも一体、誰がそんな変な噂流したのよぉ!!


「そ、そうだよなぁ。俺も少し変だなぁって思ったんだよ。職員室でも随分と話題になっていたし」


「えー、全部の先生が、わたしトラックと相撲したって思っているのぉ!」


  ◆ ◇ ◆ ◇


「ねえ、おかーさん。わたし、学校でトラックと相撲する変な女の子って思われているのぉ!」


「あら、変なってところは当っているんじゃないの?」


 家に帰って一番、わたしはお母さんに文句を言った。

 しかし、その返答は冷たい。


「何処が変なのぉ! わたし、可憐な美少女なのよぉ!」


「メイ、普通美少女は自分から可憐なんて事は言わないと思う」


「おにーちゃんまで! もーだいっきらい!」


 まさか絶対味方だと思っていたお兄ちゃんも、辛らつな答えだ。


「ちょ、メイ慌てるなって。俺はメイは、その、えーっと、か、か、可愛いって思っているぞ」


 でも、すぐにお兄ちゃんは視線を逸らしながらも顔を真っ赤にして、わたしの事を可愛いって言ってくれた。


「え、おにーちゃん! うわー、おにーちゃん大好き!」


 わたしは身体が痛いのを忘れて、宿題をリビングでやっていたお兄ちゃんに飛びついた。


「あ、い、いったーい」


「ほれ、そういう事をするから可憐ってのが似合わないんだぞ」


 痛みに苦しむわたしの頭を撫でて、慰めてくれるお兄ちゃん。


「めい、いたい?」


 ラーラちゃんも、悲鳴を上げたわたしを心配して頭を撫でてくれた。


「ラーラちゃん、ごめんね、心配かけて。もう大丈夫だよ。多分今週末には普通になると思うの」


「じゃあ、来週まではメイは待機ね。その間は、わたくしとあーちゃんで街を守るわ」


「そういう事だから、メイはまず自分の身体を治せ」


「めい、ぜったいあんせい」


「はーい」


 わたしは、心配をかけた皆に頭が上がらない。


 お母さんには、意識が戻った翌日にみっちり叱られた。

 そして泣きながら褒めてもくれた。


 お父さんは、忙しいのに毎日仕事帰りに病室に寄ってくれて色んな話をしてくれた。


 お兄ちゃんも、なんのかんの言いながら毎日病室に来ては、わたしの頭を優しく撫でてくれた。


 そしてラーラちゃんは、猫耳が見られないように変装をしてこっそりと病室に来てくれて、包帯塗れのわたしを見て泣いてくれた。


 こんな温かい家族に恵まれて、わたしはとっても幸せだ。

 そして本当の家族を奪われてしまったラーラちゃんには、もう二度とそんな思いをさせたくない。


 陽だまりの様な日常を守りたい、そう深くわたしは思った。


 なお、わたしの怪我の噂話。


 高等部のお兄ちゃんが学校で冗談で言ったことが、中高一貫教育のウチの学校で広まったとの事。

 その事で、わたしはお兄ちゃんにだいぶ怒って、美味しいスイーツ一週間分で手を打った。


 もひとつおまけ。

 このスイーツがダメ押しになって、わたしの体重は危険域まで急上昇した。


 タダでさえ怪我で運動が出来ないのに、高カロリー食品を取得するのは危険。

 このことでもわたしは、お兄ちゃんに八つ当たりをした。


 幸い、動き出したら体重は殆ど元に戻り、身長がちょっぴり伸びていたけどね。

 胸は……。


 ……だれか、胸にだけ脂肪が付く方法知らないかなぁ?

「うむうむ。この日常が良いのじゃ。何の変哲も無い普通の毎日、それが大事なのじゃ」


 日常から戦いに巻き込まれるのが、「ゆゆゆ」等に代表される新日常系作品ですよね。


「誰しも戦いなぞ望んでおらぬ。まあ、ガンダルヴァのようなドアホぉは例外じゃがな。日常を守りたい、愛するものを守りたい、それが基本戦いに赴く理由じゃ。もちろん復讐もありうるのじゃがな」


 メイちゃんにも叔母夫婦の敵討ちという理由がありますしね。


「じゃが、メイ殿は皆を守りたいから戦っておるのじゃろ?」


 ええ、そうです。

 まあ、もうひとつ理由もありますが、それは追々語りますね。


「それは楽しみなのじゃ。では、明日の更新をお楽しみなのじゃ!」

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