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第14話 恐怖! お母さんは、わたしが絶対に守るの!

「死ねよ!『パラシュラーマ(斧乱舞)』!


 両手の斧に雷撃を(まと)わせてカチンとぶつけた異界の戦士、28部衆が1人、ガンダルヴァ。

 その斧がお母さんに迫る。


「まにあえー!」


 わたしは渾身の踏み込みで、体勢が崩れて尻餅を付き反撃できないお母さんの前に立つ。


「娘と一緒に死ねやぁ!」


 ガンダルヴァの技は発動する。

 そして雷の速度で無数の斧が、わたしとおかあさんに迫った。


「「メイ!」」


 動けないお母さんと、こっちに走ってくるお兄ちゃんの声が重なる。

 その瞬間、わたしの中で時間がほとんど止まる。

 そして脳裏に、「ある技」が浮んだ。


 ……試してみるの、『切り落とし』! それを連続技で!


 わたしの防御フィールドは、お母さんよりも薄い。

 そして、わたしの肉が薄い身体では、肉の盾としても役立たずだろう。


 ……でも!


 わたしは、自分自身の防御を無視して全部の『力』、フィールドを槍先に集中する。

 そして、しっかりと地面を踏みしめた。

 眼を見開き、わたしに迫り来る斧を見る。


「やぁ!」


 わたしの槍の一撃は、わたしに一番近く迫り来る斧を一つ叩き落した。


 ……次!


 そして急いで引き戻した槍で、次に近い斧を打ち落とした。


 わたしの『力』では、ガンダルヴァ本体のフィールドを突破・破壊はできない。

 でも、ガンダルヴァの技は、フィールドを斧の形に形成して雷撃を纏わせて沢山打ち出す、実体の無いもの。


 だったら、一個一個のフィールド量は少ないから、わたしでも打ち落とせるし、攻撃の軌道をずらせる。

 これが斧本体だったのなら、軌道をずらすのすら難しかったと思う。


 ……おかーさんが言ってたとおり、実体のない属性を乗せただけのフィールド攻撃は、威力が小さいの!


「えい! えい! えい! えい!」


 わたしは、続々と斧を打ち落とし、軌道を逸らす。

 これが「切り落とし」、わたしの頭の中には、教えてくれた剣道部の顧問の先生の技が見えた。


「メイ、無茶を!」


 まだ倒れているおかあさんの、悲鳴に近い声が聞こえる。


 ……だって、ガンダルヴァの技は普通に相手をしたら避けきれない。それは、技を夢で見たわたしにしか分からないし、見たからこそ弱点も分かったの。わざわざ見せてくれた王様と、『切り落とし』を教えてくれた先生に感謝しなきゃ。


 そしてわたしは強く思う。


 ……おかーさんを守るの! 絶対に!!!!


「俺も!」


 お兄ちゃんもわたしの横に並んで、大剣を振り回して斧を落とす。


「ちぃ!」


 お兄ちゃんが、打ち落とした斧から感電をする。

 わたしは急いで周囲に水のフィールドを撒き散らした。

 そうすることで、雷撃は霧散しつつ地面へと逃げた。


 ……冬の静電気って手を洗うと、静電気が水に逃げて痛くないんだよね。


「わたくしも!」


 体勢を整え立ち上がったお母さんも、連続の突き技で斧を打ち落としだした。


「このぉ、クソ生意気なぁ!」


 ガンダルヴァは、自慢の技が全部打ち落とされるので、意地になってどんどん幻の斧を射出した。


 ……わたしの身体もって! あともう少し!


 目の前が、どんどん薄暗くなる。

 息がほとんど出来ないから、身体や脳が酸欠になってきてるのを感じる。

 また、手足の筋肉が身体の中でブチブチと切れる音が聞こえる。


 ……もう少し、もう少し! あと、あともう少しなのぉ!!


 痛みと酸欠で意識が消えそうになった時、


 〝まけないで!〟


 ラーラちゃんの声が聞こえた気がした。


 ……ここで負けちゃ、オンナがすたるのぉ!!!! 乙女のパワー、なめんなぁぁぁ!!


「おぉぉぉ!!」


 わたしは、更に頑張った。

 3人で並んで、飛んでくる斧をキンキンと弾き飛ばす。

 何時間も「切り落とし」をしている気になっていたわたし。

 でも、実際には一分にも満たない時間だったと、わたしは後からお母さんに聞いた。


「ち、ちきしょー!」


 大声でガンダルヴァは叫ぶ。

 そして突然、斧の嵐が止まった。


「ど、どうしてオレの技を見切れたんだ!? 初見殺し、必殺のはずがぁ!」


「は、はぁ、はぁ。そ、そんなの、神様が教えてくれたのよぉ……」


 わたしは大きく息を切らしながらも、ガンダルヴァに言い返した。


「さあ、今度はわたくしの番よ。娘2人を虐めたバツはその身で味わいなさい!」


 お母さんがわたしの前に進み、正眼に太刀を構えた。


「く、くそぉぉ!」


 やけくそになって斧を振り回すガンダルヴァだが、足元も振るう斧もフラフラとしていて、それはお母さんに当たる事も無く、逆に胸鎧に深く切り込まれた。


「ぐぅぅ……」


「さっきの技で、防御フィールドも体力も使い切ったのね。卑怯なおばかさん、ここで死になさい!」


 そして、お母さんがガンダルヴァにトドメを刺そうとした時、


「お待ちください!」


 ドーンという衝撃音の後に、巨人型レギーオがガンダルヴァとお母さんの間に現れた。

 ステップバックして油断をしない、お母さん。


「このガンダルヴァ、愚か者ですが、ここで死んでもらっては困ります。ですので、今回は私が回収させて頂きますね」


 そのレギオーは流暢に日本語を話す。


「なるほど、直接レギーオを操作をしていらっしゃるのね?」


「はい、私は28部衆の1人、カルラと申します。以後、お見知りおきを」


 いびつな巨人レギーオが華麗に礼をする。


 ……こいつ、ガンダルヴァと同じくらい強いの! わたし、もう動けないのにぃ!


 わたしの手足はボロボロ、たぶん全部の筋肉が肉離れしている。


 激痛で意識を保つのがやっと。

 立っているのも辛いけど座り込んだら、絶対に動けない。

 それを察してくれたのか、お兄ちゃんはそっと後ろからわたしを支えてくれた。


「おにーちゃん、ありがと」

「ああ」


 わたしはガンダルヴァ達から眼を離さずに、お兄ちゃんに感謝した。


「そういう訳ですので、今回はここまで。後は、私がお相手しますから、ガンダルヴァは撤退させます」


「おい、まだオレは戦えるぞ! おい、オレを掴むな! くそぉぉ!」


 ガンダルヴァは、カルラが連れて来たトロール達に押さえつけられている。


「ガンダルヴァ、貴方は今回負けたのです。命がある内に帰らないと、もったいない。この敗戦は良い経験になりますからね。では、お嬢様方。」


 カルラが操縦する巨人が腕を上げると、その後方に虹色の渦巻き、たぶん次元ゲートが生成され、トロールに押さえ込まれたガンダルヴァが吸い込まれる。


「オ、オレは負けてねぇ! 次はぜってぇ、殺してやる!」


 そう負け惜しみを言いながら、ガンダルヴァは渦の中に消えていった。


「では、後は……」


「もう十分よ、さようなら」


 カルラが何か言おうとした瞬間、巨人の首は胴体から離れ、身体もバラバラになった。


「ふぅ。オトコのおしゃべりは嫌われるのよ」


 お母さんは、かちんと太刀の鯉口を鳴らし、一瞬で巨人を倒した。


「さて。今回メイには、いーっぱいお小言あるけど、まずは病院ね。焼肉は、しばらくお預けかしらぁ」


 わたしは、左手を頬に添えたお母さんの言葉を聞きながら、意識が遠くなる。

 そしてお兄ちゃんの腕の中に倒れこんだ。

「メイ殿、無茶しすぎなのじゃ。技の本質を見ておっても、本当なら防ぎきれるものじゃないのじゃ!」


 ええ、メイちゃん限界を超えたから、身体中の筋肉がボロボロになっています。

 変身して慣性制御をしていても、中身は女子中学生。

 そりゃ、大変な事になりますって。


「まあ、ワシの補助なくては、全部防ぎきれなんだがのぉ」


 え、チエちゃん何かやったの!


「ホンの少しだけ、手助けしただけなのじゃ。ワシ、頑張る人を応援したいだけなのじゃ!」


 確かに素のメイちゃんの力量じゃ、ガンダルヴァの攻撃を防ぎきれるはず無かったですが……。


「まあ、そこは神様が助けたという事なのじゃ!」


 じゃあ、ラーラちゃんの声って?


「それは知らないのじゃ。さて、続きが楽しみなのじゃ!」


 なんか誤魔化された気がしますが、明日の更新をお楽しみに。

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