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第12話 迫る鬼神! 王様のカタキなんか、わたしがポイポイしちゃうの!

「敵は何処にいるの、おかーさん?」


 わたし達は、自衛隊の車で病院から移動中だ。


「海沿いの『みなとドーム』付近らしいの。今は警察と自衛隊によって封鎖は出来ているけど、先行したテルミナスの方々は苦戦中らしいわ」


「一体、何が出ているんだ?」


 お兄ちゃんは、地図情報を情報端末で見ながらお母さんに聞く。


「情報カメラと先行部隊情報では、ゴブリン型が10体以上、そして正真正銘のヒト型が1人よ」


 ゴブリン、小鬼型は身長1mくらいの小型。

 武器を持って集団行動をするのが厄介なくらいで、一体一体は大した強さではない。

 問題は……。


「ヒト型って……」


「ええ、向こうのヒト。帝国の実戦部隊長、エース級だわ」


「まさか……」


 普段は気楽な風に話すお母さんも、敵エースとの戦闘を控えて緊張気味だ。

 さしものお兄ちゃんも、黙り込んでしまう。


「ふーん。じゃあ、向田さんには(じょう)ロース頼まなきゃね!」


 わたしは、あえて空気を読まずに言う。


「だって、そいつ倒したら敵は大ダメージでしょ? 普通、こっちにヒト送ってくる事もないもん。きっちり倒して、美味しい焼肉食べなきゃ。ビビンバとか追加注文も大丈夫だよね?」


「もう、メイったらぁ……。そうね、確かにソイツ倒したら大金星。『力』を使うといっても、わたくし達と大きくは違わないわ。所詮は人間、心臓刺したり首切ったら死ぬものね」


「メイ、無理に元気付けなくてもいいぞ。でも、ありがとうな」


 お母さんは苦笑いだけども、さっきまでの悲痛な表情から笑顔になったし、お兄ちゃんも同じく笑顔になった。

 そしてお兄ちゃんは、横に座るわたしの頭を撫でてくれた。


 ……おにーちゃんこそ、ありがとー! わたし、百人力だよ!


「皆さん、まもなく封鎖区域の端に到着します。戦闘準備を御願いします!」


 運転していた自衛隊のお姉さんが戦闘区域に入る事を知らせてくれる。


「はい!」


 わたしは、変身ペンダントをぎゅっと握った。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「こっちの戦士ったぁ、こんなものかよぉ!」


 鬼の角を持った兜を被り、鋼の鎧を身に纏う大柄な異界の戦士、両手には変わった形の斧を持ち、周囲に倒れ伏す者達を黒い眼で見下す。


 彼らは、20式自動小銃を持つ自衛隊員、そしてMP5短機関銃(サブマシンガン)を持つ警察SAT(特殊強襲部隊)隊員。


「そんな鉛弾なんて、『力場(フィールド)』を使うオレやレギーオにゃ効かねーんだよ! で、せっかく『力場』を使うオメーラ、そんなもんか?」


 戦士の周囲には2人の戦士が立つ。

 短めの双剣、そして斧槍(ハルバード)を持つ薄紫の戦闘スーツをまとった2戦士は、異界の戦士相手に攻めあぐねていた。


「ほい! 油断したところを狙撃ってーのは、悪かねぇが威力が足らねーぞ」


 どこからか飛んで来た矢を簡単に弾く異界の戦士。


「お、オマエ。どうして俺達をいたぶってトドメを指さない? 周囲の隊員も全員息があるぞ」


 双剣の戦士は息を切らしながらも、異界の戦士を(にら)む。


「そんなの、簡単に殺したら面白くねえからだ。憂さ晴らしに、せっかく遊びに来たんだ。時間いっぱい遊んで、最後に命乞いをする相手をぶっ殺すのがたのしーんだよ!」


 まるで鬼が笑うような表情をする異界の戦士。

 その気迫に2戦士は、恐怖を感じた。


「ほら、怖いだろ。怯えて命乞いしろや!」


 異界の戦士の周囲に放電が走り、斧は落雷のスピードで振り払われた。


「ぐわぁ!」

「う!」


 2人の戦士は帯電しながら吹き飛ばされ、変身が解除、気絶をした。


「そこのコソコソ女もシネや!」


 異界の戦士は、背後の建物へ向けて雷撃を放つ。


「きゃぁぁ!」


 そこからは女性の悲鳴が飛んだ。


「さて、狙撃も打ち止め。戦士もこれで全員倒した。後は1人ずつ痛ぶって、命乞いさせるかねぇ」


 凶悪な表情をして、倒れている自衛隊員に近付く異界の戦士。

 そして彼に斧を振り上げた瞬間、幼い、しかし力強い少女の声が戦場に響いた。


「ガンダルヴァ、いい加減にしなさーい! この卑怯ものー!」


  ◆ ◇ ◆ ◇


「ガンダルヴァ、いい加減にしなさーい! この卑怯ものー!」


 本当なら奇襲で倒したかったけど、あまりの非道ぷり、そしてラーラちゃんのお父さんのカタキ、ガンダルヴァを見たわたしは、大声で叫んでしまった。


「なんだ?」


 周囲をきょろきょろするガンダルヴァ相手にわたしは空中から突撃を敢行した。


「王様、ラーラちゃんのお父様のカタキ! 『竜突撃・急降下ドラゴンチャージ・フォール』!」


「ぐぅぅ」


 わたしの突撃に気が付いたガンダルヴァは、わたしの水フィールドを纏った突撃を、ガリガリと音をさせながらも両手の斧で受け止めきった。


「なんだ、一体何の話だ?」


 少しふらつくガンダルヴァ、そして着地が乱れた上に息が切れて話せないわたし。


「ちぇーい!」


 そこにお兄ちゃんが空中からの上段火炎切り、『烈火斬・飛燕』を見まう。


「なんのぉ!」


 ガンダルヴァは、雷撃を纏わせた斧をお兄ちゃんの大剣に叩きつけて、お兄ちゃんの攻撃の軌道をずらした。


「もう一手よ!」


 そこにお母さんが追撃をする。


「連撃斬、『春一番』!」


 ひょいとガンダルヴァの前に現れたお母さんは、わたしが視認できないくらいのスピードで連続攻撃を仕掛ける。


「こりゃ、ちょいとしんでーぜぇ!」


 しかし、ガンダルヴァは面白がっているようで、(たく)みに斧を使いお母さんの攻撃も殆ど通らない。


「さあ、ここで仕切りなおしだ!」


 ガンダルヴァの斧が帯電をしだす。

 そして地面に斧を叩き付けた。

 爆発するように地面が吹き飛び、その中にお母さんが巻き込まれる。


「ふぅ。ここまで強い相手は、初めてね」


 ガンダルヴァの攻撃から逃げて、わたしの前にひょいと着地するお母さん。

 お母さんの戦闘服の所々が裂け、血が滲んでいる部分すらある。


「おかーさん!」


「メイ、わたくしは大丈夫。油断しないでね。そういえば、どうして奇襲の時に声掛けちゃったの? 倒せないまでも一撃くらいは入っていたわよ」


 お母さんは、敵から視線を外さずにわたしに突撃時に叫んだ事を聞く。


「それはね、……」


 わたしは夢で見たラーラちゃんのお父様、王様の最後について手早く話した。


「そうなの? ねえ、貴方の名前ってガンダルヴァって言うのかしら? まあ、答えられるような頭している様には見えないけど」


 お母さんは、ガンダルヴァを挑発するように問う。


「おい、ヒトを馬鹿にするな! そうさ、オレこそが帝国28部衆が1人、8鬼神ガンダルヴァさまよ!」


 ドヤ顔で名乗り上げをするガンダルヴァ。


「あら、その頭は飾りじゃないのね。日本語を話しているし、名前も当たりなら、メイが見たのは正夢かしら。じゃあ、敵の中ボスって事なのね。腕が鳴るわ!」


 お母さんは、舌なめずりをする様に唇を舐める。

 その妖艶さと殺気に、娘のわたしですら寒気がした。


「そういう手前らは、メス猫のガキをオレから奪ったアマァかよ。どうやらオレとアンタらは縁があるよーだなぁ」


 ガンダルヴァ、鬼が笑うかの様な凶悪な表情でわたし達を睨む。


「さあ、殺し合おうぜ。そしてオレに命乞いをしろや。ついでにメス猫ガキの居場所も言えや。一緒にあの世に送ってやらぁ」


 ガンダルヴァの自分勝手で邪悪な言い分に、わたしの堪忍袋の尾が切れた。


 ……よっくもラーラちゃんを虐めたなぁ!!


「女子供や弱った相手にしか戦えない卑怯者! 多くの人々、そしてラーラちゃんのお父さんのカタキ! わたしがアンタを倒す! そして土下座させて命乞いをする頭を踏みつけてやるんだ!」


 わたしは、ガンダルヴァを睨んで吼えた。


「吼えろや、このガキが。切り刻んでやる!」


 わたし達と敵将ガンダルヴァの戦いが開始された。


「メイ殿、よくぞ吼えたのじゃ。こんな外道は、ぎったんぎったんにしてやるのじゃ! 作者殿、ワシがメイ殿を助けに行って構わぬか?」


 チエちゃん、お心はありがたいですが、今回の世界はチエちゃんが住まうところとは別世界。

 干渉はご勘弁くださいな。


「うみゅぅ、しょうがないのじゃ。こういう外道は、力が足りぬから卑怯な手ばかりに走っているのじゃ。己を高めずに卑怯な技ばかりを増やすから、最終的には倒される中ボスなのじゃ」


 戦う上で策を講じる事、それ自体は悪では無いです。

 負けたらお終い、その通り。

 しかし、卑怯に、楽に勝つことだけを選び、それを楽しみ出したらお終いです。

 

 されども、ガンダルヴァはメイちゃんにとっては圧倒的な強敵。

 その差をどうカバーして生き残り、倒すのか。

 明日の猛攻をお楽しみに。


「ワシ、メイ殿を応援するのじゃ。読者の皆の衆も、応援すると思ってブックマーク、評価、感想、レビューをするのじゃぞ!」

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