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第10話 病院へGO! ラーラちゃんを虐める人はポイポイしちゃうの!

「すごいの! おみず、いっぱいなの!」


 今、お父さん、お母さん、お兄ちゃん、ラーラちゃんにわたしは、お父さんが運転する自動車で移動をしているの。


「でしょでしょ。これが海、瀬戸内海なの。わたし達が住む『はりま市』は海の上にあるんだ。今から行くのは同じ播磨(はりま)の名前を持つ科学公園都市なんだけどね」


 ラーラちゃんをわたし達の家で保護する条件として、テルミナス(対異界災害対策局)本部は、ラーラちゃんの医学的データを要求した。


 といっても、猫耳美少女のラーラちゃんを普通の病院へ連れて行けば大騒ぎになるのは、中学生のわたしでも分かる。


 だから、国が直接管理している特殊な病院でこっそりとラーラちゃんを見てもらうという事になり、わたし達は病院へ向かっているのだ。


「ラーラちゃん。ここはね、海の上に街を作ったのよ」


 助手席に座っているお母さんが後部座席、自分の後の窓際に座るラーラちゃんに説明をする。

 ちなみに後部座席、反対の窓側はわたし、参列めの座席にお兄ちゃんが座っている。


 ……お父さんの自動車、大き目のミニバンだから、ゆったり座れるの。お母さんの軽自動車は4人乗りだから無理だよね。


 本当ならテルミナスには関係がないお父さん、だけどラーラちゃんを預かったからには保護者だと宣言して病院へ自分が連れて行くと言ってくれた。


 ……おとーさん、だーいすき!


 お父さんのミニバンは、はりま市と兵庫県たつの市を繋ぐ橋の上を走る。


「おとーさん! 今日は、お仕事お休みだったの? わたしとおにーちゃんは土曜日だから学校無いけど?」


「メイ、そこは大丈夫だよ。僕1人が一日休んでも問題ないくらいには準備しているしね。それに、今日は粒子加速器は待機中で本格的な実験は無い予定なんだ」


 お父さんの話だと粒子加速器という機械は、電源を簡単にオンオフ出来るものでは無いらしい。

 加速器の中も宇宙くらいの真空を保つ必要があるとかで、停電とかでない限りは電源を入れっぱなしだとか。


「おとーさんは、Spring8に居た時も休みあんまり取っていなかったから、働き過ぎないでね?」


「うん、ありがとうね、メイ」


「すぷりんぐ?」


 わたしがお父さんに働き過ぎないように話したとき、ラーラちゃんがわたしの言葉に反応した。


「あ、Spring8の事ね。わたし達がこれから行く播磨科学公園都市にある大きな機械なんだけど、5年くらい前までおとーさんはそこで働いていて、わたし達もそこに住んでいたんだ」


 放射光とかいう特別な光で物を調べる大規模施設、それがSpring8。

 お父さんは、そこにある粒子加速器の主任責任者だった。

 その経歴を生かして欲しいと、新しく海上研究学園都市はりま市の外縁内に作られた大型粒子加速器の責任者になったそうだ。


「きかい?」


「どんな機械かって聞かれたら、わたしも答えられないんだけどね」


 わたしは、ラーラちゃんの問いには答えられない。

 女子中学生に放射光がどーとか、電子とか聞くのが間違っているとわたしは思うの。


「俺もよく分からない」


 お兄ちゃんもボソッと分からないという。


「そうだね。大学の物理学系の学科でやっとかな? 僕も本当は完全に専門じゃないんだけどね。元は粒子加速器の軍事利用を研究していたし」


 細身でいかにも研究者っぽいお父さん、これでも元は防衛大学校の応用物理学科卒業。

 自衛隊でのビーム砲開発分野から、粒子加速器の研究に入って、今は軍事関係からは離れたそう。


「でも、そんなおとーさんと元婦人警官のおかーさん、どこで縁があったの? 同級生っては聞いているけど?」


 せっかくなので、お父さん達の馴れ初めを聞いてみるわたし。


「ま、まあそこは内緒という事で。あまりカッコいい話も無いしね。ね、タカコさん」


「そ、そうよねぇ。マナブさん」


 2人は何か誤魔化す様に話すのが、とても怪しい。

 たぶん何か娘には話せない恥ずかしい事があったに違いない。


「えー、おとーさんもおかーさんも何かあったんでしょー!」


 賑やかにミニバンは橋を渡り終えて、たつの市内へ入った。


  ◆ ◇ ◆ ◇


 わたし達は、学園都市の手前にある国立病院機構姫路医療センターに来た。

 ここは国立病院、秘密が守りやすい。

 今回、表玄関からラーラちゃんを堂々と中に入れる訳にもいかないので、従業員用の裏口から入る。


「よく来てくれたよ、タカコさん。この子がラーラちゃんかい?」


 そこには、お腹がでっぷり出たオジサン、確か本部で変身や武器システムの開発をしている向田(むこうだ)さんが待ち構えていて、しゃがんでラーラちゃんの顔を覗きこみに来た。


 後から聞いたのでは、向田さんがラーラちゃんの医療データを欲しがって、かわりにラーラちゃんのウチへの滞在を許可したんだそうな。


「こ、こわい……」


 もちろん、いきなり知らないオジサンが近付いたのでラーラちゃんは怖がって、お父さんの後ろに隠れる。


「向田さん、いきなりラーラちゃんに近付いたら怖がるの分かりませんか?」


「そーなの! ラーラちゃんは、わたしがぜーったい守るんだから」


 お母さんは向田さんを睨みつけ、わたしも向田さんとラーラちゃんの前に立ちはだかって、アカンベーをした。


「わ、悪かったよ。確かにいきなりじゃ怖いよな。もう、私はラーラちゃんには近付かないよ」


 すごすごと逃げるように向田さんは、廊下の向こうへ遠ざかっていった。


「もう! そんなのだから奥さんや娘さんに逃げられるのよ」


 お母さんは、向田さんに酷い事を言う。


 ……それ、流石に可哀想だよぉ。後で、わたしから謝ってあげよーっと。

「ふむ、移動場面で状況説明じゃな。Spring8は電子を加速して曲げる際に発生する放射光を利用する施設なのじゃ。環状粒子加速器を使うのはLHCと同じじゃが、あちらは加速させた素粒子をぶつけて壊すのが主なのじゃ」


 補足説明、ありがとうございます。

 チエちゃんの言う様に、少し用途が違いますが、粒子加速器としては同じです。

 Spring8の公式ページには、エイトハカセという解説漫画がありますので、見てみると面白いですよ。


「ビームは、オトコのロマンなのじゃ!」


 はいはいです。

 では、明日の更新をお楽しみに。

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