過去1
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あの日、学校が夏休みと言う名の長期休みで休みのあの日。
俺と瑠美は近所の子供たちを連れて川に遊びに来ていた。毎年、この時期になれば俺ら含め、子供たちは子供たちだけで川に遊びに来る。一番年長の俺と瑠美が保護者代わりにだ。あれはその日の出来事だった。
燦燦と輝く太陽、その光を揺れる水面が反射させ、ギラギラと輝いている。そんな川のほとりで俺は一人、五人の子供たちを落ち着くようにと諭していた。
「あ! 蝶々だ! 」
「えー! どこどこ! 」
「おい、お前ら、はしゃぐな! お前らが怪我したら怒られるのは俺なんだぞ! 」
子供たちは俺の言葉など聞こえていないかのように川のほとりを走り回っている。
「おい! あんま遠くに行くな! 」「おい! 石を投げるな! 」「おい、俺の水着を脱がそうとするな! 」
好奇心旺盛な年ごろの子供は川に入る前からこの騒ぎである。
くそう、瑠美が居れば……。瑠美ならこいつら直ぐに言うこと聞くのに。
瑠美は今朝から二駅先の町にある学校に吹奏楽部の練習に行っている。昼には帰ってくるとは言っていたが。
もう少しで瑠美が来るはずだが。それまでは自分一人で子供たちを見なければならない。
「おい! 水草を食うな! 」
俺がそうアタフタしている内に遠くから声が聞こえてきた。
「おーい、大丈夫ー? 」
俺はその方向を見る。瑠美だ。
学校指定のセーラー服を着た瑠美がこちらに向かって走ってきている。
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