ごめん
8
「久しぶりだね」瑠美は微笑みながら言う。
「久しぶり」俺は自分の胸程の少女に言う。
セーラー服を着た髪の長い少女、瑠美、五年前、最後にここで会った時と見た目が全く変わってない。あの日のまま。
「それにしても、よく俺が来るって分かったな」
不思議に思い、彼女に聞く。
「まあね、ずっと見てたからね。君の家からここに来る道は一本だけだからね、此処から見えるんだよ、私、視力良いから」
彼女はささやかな胸を張る。
「え、ずっと? 」
しれっと言うずっと見ていたに驚く。だって、五年だぞ?
「うん、そうだよ。だって暇なんだもん。何にも触れられないし、唯一触れるものはお供え物だけなんだよ? そのお供え物をくれる家族だって年に数回しか来ないしさ」
俺は言葉を無くした、彼女の現状に。
「なに、暗い顔になってんのさ、私はそれを知ってなお自分でこの体を選んだんだ。少々の退屈なんて覚悟の上だよ」
彼女は、にっと笑う。「まあ、君が五年も来てくれないとは思わなかったけどね。」と小さく付け加えて。
「もう、折角久しぶりの再会なんだからさ、そんな暗い顔しないでよ。……じゃあ、君がもっと私に会いに来てよ、そしたら私、寂しくないから」
彼女は少し眉を下げ、困ったように言う。
「……ごめん。努めるよ。仕事の合間にちょくちょく来るようにする」
「よろしい」彼女はまた無い胸を張る。
「まあ、こんなとこで立ち話もなんだし、私のお墓のとこ行こ」
彼女は絹のように滑らかな髪を翻し、踵を返して歩いて行く。
その小さな背中を見ながら俺はあの日の事を思い出す。
読んでいただきありがとうございます。
やっとヒロインが出てきました。