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朱色  作者: 脱兎田 米筆
8/20

ごめん

 「久しぶりだね」瑠美は微笑みながら言う。

 「久しぶり」俺は自分の胸程の少女に言う。

 セーラー服を着た髪の長い少女、瑠美、五年前、最後にここで会った時と見た目が全く変わってない。あの日のまま。

 「それにしても、よく俺が来るって分かったな」

 不思議に思い、彼女に聞く。

 「まあね、ずっと見てたからね。君の家からここに来る道は一本だけだからね、此処から見えるんだよ、私、視力良いから」 

 彼女はささやかな胸を張る。

 「え、ずっと? 」

 しれっと言うずっと見ていたに驚く。だって、五年だぞ?

 「うん、そうだよ。だって暇なんだもん。何にも触れられないし、唯一触れるものはお供え物だけなんだよ? そのお供え物をくれる家族だって年に数回しか来ないしさ」

 俺は言葉を無くした、彼女の現状に。

 「なに、暗い顔になってんのさ、私はそれを知ってなお自分でこの体を選んだんだ。少々の退屈なんて覚悟の上だよ」

 彼女は、にっと笑う。「まあ、君が五年も来てくれないとは思わなかったけどね。」と小さく付け加えて。

 「もう、折角久しぶりの再会なんだからさ、そんな暗い顔しないでよ。……じゃあ、君がもっと私に会いに来てよ、そしたら私、寂しくないから」

 彼女は少し眉を下げ、困ったように言う。

 「……ごめん。努めるよ。仕事の合間にちょくちょく来るようにする」

 「よろしい」彼女はまた無い胸を張る。

 「まあ、こんなとこで立ち話もなんだし、私のお墓のとこ行こ」

 彼女は絹のように滑らかな髪を翻し、踵を返して歩いて行く。

 その小さな背中を見ながら俺はあの日の事を思い出す。

読んでいただきありがとうございます。

やっとヒロインが出てきました。


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