水分補給はこまめに
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「ありがと」
俺はお袋からコップ一杯の麦茶を貰う。良く冷えた鮮やかな茶色、その冷たさを両手の手の平で少し楽しみ一気に飲み干す。
コクコクと勢いよく胃袋へと流し込んでいく。頭が痛くなるほどの冷たさが体の内部から火照った体を冷やしていく。
ふう、生き返った。
懐かしい後味を口の中に感じながら俺は口を開く。
「なあ、お袋、荷物置きたいんだけど」
「あんたの部屋使いな、寝るのもそこでね後で敷布団出しといたげる、物置として使ってたから物多いけどそれら退かして使ってね」
「分かった」
俺はキャリーバッグを持ち上げ、居間を出る。冷房の効いた居間とは違い廊下は蒸し蒸しと熱がこもりサウナのようになっていた。引いていた汗が一瞬にして滲み出てくる。
居間の向かい側の部屋を開ける。自分が五年前まで使っていた部屋。
昔使っていたベッドは無く、段ボールが代わりに積まれている。
俺はキャリーバッグを部屋の隅に置き、それを開く。
中からショルダーバッグを取り出し、財布と携帯電話を入れ、肩に掛ける。
俺は居間に戻り、両親に言う。
「今から、瑠美に挨拶してくる。晩飯までには戻るから」
お袋はこちらに向く。
「水筒持っていき、倒れるよ」
「分かった」
「台所のいつもの棚にあるから」
親父は無言でテレビを続けていた。
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