過去2
10
走ってきた瑠美に俺は顔をしかめて文句を言う。
「遅い、疲れたよ、俺」
「ごめんごめん、ミーティングが長引いてさ、電車逃しちゃって」
瑠美は白いハンカチで顔を拭きながら軽く謝る。
「って、あれ? お前家に帰らなかったの? 」
俺は瑠美の姿を見て疑問を口にする。学校指定の鞄とトランペットの入ったケースを一緒に右肩に掛けているのだ。
「うん、駅から直接来たの。遅れちゃったからねー」子供たちの相手をしながら瑠美は言った。
「水着は? 泳がないの? 」
「持ってきてないんだ、急いでて忘れちゃった。どうしたの? わたしの水着が見れなくて残念? 」
瑠美はニヤリと笑い、俺を見る。
「そっ、そんなんじゃねえよ! 純粋に気になっただけだ! 」俺は動揺し声を荒げる。
「分かってるって、落ち着きなよ」ニヤニヤとしながら瑠美は俺を諭す。
瑠美は、まあ、と続ける。
「元々、泳ぎは得意じゃないしねー、靴と靴下を脱いで脚をつけるだけにするよ」
俺たちは楽しそうに遊ぶ子供たちを見ながらそんな会話を続けていた。
と、そこで、日陰に置いた俺の携帯電話が鳴りだす。
「あ、ちょっとごめん、でてくる」と言い俺は携帯電話を拾い上げ、着信ボタンを押す。画面にはお袋と表示されている。
「もしもし、どしたん? 」
「スイカあるけど、子供たちと食べる?」
「ああ、うん」
「そう、じゃあ、取りに来な」
「ありがと、取りに行くよ」
と俺は電話を切った。そして、瑠美へ振り返り、少し大きな声を出す。
「ちょっと家に戻るから子供たち頼める? 」
瑠美は振り返り、薄い胸を張る。
「分かった、まかせて」と。
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