第十六話 イカ焼きが食べたい気分
タコよりイカが好きです。でもタコ焼きは好きです。
タコ焼き器も有ります。
夕方泳ぎの得意な冒険者は船で入り江を進む。
ぼく達と、漁師さんや魔法が使える冒険者さんで砂浜から岩場を通って、岬の突端。がけの上の様な場所までやってきた。
灯台を建てるならここしかないっていう感じの場所で、平らな場所が少しある。
海が深いからか、クラーケンが居るかは、見るだけでは分からない。
海にいる冒険者さんと漁師さんが、小舟を沖に流す。風魔法でさらに押しているようだ。
船には、浜に残っていたボロボロの魚や、捌いた後のワタ。魚の頭なんかが山盛りで、船が揺れると海にこぼれていく。
エサでクラーケンがいるなら、おびき寄せて、そのまま沖へ。上手く行けば遠くまで行ってもらおうという感じだ。
冒険者さんと漁師さんの船は離れた場所へ移動していく。
揺れるエサ船を結構な時間見ながら待ったら、海中からイボイボの付いた腕が伸びてきて、食べ始めた。
二本の腕と口の辺りだけが海面に出ている。
冒険者さんが風魔法で船を移動させようとしているけど、クラークンごとなので重くてなかなか動かない。
パクパク食べてるのを見ていたら無性に腹が立ってきて、落ちていた大き目の石をクラーケンに投げつけた。
父ちゃんとキャッチボールもしていてコントロールには自信が有る。
筋力強化して投げた石は音を立てて飛んでいき、クラーケンの目の辺りにボコってくぼむ様に当たった。
なんかコッチをジロッと見たクラーケンはエサ船をほおって、こっちへやって来た。
ふん。崖の上なんだから平気だよー。と思っていると、漁師さんや冒険者さんがオタオタしている。
「え、クラーケンて、崖のぼる事有るの?」
速度はゆっくりだけど吸盤の足を吸い付け崖を上ってくる。
みんな逃げるか戦うか相談している。
大きいけども、タコじゃん。と思ったので、近くで困った感じで立ちすくむ漁師さんから大きな銛をお借りした。
銛を投げるのとヤリを投げるのとそんなに変わらないよね、陸上のやり投げは何回かやってるし。
崖の上から狙うのは雰囲気が違うけど、筋力強化を思いっきり掛け直して、クラーケンに投げた。
向こうから近づいてくれたので、良い感じに射程に入ったのか投げた銛は、さっき投げた石と同じ辺りに深く突き刺さった。
ゆっくりと動きを止めたクラーケンは、うねうねと動いた後、海面に落ちプカプカしていた。
遠巻きにしていた漁師さんの船がしばらくしてから海岸へ引っ張って行った。
墨攻撃とかも心配していたけど、あっけなく倒してしまった。
ラノベで良くある感じで、クラーケンが触手をセシルに絡みつけて大変な事になる。みたいなイベントにもならなかった。
後は任せて浜辺に戻った。
蛸は砂浜に引きずり上げられていた。解体して浜のみんなで食べるんだそうだ。
なんだか伝承で<セルドア焼き>っていう、中に蛸を刻んだのが入っている伝説の食べ物が有るそうだ。ただしソースが無いので、今食べられるのはしょうゆ味のタコ焼きっていう情けない物だった。
今の気分はソースのタコ焼きより明石焼きが食べたい。好き嫌いじゃなく気分だ。
その日はお祭り騒ぎだったらしいけど、岬のはじまで行くのはちょっとした山登り並みに疲れたし、ちょっとだけだけど戦って疲れたので、宿に早く帰って寝た。
次の日冒険者ギルドからクラーケン討伐の報酬というのをもらって、ちょっとリッチになったけど、セシルに借りているお金を返したら無くなった。
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