第十三話 海へ行く。猫を拾う。
田舎に住んでいたので、海に行くと大はしゃぎでした。
小高い場所から海辺の町が見下ろせた。
海沿いの町<セルドア>
道の先には門があり、その先には平屋かせいぜい二階建ての木造建築が並んでいた。マップ画面を見ると宿屋もこの道沿いに表示されている。
海岸に近いところには砂浜に引き上げられた、小さな木の船や、作業小屋らしい小屋が並んでいて、小さな桟橋には少し大きな木造船が止めてあった。
炊事らしい煙も上がっているから、高台は高級住宅地、ちょっと下がった海岸沿いはあまりお金が無い人用なのだろうか。ひどい嵐とか来たら波で流される可能性もあるもんね。
高台には一つだけ高いやぐらが有って、鐘が付いていた。街道や海を見張るんだろうな。やぐらの隣が冒険者ギルドだった。
ここへ来る途中で採集した薬草?や木の種が有るのでギルドで売って、少しはお金を用意したい。今まで借りてばっかりだ。
冒険者カードを見せて町に入る。
「海沿いの町セルドアへようこそ。」
なんだか気のいい門番さんだった。
壁は街道沿いだけだし、海から回れば勝手に入れるんだろうけど、門が有るのが重要だって御者のじいちゃんに言われた。
いったん宿屋へ行って馬車をあずけたり、荷物を置いた。昼は焼き魚だった。久々に魚を食べて、涙が出そうに美味しかった。醤油っぽいものが有ったので後でお金を借りてでも手に入れる事にした。
生魚は食べないのかと聞いたら、大型の魚が取れた時で、新鮮な間は食べるそうだ。それ以外の魚は干したり茹でたり、必ず火を通すそうだ。
代々伝わる村の掟だそうで。この世界にもアニサキスみたいなのは居そうだった。
宿の女将さんに魚の干物を売ってる店を聞いたら、匂いが苦手な旅人が多く食べるのは地元漁師くらいだと言っていた。
家族で食べる分が有るっていうので見せてもらったら、臭みの弱いクサヤだった。そりゃ知らなきゃ買わないよね。
「この町は食べるものが無くて、腐った食べ物まで食べてるぞ!!」
て、思われてる。
漁師に交渉すれば、生魚も売ってくれるかもしれないというので、後で行ってみよう。干し方を変えれば匂い無くなるかもしれないし。
絶対先祖代々伝わる、腐らない秘密のたれに……とかに付け込んでから干してると思う。ただの濃い塩水に漬ければ良いのに。
ギルドに行くとおっちゃんが一人受付に座っていた。
「おう、どうした。」
「薬草とか少し有るので買い取ってもらえたらって思って持ってきました。」
「おれも少しくらい鑑定できるからな、調べるから出してみな。」
ぼくはリュックに手を入れてそこから出す感じで空間収納に入れてあった薬草を取り出した。種類ごとに縛ってある。
「おう、ちゃんと分けてあるのか。どれどれ。変な草も混じって無いな。」
「痛み止め用、かゆみ止め用。こりゃ「眠れな草」かぁ。王都とか大きな町なら人気の薬草だが、ここらへんじゃめったに使わねえな。まあこれは持ってろ。どうせ別の町へも行くんだろ。」
言われて「眠れな草」はバックに戻した。
強力なドリンク剤みたいなのが作れそうな薬草だから、働き詰めの人には喜ばれるのか?本当は適度に休んだ方が良いと思うけど。
二、三日アルバイトしたくらいのお金にはなった。これで魚を沢山帰るといいな。
一緒に来たセシルは終始ニコニコしていて。「勇者様が始めて報酬を貰った日ですぅ。」とかぶつぶつ言っていた。
続きが気になる方はブクマしていただくと嬉しいです