第十二話 海までは遠い
キャンプの食事ってなんで美味しいんでしょうね。
街道を行く。食料をできるだけ買い込んで出発した。馬車の走りは安定して、多少速度を出しても馬の疲れは増えないようだ。
後ろの幌馬車は結構揺れてるけど。それでも、安い馬車よりは安定してるらしいし、速度も出ているらしい。そりゃ次の町までは海へ向かってなだらかな坂道を下っていくから速くはなるよね。
街道の途中で今日休憩する。ちゃんとした休憩場は街道の脇にそれなりの広さが有り、何台かの馬車がその中へ止められ、ちょっとした炊事場が作られていた。
日本にいた頃の高速道路に有ったパーキングエリアみたいな感じかな。でも舗装されてないし、周りは林だし、車で行くキャンプ場が一番近い感じかな。ちょっとしたトイレも有ったし。
トイレといっても、周りから見えないだけの小屋だった。日本の公衆トイレほど綺麗ではないし、待ち伏せして襲撃される事もあるそうなので、使わない人も多いのだそうだ。
仕方が無いので、少し林に入り土魔法で壁を作って、中もそれっぽく作って、深い穴にして使った。女子みんなで使った後は、しっかり平らな土に変えておいた。
必要に迫られて、個室を作るために一番早く覚えて、使えるようになったのが土魔法(障壁)。本来の使い方と違う気がするけど、しょうがない。
トイレ休憩で、お花摘みのついでに近くに生えている植物の鑑定をしていくと攻略本の図と同じだった。幼稚園児並みの植物の絵も有ったけど雰囲気は同じだった。
攻略本の図鑑もそこそこ使えそうなことが分かったし調べている中で貴重そうな植物が有ったので少し採取もした。
帰るのが少し遅れたら何処まで行ってるんだとセシルに泣かれた。心配していたらしい。お花摘みに行っただけなんだけど。
何回かの休憩で交代で調理もした。ここでセシルのざんねんな感じが追加された。ぼくの当番で料理をした時にしょっぱいとか味が薄いとか言っていたので、味見も料理も出来ると思ったのに、作る方は散散だった。肉は骨が付いたまま鍋に入れるし、肉を焼けばまっ黒に焦がした。
料理の当番はぼくと御者のじいちゃん。冒険者のビッケとヒックが交代で作ることになった。
セシルは時々洗い物を手伝ってもらった。木の皿なので何回も落としたけど割れなかった。他の冒険者のみんなも食後の片づけや、ちょっとした狩りをして手伝ってくれた。
途中大猪っていう、いかにも大きなイノシシっていう魔獣を捕まえられた。
御者のじいちゃんや冒険者さんたちと一緒に肉を捌いている。
「あんちゃんは子供なのに肉を捌くの平気なんだな。」
「そうですよ。もっと小さいときは山奥に住んでいたので、鳥とか鹿とか罠に掛かったら村の人たちと肉にして分けてましたよ。さすがに初めての時は目まいがしましたけど。」
「さすがにそうなるか。」
「でも殺して命を頂くのだから、食べられるところは美味しく食べ、使えるとことは無駄が出ないように大切に使わないと駄目だと怒られました。」
「親父に言われたか。」
「いえ、おかあさまです。泣きながら聞いていました。」
「そ、そうか。今日は食えるだけ食って、後の肉は干し肉にしようか。」
「これを捕まえたのは冒険者チームのみなさまなんですから、そちらの希望で良いですよ。きょうはとっておきの調味料出しましょう。」
「おぉそりゃ豪勢だ。」
「ところで、トイレは大丈夫なんですか?」
「あ、やばい。」
そう言って何人かの冒険者は林の中へ走って行った。久しぶりの獲物に興奮して忘れていたらしい。
そして海辺の町が見えてきた。
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