表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
走るチーター  作者: アーサー・ボラッケ
4/4

「皆さんの能力は、私の方で、移動に特化したものが付与されるようにさせていただきました」


 異世界から人材を召喚する。そして、付与される能力の方向性を定める。それが召喚士の仕事らしい。

 そして、今回のミッションに合わせ移動に特化した能力が、蓮弥たちに与えられた。


 ベストの男の能力。「ワープ」。

 スウェットの男の能力。「空を飛べる」。

 蓮弥の能力。「足がはやい」。


 俺のこれ能力でもなんでもないじゃん! 

 全然チートじゃないじゃん!


 それが蓮弥の感想だった。

 一番張り切った自分の能力が一番しょぼいということが、恥ずかしいと同時に、しかし番組的には面白いのではないだろうかと、おいしく思っていた。


 城の敷地内にある乗馬コースで、それぞれの能力を披露することになった。


「ここから、コースの終わりまで、移動してみてください」


「じゃあ俺から」


 ベストの男がそう言うと同時に消えた。そしてその姿はラウルが示したゴール地点にあった。そして次の瞬間にはもう、戻ってきていた。


「じゃあ、次は僕が」


 スウェットの男がそう言って軽くジャンプすると、その体は落ちてこないで、そのままゆっくりと浮いていった。


「おー、楽しい楽しい」


 スウェットの男はふわふわと飛びながら、示されたゴール地点に着陸し、そこからまた飛んで戻ってきた。


 果たしてどういうカラクリなのだろう。ワイヤーアクションだろうか。


「次、どうぞ」


 ラウルに促され、蓮弥はスタート地点に立つ。

 きっとどんなスピードで走ったところで、みんなは「すごい速い」と驚くのだろう。

 そういうドッキリなのだろう。


 考えてみれば、自分の能力だけこんなしょぼいことが、ドッキリである何よりの証拠だ。

 蓮弥の能力が「ワープ」や「空を飛ぶ」であれば、実際にそれが出来なくてはならない。

 しかし「足がはやい」だけならば、ただ走ればいいだけだし、周囲もそれに驚いて見せればいい。

 それだけで「はやい」という演出になる。


「じゃあ、行きます」


 そうして地面を蹴った。見えない壁があったかと思った。


 感じたことのない風圧を感じ、


 見たことのないスピードで、景色が後ろに流れていった。


 いや、正確に言えば、

 風圧も流れる景色のスピードも、

 ジェットコースターに乗っている時のものに近かった。


 だから感じたことがないというのは、間違いかもしれない。


 ただ間違いなく、自分の足で走る時には、感じたことのない感覚だった。


 予想より遥かにはやくゴール地点に到達し、

 止まらねばと足でブレーキをかける。


 身体を横向きにして、進行方向と直角に足を踏み出す。


 そのままズザーッと滑るかと思いきや、

 踏み出した一歩がすべての勢いを吸収し、

 その反動が、元来た方向へ駆け出すスタートダッシュとなった。


 予想していない下半身の力に振り回され、準備していなかった上半身がバランスを崩し、転びそうになったものの、

 体幹も強くなったのか、すぐに姿勢を取り戻した。


 そしてスタート地点に戻ってきた。


「はやいね」


 スウェットの男が言った。


()()ーじゃなくて、()ーターだね」


 うるせぇと思った。


 全力で走ったにも関わらず、息も切れていなかったし、心臓もほとんど拍動を速めていなかった。


 さらに言えば、全力も出していない気がした。

 もっとはやく走れる気がした。


 だけどこのスピードは何なんだろう。

 なんでこんなスピードで走れるのだろう。

 どんなトリックで?


 景色は映像で、高速で後ろに流れるようにして、

 風圧も、どこからか扇風機で風を起こすなどして、錯覚させているのだろうか。


 不意打ちで走ってみた。変わらず、高速が出た。


 止まって、ゆっくりとラウルたちのもとへ戻る。


 そして、男ふたりに尋ねる。


「これって、ドッキリじゃないの……?」


「違うと思うよ」


 スウェットの男が応えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ