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走るチーター  作者: アーサー・ボラッケ
3/4

 共に召喚されたらしいベストの男とスウェットの男とともに、別室に案内された。


 腰かけるソファの座り心地はこれまでに感じたことのないもので、これまでに触れたことのない素材で出来ていた。

 出されたお茶の味はこれまでに味わったことのないものだった。


 凝ったドッキリだなと思った。


「突然のことでごめんなさい」


 魔法使いが、謝った。


「私はラウル。召喚士です」


 蓮弥がほかの二人の顔を見ると、二人も同じように状況を呑み込めていない顔をしていた。

 この二人は、仕掛け人なのだろうか。ターゲットなのだろうか。


「この世界で起きている問題を解決するため、別の世界から、あなたたち三人を召喚させてもらいました」


 進んでいく説明に、蓮弥はどう振る舞ったらよいか図りかねたまま、とりあえずテレビ的に面白そうなキャラクターを演じようと、腕を組み、片手を唇に添えて、「ふむふむ」とうなずいて見せた。


「この街から遠く北へ行ったところに、魔法使いが住んでいる城があります。そこの魔法使いは、城で魔物を生み出しては、世界に放っているのです。その行為をやめさせるために、これを、その城へ届けてほしいのです」


 そういってラウルは三つの箱をテーブルに置いた。


「中身はすべて同じものです。何が入っているかのお伝えはできませんが、それを渡せば、魔女は魔物を世界に放つことをやめてくれます」


「どうしてお城の皆さんで行かないのですか」

 スウェットの男が聞いた。当然の質問だと蓮弥も思った。


「道中が大変危険なのです。大変長い距離の旅になり、道中に休めるような町はなく、獰猛な生物もおり、食料となるようなものもありません。私たちの装備では、この行程を乗り切ることができないのです」


「そんなん、俺らにだってできねぇよ。ていうか、自分たちにできないことを俺らに押し付けんなよ」

 ベストの男が言った。もっともだと蓮弥も思った。


 ラウルは申し訳なさそうに唇を引き締めて俯いた。

 かわいいなと思った。どこのタレントだろうと思った。


「やってあげようよ!」


 番組を盛り上げようと思って、蓮弥は言った。

 それから、この召喚士役の女性と仲良くなりたいという下心もあった。


 スウェットの男は怪訝な顔で、ベストの男は睨むように見てきた。


「困っているんじゃないか! 僕たちが助けてあげようよ!」


「はやく走るしか能のない奴はちょっと黙ってて」

 ベスト男がいった。

 その言い草に、蓮弥は腹を立てたが、視聴者への好感度を気にして、ここで喧嘩をすることは控えておいた。

 隠しカメラはどこにあるのだろう。


「ところで、そう、それ。さっきの足がはやいって文字が空中に出たの、あれは、なんなんですか?」

 あれは、どういう技術でやってるんですか?と言いそうになったのを堪えて、蓮夜は聞いた。


 蓮夜の質問にラウルが答える。

「異世界から召喚された方々には、「チート」と呼ばれる能力が付与されるのです。例えば手から火を出せるとか、触れずにモノを動かせるとか。皆さんのように召喚された方々は「チーター」と呼ばれます」


「へー! すごい!」そういう設定なのか。


「で、お前は足がはやいだけなんだよ」

 辛辣な物言いでベストの男が言う。仲良くする気がないのかこいつは。それとも番組スタッフに、感じ悪く振る舞うように指示されているのだろうか。


「じゃああなたの能力はなんなんですか」

 ベストの男に問い返してみると、思わぬ回答が帰ってきた。


「ワープ」


「へ?」


「だから、ワープ」


 完全に上位互換の能力だった。




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