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走るチーター  作者: アーサー・ボラッケ
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プロローグ

 倒れ込んでからどれだけの時が経ったろうか。すごく長い時間が過ぎたような気もすれば、まだ数分しか経っていないような気もする。

 

 頬に触れるぬかるんだ地面の感触は、はじめこそ不快だったが、いつしか心地よく感じていた。火照った身体に、泥の冷たさが気持ちよかった。


 一方で不快だったのは、背中や後頭部を打ち付ける雨粒の衝撃だった。その衝撃で微かに脳が揺れているのか、酔いというか、気持ち悪さを感じ始めていた。


 しかし、雨をしのぐような場所は周囲にはない。


 倒れ込む前に見た景色はただひたすらに荒野だった。厚い雲に覆われた空からは、強い雨が降っていた。大地の茶色と、空の灰色。それだけだった。


 ゆっくりと起き上がる。有名ブランドのランニングシューズなのに、ロゴが泥で見えなくなっていた。


 膝に手を置き、中腰の姿勢で、深く息を吸う。肺が少し痛む気がした。


 振り返れば、出発した街の姿は見えない。前方をむけば、目的地の城も見えない。


 どれほど進んできたのだろう。

 革製のカバンから地図を取り出すと、現在地が光って示された。


 行程の、半分ほどまで来たところだった。


 カバンの中のもう一つの荷物を確認する。小さな箱がひとつ。

 これを目的地まで届けることが、蓮弥(れんや)の目的である。


 異世界に転移させられ、「チート」と呼ばれる能力を与えられた。

 そしてその能力を使って、この荷物を城へ運んでくれと、一方的に頼まれた。


 そのお願いをクリアしないと、元の世界に戻れないという。

 ならば、やるしかない。


 共に転移されたのは蓮弥を入れて3人で、転移者は「チーター」と呼ばれた。


 蓮弥は地図をカバンにしまった。


 行くか。


 その時、視界の端に、自分より大きな影を捉えた。

 この荒野に生息する「ピゲット」と呼ばれる巨大な生物だった。


 固い鱗を持ち、二足歩行で獲物を追いかける。

 そのスピードは、人間の足ではとても逃げ切れるものではないらしい。

 街を出る前に、そう聞いていた。


 影は一つではなかった。

 影の後ろから、もう二つの影。

 3匹のピゲットが、少しずつ蓮弥に近づく。


 右前方からじりじりと近づく影に対して、

 蓮弥はカバンをしっかりと抱え、一歩を後ろに下げた。


 一度深呼吸をしたあと、もう一度息を吸い、そして止めた。


 よーい。


「ピギャァァァァ」

 ピゲットが叫び声を上げ、こちらに向かって駆けだした。


 ものすごい勢いで距離が縮む。

 ピゲットの踏み込む衝撃で、泥が蓮弥のところまではねた。


 どん!

 心の中で合図を切り、


 そのまま直進して駆けだした。


 ピゲットが自分の進路を塞ぐように、方向転換をしたのを確認したが、


 蓮弥はそれを無視して直進し、


 ピゲットが自分の進路を塞ぐよりも先に、その鼻先を走り抜けた。


 ぬかるむ地面をしばらく無心で走り、あるところで止まって振り向く。

 荒野に雨が降り注ぐ景色だけが続き、ピゲットの姿はどこにもなかった。


 蓮弥に与えられた能力は、俊足。

 ただ、足が速いこと。


 チート能力が分かった時、共に転移させられた奏太(かなた)が、


()()ー」と、平坦なアクセントで言ったあと、


「じゃなくて」と、何やらにやにやし始めて、


()ーターだね」と、頭にアクセントを付けて言った。


 うるせぇと思った。


思い付いた駄洒落を発端に書いています。

面白い展開などを組み立てられるようになりたいです。

アドバイスやご指摘等ありましたら、ぜひよろしくお願いします。

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