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科学魔法の自警団  作者: asutarisuku
猫と少女と自警団
16/53

14 私の思い

だいぶ間が空いてしまいすいませんでした。

久しぶりの投稿です。


 


「はぁっ・・・はぁっ・・・」


 こうやって走るのは何回目だろう。

 最近になって走ることが急激に増えた気がする。これまでの人生全体を見ても、比率は最近に傾いているだろう。


 私はあの自警団の団長さんと別れて、お父さんがいるはずの場所に向かって走っていた。

 団長さんはあの男に対して勝てると言っていた。それが本当なのかはわからないが、今は無事を信じることしかできない。


 私はいつも無力だ。あのお母さんの事故の時も、お父さんを支えることが出来なかった。

 私は失敗したんだ。だから、お父さんは一人でどうにかしようとして、壊れてしまった。そう思っていた。

 けど、あの男が言ってることが本当なら、きっとまだお父さんは昔のままだ。あの優しい、お父さんのままだ。プログラムでも、変わらないはずだ。変わらないはずなんだ。


 言い聞かせて、元々ない体力を振り絞る。

 恐怖はある。もし、お父さんが壊れたままだったらと思うと、足が竦む。

 けど私は会わなければならない。死んでしまったはずのお父さんの思いを、きっとフルコピーは知っていると思うから。だから、聞かなければならない。


 そして・・・。


 そして、叱ってやるのだ。怒ってやるのだ。


 私と姐さんたちを悲しませたことを。きっと、お母さんも悲しんでいると思うから。


 私は、真っ白い廊下を、お父さんがいるはずの場所に続く道を、走り続けた。





 ――いつの間にか、私はそこに立っていた。

 場所を示す看板などどこにも見当たらない。けど、この施設にいた私なら分かる。

 ・・・この扉は、メインコンピュータールームの扉だと。


 私は胸の中にある恐怖を奥底に押し込んで、ゆっくりと、その扉を開けた。


 扉は、つっかえることなく簡単に開く。考えてみれば施設にとって重要なメインコンピュータールームの扉に鍵がないのはおかしいと思うが、今はその偶然に感謝するしかない。




 ――開け放たれた扉から、廊下の光が室内を照らした。


 初めに、電気がついていないことに違和感を覚え、次に照らされた部屋の中を見て、声を失う。



 ――そこには、あるはずのものがなかった。


 メインコンピューターという、最も重要な存在が、そこには存在しなかった。




 混乱、そして頭は理由を探し始める。


 ・・・まさか、あの男に壊された?

 いや、それは無いはずだ。そもそも、壊されたなら残骸が残っているはず。

 ここに影も形もないということは、移動された?

 あんな大きな物を、誰が? どうやって?


 何度考えても、結論は出なかった。



 とりあえず今は考えることをやめ、とにかく動こうと、扉から外に出ようとした時だった。


 真っ暗な部屋の中、唐突にその声は響いた。


「姶良翔子、待て」


「――――」


 その声は、聞き飽きるほど聞いていたもの。

 紛れもない、お父さんの声だった。


 沢山の感情がごっちゃになって、声を出すことは出来なかった。

 私は、口を開いたまま立ち尽くす。


「・・・話をするには、こっちに来てもらった方が良さそうだな」


 お父さんのその言葉の直後、ガコンという音がしたと思ったら、ゴゴゴゴという何かがずれる音がした。

 音のした方向を見ると、そこにはぽっかりと穴が開いている。近づいて覗き込むと、それがスイッチになったかのように光が視界を覆った。

 部屋には白いLEDライトの光が広がって、眼下には、先ほどの穴の中に下へと続く階段が見えた。


「そこを降りてきてくれ。その先で、話をしよう」


 唖然としていると、お父さんがそう言った。


 現れた階段は、私の知らない物。こんな仕掛けがあったのかと、それを知らなかった事実に少し心が沈む。

 それは、自分は信用されていなかったということだと思ったから。それは、私はお父さんの支えになれなかったことを明確に表している気がしたから。


 けど、今はそんな感情なんて関係ない。

 頭を振ってその気持ちを追い払う。その行為で、私は完璧ではないものの気分転換には成功した。


 下を覗き込むと相変わらず階段が存在している。螺旋状に続いているため終わりは見えず、だいぶ深いように思えた。


 私は息を呑んで、その階段の続く先へと踏み出した。




 ――カツカツという音が階段のある空間に響いていた。最初に思った通り、この階段はかなり深い位置まで続いているようだった。


 私が階段に足を踏み入れると、この階段は再び隠されたようで後ろでゴゴゴゴという音が再度響いていた。音が聞こえたので確かなことだと思うがここまで後ろを振り返ってはいないので私はそれを認識していない。


 しばらく降りているとようやく扉が見えてきた。おそらく、いや、十中八九あれがこの階段の終わりだろう。扉はいかにも頑丈そうなもので、鍵もついているようだった。きっと、これが本当のメインコンピュータールームなんだろう。あの部屋からこの扉の先は、丁度縦に真っ直ぐ並んでいる。もしかしたら、メインコンピューターを真っ直ぐこの先の部屋に降ろすというギミックが存在していたのかもしれない。


 お父さんが私を呼んだのだから、鍵がかかっているということは無いだろう。だから、覚悟を決めるなら今だ。

 深く息を吸って、そして、吐く。昔から伝わる深呼吸という方法。誰しもが知っているであろうその方法で、私は心を整える。

 私はゆっくりと扉に手をかけ、その扉を開け放った。




 部屋に入っていった私に投げかけられた最初の声は予想を裏付ける物だった。


「翔子ちゃん!?」


 声は、姐さんのもの。

 目を向けると姐さんたちが部屋の隅に座っていてその誰もが私の方を見ていた。私はなんだか申し訳なくなって目を背ける。

 斜め下を向いた私に、声は告げる。


「話をしよう。オリジナルの家族」


 随分と大げさな話し方だ。フルコピーのそれはまるで、殻に籠もった弱い生き物のようだった。

 そう感じた理由はわからない。ただ、なんとなくそんなきがした。


 私は前を見据える。

 その、無機質に低い音を奏でている黒い箱を見据える。

 メインコンピューター、そして、私のお父さんを。


「・・・話をしましょう。フルコピー。私のお父さん」


 声は、白い部屋の中に広がった。

もう一話投稿するつもりでしたがなぜか文字化けしてしまっているのでそれが何とかなり次第投稿しようと思います。

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