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便所虫  作者: 角田
7/10

妖怪

僕は霊感というものがこれっぽちも無いため,未だ妖怪はおろか其処らを彷徨う幽霊や火の玉一つさえも見た事がない.

特にここ最近では,夜の小水などについても僕には何ら障害とならなかった.

もっとも,その最近と言うのは,厠には年中五月蝿い虫が居たからと言うのが一つの理由であったのだが.


生まれて此の方霊感に乏しく,元より魑魅魍魎に対するそうした恐怖と言う発想自体が薄い僕には,齢7にして今更ながらに怖れを習得すると言うのも困難な話であり,またそもそもにして無駄である様に感じている.

ただ敢えて言うなら,世の中がもっと霊的で神的であるのなら,毎日がもう少しだけ豊かで,華やかな色の付いたものとなるのであろうか,と考えている.




昨晩に小水を失敬してしまい,今晩に当たってはいつも以上の警戒と心構えで夜を迎えた僕は,見事とばかり,睡眠の中感じた尿意に対してガバと布団より飛び起きること成功した.


夢中とはこの事を言うのだろう.

夢と現実の境目を見分けるのもほぼ不可能な程の素早い覚醒.

もはや御漏らしは出来ないか…,と自身の成長に感慨深げとなりながら,布団に問題が無い事を改めて確認すると伴に,僕はうむと一つ大きく頷いた.




さて,排尿をせねばならぬ.


階下奥に備え付けられた我が家のトイレットは,実にモダンなトーウトーウ式最新トイレットであることが強い自慢である.

特に,音姫というPOPで気の利いた機能に加え,抗菌仕様といった明るい謳い文句は,清潔かつメカニカルなことこの上なく,実に頼もしい存在である.

悪霊退散!



特に意味は無いが,念には念をと音姫を起動させた僕は,小水をトイレットへと撒く作業に移る.


じょぼじょぼじょぼじょぼじょぼ

ぢゃーーーーーーーーーーーーー

じょぼじょぼじょぼじょぼじょぼ







今,物陰で何かが動いた.



ゴキカブリではない.

二足歩行であった.




虫はいない.虫は死んだのだ.



ゴキカブリでなく,虫でない.

虫でないし,ゴキカブリでなかったのだ!


僕は自身の脳内辞書から,この世の二足歩行動物を素早く検索する.

インコ,リス.…,カニ? 一瞬のことである.二足歩行「らしき」ことより確認は取れていない.

ゴキカブリではない!



ともかく,僕はいつでも戦えるよう,悪霊退散…と自身の知りうる有効な呪文をボソと呟き,静かに臨戦態勢へと入った.



固唾を飲む.

今か今か.今か.今か,今か!と.





….





ゴキカブリではなかった.




ゴキカブリではなかったのだ.


その夜僕は,角田と久方ぶりの再会を果たした.

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