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便所虫  作者: 角田
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死んでくれて有り難う角田さん

死んでくれて有り難う角田さん




角田さんと最後のお別れを済ませた僕は,その足で近所の河原へと足を運んだ.


あのゴミ虫が死に.狙い澄ましたかの様に現れた角田さん.

角田宏明.


角田は死んだ.

宏明は死んだ.



妄想などではない.

あの虫,角田も,そして宏明…この僕も.妄想ではない.

しいて言うならば,角田宏明その人こそが僕の妄想だったのだ.


そう考える事で,僕は自身への疑念,自我の芽生えに伴う自死と言う問題を無いものとした.




角田さんは,僕の代わりに死んでくれたのだ.


角田さんはヒーローであるから.




そう、そういう事にし,そして僕は.





ヒロ,ココにイタね.



ヒロ,げんきダスね.







土手の上で、僕らはゆらりゆらりと流れる川面を眺めていた。

ゆらりゆらりと形を崩すその姿。

感傷に耽っているつもりはない。


ただ、どこか美しいと感じる。


僕はそれを、ただ眺めるしかない。

ゆらりゆらりと。ただ、眺めるしか。



幾分か過ぎた頃,帰ろうと促すカークに僕はうんと素直に答えた。

腰を上げ,そして最後にもう一度川辺を見やり,家路へと足を運ぶ.

陽射しに目を細め,カークと連れ立って.

夕日がこんなに眩しいものだと,僕はその時初めて気付いた.



その日,僕は死に,そして生まれたのだろう.

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