*プロローグ*
「ねぇ…本当に行っちゃうの?」
一人の少年が、話しかける。
「そうだよ…ってその質問今日で何回目?」
「だって…僕、いまだに信じられないよ…」
「そりゃあ、親が突然転勤することになったけどさぁ…」
「年賀状…送ってくれるよね?」
「お前は何の心配してるんだよ」
もう一人の少年が、思わずツッコミを入れる。
「だって…お前が親友だからだよ、竜治」
「はいはい、分かったよ…。たまに手紙でも送ってやろうか?」
「うん、それなら満足だよ!!」
「はぁ……浩也は本当に心配性だな…」
「そりゃあ心配するよぉ!!」
相手があまりにも大きな声で叫んだので、少年はさらにやれやれと首を振った。
「ほら、浩也が変な話するから、出発まであと3分じゃないか」
「な、なんだよっ、変な話じゃないだろ!!」
「あー、そろそろ行かなきゃなー」
「人の話聞いてる!?」
すると、竜治という少年が、改まったかのように相手に向き直った。
相手も変化に気づいたらしく、
「なんだよ?」
と、ややぶっきらぼうに聞いた。
「浩也」
「だからなんだよ?」
「君に最後に伝えたい言葉」
「えっ?」
竜治は相手が何のことか分からず硬直しているのにもかかわらず、こう言った。
『僕と再会する時は、君が死んだ後だろうね…』
その言葉と共に、少年はこつぜんと姿を消した。
「あれ?竜治?」
残された少年は周りを探したが、親友の姿はなかった______