展覧会のゑ
ふらりと立ち寄った催事場では絵画展が催されていた。
あまり芸術に縁がある方ではなかったが、なんとなく興味を覚えて見てみることにした。
しかし、入ってみて一目で唖然とした。
飾られている絵がどれもこれも白一色だったのだ。
これはどういうことかと受付の女性に尋ねてみたところ、
「お客様は当絵画展は初めてでいらっしゃいますか? 当展では毎回違ったテーマをもとにした作品を展示しております。そして今回のテーマは『無垢』です。無垢と言えばやはり白を連想いたしますが、新雪の白や花嫁衣裳の白など、様々な白を表現した作品からテーマの奥深さを感じ取っていただければ」
正直なところそれぞれの差がわからなかったが、芸術とはそういうものなのだろうと納得しておいた。
それからしばらく経ち、近くに寄ったついでにまたあの絵画展を覗いてみた。
そして今回飾られていた絵はどれもこれも真っ黒だった。
今回のテーマは"闇"、なのだろうか。まさかカラスではあるまい。
正解が気になったので今回も受付で尋ねてみることにした。
「お客様、たびたびのご来場まことにありがとうざいます。今回のテーマについてでございますね? 今回のテーマは『静寂』です。静寂の印象深い色といえば青や白を思い浮かべる方もいるでしょうが、やはりなんといっても黒がその代表格でありましょう。夜闇の黒や陰影の黒などを表現した各作品から漂う静寂に思いを馳せていただければ」
まぁ、そう言われるとそんな気がしないでもないが、やはりまだそこまでの芸術的感性は残念ながら備わっていないようだ。
そして今日、三度あの絵画展を訪れた。
今度こそ驚かないようにと身構えていたにもかかわらず、今回も思わず絶句してしまった。
どのケースにも何も飾られていないように見えるのだ。
まさか透明な絵が……? しかしそこでピンと来た。
今回のテーマは"空気"――いや違うな、"無"、"虚無"だろうか。
自分もそれなりに芸術を見る目が育ってきたのかもしれない。
かなり自信のあるその答えをいち早く確かめたかったが、受付に人がいなかったため奥にいた男性に聞いてみることにした。
「ああ、この前までやってた絵画展なら、主催者が詐欺で逮捕されましたよ」




