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過去からの依頼人(その4)
「佳央里さんは、もしかして犯人を探しているのですか」
ミツオの問いに安藤は静かにうなずいた。
「あの子より先に犯人を捕まえて欲しいのです。あの子を過去の呪縛から解放させてください」
安藤はまっすぐミツオを見つめながら懇願した。同僚の死を境に犯行は二度と行われず、新たな物証も得られず捜査は打ち切られた。自分の能力が活かせなかった罪悪感にさいなまれて、ミツオは刑事をやめた。
「なぜ事務所ではなく、ここにいらっしゃったのですか」
「私の行動を監視しているような気配を感じています。今夜は同僚と食事をすると言って出てきました」
「そうですか」
ミツオは今の自分に当時分からなかった犯人に迫れるのだろうかと思った。しかし年端のいかない娘が人生をかけて捜査を続行していると思うと、心が痛む。自信は無いが、何か新しい手がかりがあるのかもしれない。
「わかりました。あなたの気持ちをくんでお引き受けいたします」
そう言った後、ミツオはタバコに火を点けた。




