ホットケーキとホットミルク
小さい頃。
小学生の頃。
中3、受験の頃。
大人になってから。
子供が孫に語る自分の事。
ホットケーキとホットミルクの思い出。
ホットケーキとホットミルク。小さい頃よくおやつにお母さんが作ってくれた。
お母さんはすぐぼーっとするので片面か、酷いときは両面真っ黒なパンケーキばかり。
そんな時、お母さんはイタズラっぽく笑って
「しょーがない!なんでもたくさんかけていいよ!」
と言っていた。
本当に言葉通りジャムでもバターでもホイップでもなんでもかけてよかった。
もう二度と食べられないけれど。
―
小2の時、両親が離婚して私はお父さんについて行くことになった。
当時、お母さんは、私を引き取りたかったようだけど、お父さんに稼ぎだったりの事を言われて泣く泣く親権を譲ったらしい。
そんな事知らない私は、捨てられたんだと毎晩泣いていた。
「私の事嫌いになったの?」
月に一度、お母さんと私を会わせる約束だった。普通はうれしいのかもしれないけれど、私はお母さんに裏切られたと思ってたから、そっけない態度をとっていた。
それから4年たった。
お母さんに会えなくなった。
お父さんは
「母さんは遠いとこいるから会えない」
と言ってた。
その言葉を信じてた。けど違った。
お母さんは亡くなっていた。
知ったのはそこから一年たったころ。
なぜ大切なことを誤魔化すのだろう。私も知りたかった。
―
中3、受験勉強に忙しい。
夜中勉強していると、お父さんが部屋の扉をノックする。
「ホットケーキとホットミルク」
そう言って私に手渡すと、頑張れと一言残して部屋に戻っていく。
お父さんは器用だから料理も得意。
ふんわりとした、両面焦げてないホットケーキに、少し暑いくらいのちょうどいいホットミルク。
そして、お母さんがいない事を思い出す。
―
私は今、社会人。父は3年前亡くなり、お母さんとは別のお墓。
私の旦那は不器用で料理が苦手。
私がホットケーキとホットミルクが好きなのを知ってよく作るけど、ホットケーキは真っ黒焦げ、ホットミルクは火傷するほど暑いし砂糖を入れ過ぎてすごく甘い。
ホットケーキとホットミルク。私とは切っても切れない縁らしい。
それなら最後まで付き合おうか。
―
「おばあちゃんてどんな人だったー?」
「ホットケーキとホットミルクが大好きな優しい人よ」
「焦げたホットケーキみると笑うんだよねー?」
「しかも、ホットミルクも失敗したやつ頂戴って言うのよ」
「会ってみたかったなあ」
読むと、あったかい気持ちになれるように書きました。




