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code magic  作者: 犀川 門
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魔法適正

2025年3月、以降魔法歴1年。ハワイ諸島に墜落した一機の謎の飛行物体により、人類は未曾有のウイルスに感染した。それは極めて感染力が強く、また感染したものは特殊な力を使えるようになった。


それが、魔法


人類はこの未曾有の力を運用していくために、様々な実践的訓練施設を設け、一時的にどうにか治安を維持していくことに成功した。そして今日、僕は友人とその施設の一つである、魔法適正検査場へと足を運んでいた。


「それにしても、あの何でも対応が遅いでおなじみの政府が今回ばかりは結構張り切ってるよなぁ、流石に全人類がひっくり返るような事態だもんなぁ」

横を歩く松澤景は腕を頭の後ろでクロスさせながら、けだるげにそう言った。


「それよりも、お前は魔法使えたのかよ、因みに俺は検査キットなんか使うまでもなく、便利な炎魔法が使えたからな。ライターいらずだぜ」


国からそもそも感染しているかどうかの検査キットが配られ、感染していた場合、魔法適正を調べるための会場への案内が送られてくる。ほとんどの場合は景のように目に見えて魔法が使える為、そんな適正検査など不要なのだが、銃すら規制された国ということもあり、急に市民が武力を持った際にどうなるか分かったものではない。抑止力という面もあるのだろう。幸いこの国の人々は意外にもそいういったイレギュラーに動揺しない民族みたいだ。


「僕は一応魔法には感染しているみたいだけど、どうだろう。まだ実感したことがないんだよね。」


「おいまじかよ、実はまだ感染していないレア人類なんじゃねぇか?」


「いやまさか、ていうかむしろこうなったら感染してて欲しいまであるよ。ただの非力な人間のままじゃ面白くないだろ」


「ま、そりゃそうだよな。お、あそこに喫煙所あるじゃん。ちょっと寄ってこうぜ。お前もたまには一本吸うだろ」

「たまにね、いいよ、行こうか」


こうして付き合いでたまに吸うようになったのは確実に景の影響だが、最近意外と悪くないと思ってきた。これがニコチンの力か。


「そうだ、どうせなら俺の魔法でつけてやるよ」

「おいおいやめとけよ、規定された場所以外の使用は法律で最近禁止されるようになっただろ確か」

「大丈夫だってぇ、確か発動していいレベルがあったからな。こんなもんは生活魔法レベルだからよ」

「まぁそれならいいけど」


タバコを取り、景が親指から魔法を出し僕の口元に近づけた、だが、タバコには火が一向に付かない。

「あれぇ、俺には付くんだけどなぁ」

そう言って自分のタバコに先に火をつけたが、言った通り普通についていた。

「お前、魔法無効にする魔法適正でもあるんじゃねぇか?」

「まさか、普通に火はついてたんだから、タバコが悪かったのかもね。まあいいよライターもってるから。」


一服も終わり、会場に着いた。試験監督から様々な注意事項を聞いている際に、大学受験を受けた時のことを思い出した。一応大学には通えているが、通常のカリキュラムに加えて魔法に関する授業も取り入れていくようだ。


それでは、松澤景さんから、この機械に手を当ててください。はい、ありがとうございました。結果は後程出るようになっています。続いて、相沢糸さん、いと、でよろしいでしょうか。


「はい、いとで合ってます」

「わかりました。どうぞ、こちらの機械に手を当ててください。はい、ありがとうございました。」


「検査は以上になります。通知は追って連絡する形になりますので」

そこまで検査官が言葉を発したところで別のスタッフが検査室に入ってきた。何か一言二言検査官に伝え、その後部屋を後にした。」


「えー、失礼しました。松澤景さんと相沢糸さんはこの後少しだけお時間をいただきたいのですが、よろしいでしょうか。」


唐突な質問に驚いたが、特に何も予定はなかったのでうなずいておくことにした。景もそうしたみたいだ。周りの人の視線が自分たちに集まっていることに気が付いた。


「ありがとうございます。それでは、本日はこれですべての検査を終了とします。」


部屋にいた人たちが続々と退室し、3人が残った。そこにまた別のスタッフが2人入室してきた。2人ともその場にいた検査官よりも偉そうに見えた。


「お二人ともこんにちは。当検査会場の監督を務めさせていただいている、林凛といいます。お二人の魔法適正に関して、他よりも優れた能力が確認されましたので、それに関してお伝えしに参りました。」


「優れた能力!」

景は嬉しそうだ。

「はい、まずは松澤景さん。あなたは火の魔法適正をお持ちですが、その魔法強度と操作技術がとても高いです。これはそのまま他の物質に干渉できる才能を表しているので、今後水、土といったものも扱えるようになることを意味しています。」


「おいまじかよ!魔法マスターじゃんか」


「そして、相沢糸さん。あなたは魔法適正は確かにありますが、そのほかの情報を確認することができませんでした。そこで、別の試験を受けていただくことになるのですが、よろしいでしょうか。」


「情報が確認できない、というのは魔法を使えないということではないのですか?」

特段珍しいことではない。別に魔法に感染していたからといって、魔法が完璧に扱えるというわけではないのだ。ごく少量の魔法しか検出出来ず、魔法適正が極めて低い場合はよくある話らしい。


「いえ、それが、魔法適正における魔法強度、魔力保持量がともに歴代トップの値をマークしていました。なので通常の試験では観測できない特殊な魔法適正の可能性があります。」


「なるほど、わかりました」

とは言ったものの、現状思い当たるのは今朝の火魔法の火が自分のタバコにつかなかったことくらいだ。特別な試験を受けるらしいが、それで判別できるものなのだろうか。

不安を抱えながらも、景とはしばし別れを告げ、僕も別の部屋へ移動した。


部屋へ入ると、林と名乗る人ではない方が、説明を始めた。


「面倒かけて悪いね。まずはそこに座ってよ。」

仲は教室のようになっていて、椅子が沢山置いてあった。指定された席に座ると、何故か隣の席が溶けてなくなった。驚いてみていると、目の前の試験監督も驚いていた。


「いやぁ、驚いた。林さん、彼に何か魔法を打ってくれませんか。」

「ちょっと、安藤さん、どういうことですか?まずは自分の物質移動魔法を試すと言ったじゃないですか。こんな簡単な魔法操作もできなくなったんですか?」


「いやいや、そうじゃないんですよ、私はちゃんと目の前の椅子をとなりの部屋に移動させようとしましたよ。だから林も試してほしいんです。」


「はぁ、わかりましたよもう、」

そう言って林は目の前の少年に向かって低級の風干渉魔法を放った。が、風になびいて倒れたのは隣の椅子だった。


「えーと、どういうことなんでしょう」


「君、今すぐ魔法大学に編入しなさい。」


魔法誕生黎明期。一人の伝説的な魔法適正者が明らかになった最初の日だった。

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